【コラム第15回】喉摘手術を経て山間地に移住し17年、ブドウづくりの輪を広げる81歳! 竜哲樹(にいがた経済新聞社顧問)

雨の日も自宅前のブドウの様子をみる高橋さん

愛知県岡崎市で喉頭がんによる喉摘手術を経て、健康のことを考え、喉にいい自然豊かな地域での田舎暮らしを求めて上越市の山間地の一つ、謙信公の支城・箕冠城跡近くの板倉区の菰立に移住して約17年が経った。ぶどう栽培の適地ではなかったが、悪戦苦闘して数年後に本格的に何とかスタートした高橋達之助さん(81)だ。

と言うのも、元々山梨県山梨市で生まれた高橋さんは中学卒業後、近くの甲府市にあるブドウを含む果樹の農事試験場で約4年間、ブドウの栽培を学んだからだ。

しかし、その後は家庭の事情などで、50年以上はブドウとはかけ離れた運転手や自衛隊員、金物会社、鉄工所、建築リフォーム会社と職業を点々としたうえ、住所も東京や愛知などと様々なところで住んだ。60歳を前に喉頭がんを患い喉摘手術を受け、止むを得ず中山間地での暮らしを余儀なくされた。初めて山間の集落に来て、それでも何かしなくてはと思い、55年前の十代の頃に4年間学んだブドウづくりのことを思い起こした。とは言え、暖光が少なく雪深い菰立は決して適地ではなかったが、根気よく挑戦し、数年を経て何とか本格的にスタートしたのだった。

近所の人達もはじめは異様な眼で見られたと言う。次第に同地だけでなく、区内や市内、妙高市などからも「ブドウづくりを教えて貰いたい」と相談を受けるまでに評判になった。当初から数えると、40種類のブドウづくりと格闘したが、それでも今も30種類つくり、マーキァフィンガーやリザマート、シャインマスカット、巨峰、甲州、デラウエアなどをメインに、自宅の周りの約30㌃の畑で栽培する。これまでも果樹独特の病気に加え、アナグマやハクビシン、タヌキ、カラスなどの鳥獣被害との闘いもあった。

そんな中、市内外の20人ほどの人から声が掛かり、そこへ出かけては鉢植えのブドウを一緒になって植えたり、その後の管理を手伝っている。「ブドウづくりは野菜とは違い、簡単にいかないことも多い。何よりもブドウの木を理解し、焦らず辛抱強く作ってほしい。数年前から板倉区の11月の収穫祭にも声が掛かり、普段ならその時期ブドウはないのだが、晩生のブドウを何とか提供出来、区民から喜ばれることが何よりも嬉しい。私も81歳なので、いつまで出来るか分からないが、興味のある人がいれば、譲りたい」とも話す高橋さんだ。

 

竜哲樹
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。にいがた経済新聞社顧問。

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