【人材採用&育成にインパクト】オリジナルの研修カリキュラムと実習施設で、未経験の新卒社員が職人として急成長 内装工事の中喜(新潟市東区)インタビュー

株式会社中喜の2025年の新入社員4人

人材不足が顕著な建設業界において、採用と人材育成に力を入れ、独自の施設とカリキュラムを構築し、確かな手応えが生まれている会社がある。創業135年の歴史を誇る、内装工事を手掛ける株式会社中喜(新潟市東区)だ。

 

「つくる人を、次の時代へ」企業理念を形に

「今、建設業界は慢性的な人手不足で、人口減少の中で入職したいという人も減っていっています。もしかしたら建物が建てられない時代が来てしまうかもしれません。そんな状況で、弊社ができる社会貢献は、建設業界に若い人が入り、プロフェッショナルに育てることだと考えています」と話すのは株式会社中喜の中村太郎代表取締役だ。

株式会社中喜(新潟市東区)中村太郎代表取締役社長

業界を取り巻く危機感を背景に、中喜は2024年に「つくる人を、次の時代へ」という企業理念を策定した。

策定から約1年、理念はさまざまな制度や環境づくり、人材育成などに反映されてきた。「長期休暇取得推進制度」もその一つ。業態の特性上繁忙期があるが、その分業務が落ち着いているときは休みを取りやすくしようと、なんと9連休を取れる仕組みになっている。ポイントは、取得する本人とその仕事をフォローする人両方に手当が支給される点だ。

りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館やメディアシップ、朱鷺メッセなど、新潟のランドマークの内装を多数手掛ける株式会社中喜(新潟市東区)

そういった柔軟な改革の一つで、今、中喜が力を入れているのが人材採用と人材育成だ。2024年春には、初めて自社の職人となる新卒採用を実施。業界で従来一般的とされてきた「見て覚える」「指示や指導が怖い」といった教育ではなく、当事者目線に立った新人教育カリキュラムを作り、1年で着実な成果が出てきている。

入社2年目の社員が、新人を指導

社屋の一角には実習スペースを開設。社会人としての基本の研修を終えると、施工職人はこの実習スペースでボード貼りなどの実技を約3ヶ月間学んでから現場に出ることになる。さらに「スキルマップ」や「目標設定シート」、毎月1回の上司との面談などで、現在のスキルや知識の可視化や中長期的な視野に立った育成方針を共有し、成長を後押しする。

 

現場に即したオリジナルの研修を経て、新卒社員が1年で急成長

2024年度に高校卒業と同時に入社した服部映児さんは、施工チームで店舗やビル、工場など、すでに様々な建築の内装工事の経験を積んでいる。主に内装の壁や天井の骨組みと表面のボード貼りを担当しているが、部材や組み方はたくさんあるので、基礎を社内で習得し、現場でさまざまな応用技術を身につけていっている。

「友達と話していると、中喜は上司や先輩とも話しやすくて働きやすい会社だと感じます」(服部さん)

「みっちり研修してもらえるので、現場に出てもすぐに役に立てている実感がありました。取得すべきスキル一覧や目標設定シートがあって、できること、できないこと、目指すものが把握できるのは、モチベーションにもなりますね。一つの現場が完成する瞬間は、それまでの過程が思い出されて達成感がすごいです! 大変な仕事だけど、だからこそ成長ができると思います」と研修カリキュラムの成果と中喜の仕事のやりがいを実感中だ。

服部さんは、着実に実力をつけたこととコミュニケーション能力の高さから、就職して4カ月後の9月には職長という、一つの現場で16人もの職人さんたちをまとめる担当に指名された。周りの人に助けられながらも完遂したことで、自身でも大きな成長を実感し、自信につながったそう。

筋トレが趣味の服部さん。会社の一角にあるジムがグレードアップすると聞いて「今から楽しみです(笑)」※写真はアップグレード前

「職長は数年経験しないと普通は就けない職務です。この経験で彼は一気に伸びたし、今はどこに出しても恥ずかしくないレベルに…なるかならないかというところ」と中村社長も笑いながらも手応えを感じ、服部さんに信頼を寄せている。

シートや面談、日報など、上司との密なコミュニケーションから「ちゃんと見てくれていると感じるし、頑張った分が給料にも反映されています。しっかり休みも取れるのでプライベートと仕事のバランスにも満足しています」(服部さん)

 

採用新体制2年目、モチベーションが高い若手の獲得に成功

2025年4月、研修制度や会社の働きやすい環境に定員を超える応募があった中から、中喜は新たに施工チームに2人、施工管理に2人の合計4人の新卒を採用した。

建設業界で働いている父親に憧れて越えたいという岩倉大華さんと、会社見学で実際に作業をする面白さを知って入社を決めた星山正翔さんは内装工事部施工チームに配属。

内装工事部施工チームの新人、岩倉大華さん(写真左)と星山正翔さん(写真右)

「合同説明会や会社見学で建設業界の厳しいイメージが払拭されて、とてもいい会社だと思って入社を決めました」という岩倉さんの話に、隣で星山さんも頷く。

現在二人は、社内の実習スペースでボードの加工や貼り付け、壁の下地づくりなどに取り組み、腕を磨いている真っ最中。昨年の研修メニューをブラッシュアップし、座学と実習を短いスパンで繰り返すことで、より早い成長が期待されている。

今年リニューアルした社屋一階にある実習施設。一人一部屋ずつ与えられており、二人で一ヶ月間に500枚以上のボードを加工した。新人とは思えないほど、作業が非常にスムーズ。

「同じ作業でも前回よりも速くできたり、反省を次に生かして成長が実感できるので、毎日めちゃくちゃ楽しいです。何よりとことんやらせてくれて、みんな優しく教えてくれるところが魅力です」(岩倉さん)

「ボードの加工方法は色々と種類があって、うまくはまらないこともある分、ぴったりハマるとすごく気持ちいいし、一人で一部屋分を仕上げられた時は嬉しいです。常に高みを目指して成長させてくれるところが最高です!」(星山さん)

6月からは現場に出ていく予定で、二人とも現場での活躍を今から楽しみにしている。

日報には必ず毎日上司がコメントをくれる。目標設定シートにも細かい書き込みやチェックをした跡が。

 

新潟で「自分が作った」と言える建物を手がけたい

施工管理の研修は今年度が初めての試みで、新人の手島海斗さんと平田勇貴さんが奮闘中。現在は専門用語や部材の名称など座学が中心だが、練習で見積もりを出したり、施工チームの実習スペースに材料を用意したり、図面を書いて指示を出すことにも挑戦。先輩と一緒に現場に同行することもあるそうだ。

建築工事部で施工管理を勉強中の平田勇貴さん(写真左)と手島海斗さん(写真右)

建設工事の最初から最後まで、全ての工程に関わることができる施工管理の仕事に魅力を感じて入社した手島さんは「建築に携わることで、お客さんを笑顔にしたい」と、期待に胸を膨らませる。

平田さんも「移動中に通った建物を、上司が『ここは俺が作ったんだ』という話を聞くと、めちゃくちゃいいなと思って。私も新潟で建物の施工管理を手がけて、自慢したいですね」と展望を語る様子は、頼もしい限りだ。

 

建設業界の「当たり前」を見直し、相手の目線に立った教育制度で一石を投じる

「つくる人を、次の時代へ」という理念のもと手厚い体制を取る中村社長は「うちの会社の強みは人だと思っています。だからそこに投資していくことは非常に大事なことなんです」と改めて、その意図を語る。

採用が難しいと言われているこの時勢に、定員を超える応募があったことに関しては、「どういう会社だったらきてくれるか」「どういうふうに育てたら本人が成長できるか」を、全社的に真剣に取り組んでいることが伝わっているのではないかと分析する。

若者たちの活躍に期待を寄せる中村社長と三善取締役(写真右)

新人教育カリキュラムの策定から現場指導まで携わっている三善容一取締役は「昔みたいな盗んで覚える、怒られて覚える、という時代ではありません。何をするにしても必ず理由があるので、ただ『やってごらん』ではなく、何のためにやるのか、それで何が形になるのかが伝わるような指導を心がけています」と、指導内容にとどまらない教える側の姿勢にも言及する。

新たな新人教育を始めて、2年目。服部さんの成長と新人4人の頑張りに「彼らがこれからどういうふうに成長し、どんな人生を歩んでいくのかめちゃくちゃ楽しみです」(三善取締役)。

明るくスタイリッシュな社内。「とてもおしゃれで綺麗な会社で、設備や道具も整っている、そんな働きやすい環境も、モチベーションにもつながっていますね。」(手島さん)

「未経験でもまったく問題ありません。ものづくりを楽しむ気持ちを持って、一緒に同じ方向を向いて頑張れる方に、ぜひ仲間に加わってほしいと思っています。私たちは新潟の有名な建築にも多く関わっていて、『これは自分が作ったんだ』と胸を張れる瞬間がある仕事です。そうした喜びを感じられる方には、きっとやりがいを持って働いていただけると思います」と語る中村社長。

採用と教育の両輪で充実を図り、「人が採れない」という業界の課題を覆し、新潟の建設業界に、まさに“つくる人を、次の時代へ”送り続ける中喜の挑戦。そこに確かな明るい未来への兆しが感じられた。

(インタビュー・文 丸山智子)

 

株式会社中喜(ホームページ)

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