「アベノミクスと日銀が作った物価高騰」(元時事通信記者、元衆院議員 五十嵐文彦)


「アベノミクスと日銀が作った物価高騰」(元時事通信記者、元衆院議員 五十嵐文彦)

日本銀行は7月定例の金融政策決定会合で大規模な金融緩和の維持を決めた。これにより、円安による輸入物価上昇が続くことになる。家計への打撃はより深刻化する。

日銀の説明は、「現在の物価上昇は、賃金上昇に繋がらない悪い上昇なので、金融緩和継続によって景気の下支えをする必要がある」というもの。悪い物価上昇はウクライナ情勢のせいで、日銀の円安政策は無罪だと言いたいらしい。見苦しい言い訳だ。日本の長引く不況はデフレが元凶だから、物価上昇を誘導してデフレ退治をする、そのために実需に関係なく紙幣を印刷したり、金利をマイナスやゼロ付近の超低金利にして円安を作り出すというのがアベノミクスと黒田日銀政策の肝。

十年も続けて来たのに「良い物価上昇」は起きず、①エネルギーなど輸入物価の高騰と円の価値下落②資産家層に偏ったバブルの恩恵と格差拡大③競争力のない衰退産業の温存と構造転換の遅れ④機動的な金融政策発動の機能喪失❘をもたらしただけだった。リフレ派と目される人々は、安倍元首相が凶弾に倒れたことで安倍政策のすべてを肯定し、実現しなかったのはいわゆる「第三の矢」が道半ばの段階だからだと強弁する。経済政策に十年費やして道半ばという方便が許されるわけがない。

もちろん、安倍政策も教育無償化やベースアップ要請など正しい方向のやり方も含まれているが、安倍・黒田路線の基本的な失敗は明らかだ。必要なのは、誤りを認め、超金融緩和の出口戦略に着手し、極端な円安に歯止めをかけることだ。かつてスウェーデンは看板企業のボルボの外資買収を許し、高付加価値化産業への転換に全力を傾注、成功した。企業を助けるのではなく、人を救うという考え方で、イノベーション庁を中心にIT産業高度化にカジを切り、技術訓練教育と労働力の移動を徹底した。今では国民一人当たりGDPは日本の
1・5倍だ。日本は半導体をはじめ高度技術IT産業分野は全滅状態なのに、円安頼りの輸出にこだわっている。これでもアベノミクスは正しいですか。

 

五十嵐文彦

1948年11月生まれ。東京大学文学部卒。時事通信社政治部記者を経て衆議院議員4期。新党さきがけ政調会長代理、民主党次の内閣総務相・金融担当相、衆議院災害特別委員長、財務副大臣2期、衆議院財務金融委員長などを歴任。現在はフリージャーナリスト、ニューズ・オプエド解説委員、人権財団理事、武蔵野大学政治経済研究所客員研究員


こんな記事も