新潟大学伊藤龍史ゼミでの「 アントレプレナーシップ教育」

えほんカタログ(試作版)の表紙

新潟大学経済学部の伊藤龍史(いとうりょうじ)ゼミでは「、アントレプレナーのための戦略とマーケティング」というテーマのもと、手探り状態ではあるがアントレプレナーシップ教育を行っている。

この伊藤ゼミの活動について、ありがたいことに「にいがた経済新聞」の先月号(vol.19)で概略を取り上げていただいた。さらに幸運なことに、今月号から毎回、連載コーナーを執筆する機会を得ることもでき た。当連載コーナーでは今後、「伊藤ゼミ」の活動や「伊藤研究室」の活動について紹介していくとともに、新潟のアントレプレナーシップに対する筆者(伊藤龍史)の所感等も あわせてお伝えしていきたい。なお、明確に切り分けられるものではないが、筆者が行う少人数選抜型の教育活動を「伊藤ゼミ(の活動)」、筆者自身の研究活動を「伊藤研究室(の活動)」と呼んでいる。

伊藤ゼミの活動の柱は2つある。「新潟県内企業とのコラボレーション」と「ビジネスコンテストへの挑戦」だ。これらを通じて、アントレプレナー シップの育成を図っている。新潟大学経済学部では、学生たちは 2年次と3年次にゼミに所属する伊藤ゼミには現在、3年生14名と2年生13名が所属している。3年生は伊藤ゼミの7期生、2年生は8期生にあたる。ゼミ生たちは1年次に行われたゼミ選考を突破して以降、日々各自でインプット学習に励んでいる。

今年度の企業コラボレーション先は、ひらせいホームセンター、ひらせいファーム、MGNET、グローカルマーケティング、NEXCO東日本、東京海 上日動である。ゼミ生たちはそれぞれ、思い思いに掛け持ちをしているため、各コラボレーションには約10名から20名ほどが携わっている。企業ご とにコラボの哲学や方法は異なるものの、基本的には毎年度、企業側がまず課題の大枠を示し、次にゼミ生側で課題を具体化して解決策を提案し、さらに企業側の意見やアドバイスを受けて再度ブラッシュアップしていく。企業と伊藤ゼミでキャッチボールを繰り返しながら、新たな解決策を共創している。

ビジネスコンテストへの挑戦については、伊藤ゼミから誕生し各種のコンテストでいくつもの大賞に輝いた2つのチームがそれぞれ、ここ半年ほ どの間にクラウドファンディングを次々と成功させている。1つは「えほんカタログ」というチームで、そのアイデアは「結婚式の引き出物カタログを絵本調にして、挿絵に出てくる品物等を実際に注文できる」というものだ。絵本の内容とそこに登場する品物などは、新郎と新婦の地元や、二人の思い出の場所などに関連している。これまでに南魚沼版が完成した。Readyforでのクラウドファンディングを成功させ、現在は軽井沢版を制作中で ある。もう1つは、日本酒の飲めない女子大生がつくる日本酒「にゅーふぇいす」というチームだ。若者(特に女性)の日本酒離れという問題を解決しようと、20歳以上の女子大生200名以上を対象に調査を行い、日本酒が飲めない理由を探った。調査の結果、1多くの女子大生に日本酒を飲めない傾向がみられた、2しかしその大半が「日本酒を飲めないが飲めるようになりたい」と回答した、3飲めない理由は「味・量・におい」にあるようだ、ということが分かった。調査の結果を受けて「飲み切りやすい量と味の日本酒を、相性の良いつまみと一緒に、小さな容器で提供する」というアイデアを考案した。このアイデアの実現に向けて、協力 を申し出てくれた苗場酒造(津南町)とともに商品を開発した。Makuakeでのクラウドファンディングを成功させ、近日中に販売を開始する。

今年度の伊藤ゼミの活動はまだ始まったばかりであるが、アントレプレナーシップ(企業家精神・起業家精神)をもつ学生が一人でも多く誕生するよう、より良い環境を整えていきたい。

伊藤龍史(いとうりょうじ)

新潟大学経済学部准教授。福岡県立修猷館高校卒業、早稲田大学卒業後、早稲田大学大学院商学研究科修士課程・博士後期課程、早稲田大学産業経営研究所助手を経て、2009年新潟大学講師。14年同大学准教授。サンノゼ州立大学(カリフォルニア州立大学サンノゼ校)ビジネススクール(マーケティング・意思決定科学領域)客員研究員、ソウル科学技術大学招聘副教授など歴任。専門分野は、経営戦略論・マーケティング論・アントレプレナーシップ論。研究テーマは、距離や知識境界をまたいだ価値共創プロセスや知識統合プロセスの研究。2018年、国際学会「ASBBS(American Society of Business and Behavioral Sciences)」において、単著論文「An Exploratory Study for Detecting the Typologies of Offshoring Strategy」が学会賞「Best Paper Award(最優秀論文賞)」を受賞。