【参院選候補インタビュー】打越さくら(立憲民主党)「米市場価格」「減税」「選択的夫婦別姓」にはっきり答えてくるタイプだった

打越さくら氏
7月20日に投開票が行われる。新潟県選挙区は、現職の立憲民主党・打越さくら、新人の自民党・中村真衣、参政党・平井恵理子、無所属・田平貞夫という立候補予定者の顔ぶれ。
7月3日の公示日を目前にして、現職・打越さく良氏にインタビューを行った。打越氏は1968年北海道旭川市生まれ。東京大学教養学部と教育学部卒業。2000年に弁護士登録。新潟県弁護士会所属。2019年の参院選新潟県選挙区で自民党・塚田一郎らに競り勝ち初当選。参議院議員1期6年を務めた。

6年前、初出馬の選挙の総決起集会
選択的夫婦別姓実現がライフワークに
打越は、立憲民主党ネクストキャビネット(次の内閣)で法務大臣に任命されている。参議院1期生にとっては破格の登用と言えるが、法務の実務者として党内の評価は相当に高いという表れだ。それは打越が弁護士時代に、DV救済や児童虐待防止、女性差別に端を発する医学部不正入試問題など深刻な社会問題に携わってきた経歴も買われてのことであろう。特に2012年から2015年の間で争われた第一次夫婦別姓訴訟では弁護団の事務局長を務めた実績もある。第217回国会で、実に28年ぶりに改正法案が出された選択的夫婦別姓制度の導入は、150日という長い会期の中でも可決の見通しが立たず、採決見送りとなった。
実は一般の国民の多くも、本当のところがよくわかっていないこの問題について、これをライフワークとする打越はどんな見解を示すのか興味深い。
<一部敬称略>
— 選択的夫婦別姓制度の導入は、今国会では採決が見送られました。率直な感想は?
打越 残念でなりません。導入反対派の意見で目立つのは「もっと優先すべきことがたくさんあるじゃないか」というものですが、国会議員は別にたった1つの問題だけを追いかけ続けているわけではありません。選択的夫婦別姓を審議しながら、米価高騰の問題やエネルギーの問題なども同時に審議しているわけです。「なぜ今」と言いますが、この法案が検討されてから約30年になるのですよ。
— 今回、野党からは3通りの法案が出され、立憲民主と国民民主から出されたのは制度の導入に向けた民法の改正案でした
打越 民主党が政権を取ったときに、そのマニフェストの中で選択的夫婦別姓の導入が盛り込まれていたので、長くかかわってきた者としては「やっとこれで報われる」と胸をなでおろしたものです。しかし民主党政権時代に、導入は実現しませんでした。「政治(の決定)を待っていてはダメだ」と思い、私たちは第一次訴訟へと踏み切ったのですが、とうとう私のライフワークになってしまいました。まさかこんなに長い時間がかかるとは思っていませんでした。
— 選択的夫婦別姓の導入に反対している人たちの言い分が「夫婦同姓でも不都合がないような法や制度の整備をすれば導入の必要はない」というものに変わってきました。日本維新の会の案も「旧姓の通称使用をすれば良いのではないか」というものです。一方で導入推進論は、あくまで強制同性婚によって侵された尊厳などに呼応する内容。「利便性の観点」と「心の問題」では、話はどこまで行っても平行線になりますね。日本の「選択肢のない同姓婚」で困っている人というのは、実際に数多いのですか?
打越 2025年の民間団体の調査では、「法律婚でなく事実婚を選んだ」人の多くが「夫婦別姓が認められないから」という理由からでした。要するに「夫婦別姓を選べない」ということは「法律婚」を阻害しているのです。マスコミの中にも「法律婚は夫婦別姓の採択待ち」と言っている人がいます。一方で与党は少子化に歯止めをかけると称して「婚活支援」などを打ち出しているから支離滅裂なのです。
維新の「通称使用の拡大でクリアできる」という案も、これが一般的になったら「戸籍だけの
夫婦同姓」になり理念的にどうなのかという疑問符が付きます。
反対する人の論調は「家族のつながりが崩壊する」とか、日本だけが未だに同姓婚一択なのを逆手にとって「外国に迎合する必要はない。日本には日本のしきたりが相応しい」というもの。既に「家父長制」などは大昔に崩壊しているのに。「それくらいの自由は認めてくださいよ」というシンプルな問題なのです、本来は。
消費税減税と暫定税率廃止
— 参院選では物価高対策が大きくクローズアップされます。与党は「定額給付金」、野党は全て減税路線です。立憲民主党もここに来てようやく「食料品にかかる消費税をゼロに(1年間。経済情勢を観ながら1回だけ延長可)」と「給付付き税額控除」を打ち出してきました。「ようやく」と言ったのは、立憲民主はこれまで「ガソリン暫定税率の廃止」なども含めて減税に対してあまり主張してこなかった印象があるからです
打越 立憲民主党が減税を主張してこなかったというのは違います。減税に対しては「セーフティーネットの構築によって控除を手厚く」という再分配を掲げてきました。またガソリン暫定税率の廃止については、一貫してずっと主張してきました。国民民主や維新の会が、予算案成立の条件として三党合意で進めたので、予算案に反対する立場の立憲民主党がそこに加わらずに埋没してしまった格好ですが、暫定税率に対しては同じ考えです。しかし与党は結局、暫定税率廃止案を廃案にしました。予算さえ通ってしまえば約束を反故にする、こんなことがまかり通っているのです。

国会で年金問題に斬りこむ打越さくら
— 減税の話になると判で押したように「財源はどうするのか」という反論。国が過去最高の税収を得ている一方で国民の生活はどんどん苦しくなるという状況下、財源論やプライマリーバランスで判断される話なのでしょうか?
打越 私たち野党が、自民党が決めた「給付金」や「防衛費の拡大」に対して「財源はどこにあるのか」と反論しても、それには答えずに、官僚を使ってさっさとやらせるのに。「一律2万円の給付金」にしても直近の党首討論までは「給付金はやらない」と言っていたのに、たった1週間で意見を翻して「やる」と。ガソリン暫定税率の経緯にしても、国のトップの言葉があまりにも軽すぎる。
財源ならあります。大企業や高所得層優遇の政治を改めて応分の負担を求め、官民ファンド、特別会計、基金等への税金のムダづかいをやめさせて庶民のための分配に使うのです。それが自民党政権ではできない。私たちに政権を任せてほしいのです。

農業生産者の人たちと
小泉農相は生産者の方を向いていない?
— 米価が高騰、市場に米が出回らない状況下、小泉進次郎農相が誕生しました。政府備蓄米を
随意契約で放出させてからコメの市場価格は落ち着き、自民党の支持率も上がってきました。
この問題に対する与党の姿勢についてはいかがでしょうか?
打越 私たち立憲民主党はコメの問題に対し一貫して「農家の所得補償を拡充させて」と言ってきましたが、与党は「そんなのだめだ」と言って「米の輸出拡大で儲かる農業を」などと言いながら、実質的な減反政策も進めてきました。その結果、今度は米が足りなくなりました。どうするんですか?という話です。
生産基盤の整備は必要ですが、簡単にできることではない。大規模化といっても限界がある。IOT技術などを駆使して効率化していくことも必要。実質的減反を止めさせないなど、少し気楽に考えすぎではないか、と。この食糧自給率でどうしますか。食糧安全保障にかかわる問題ですよ。
確かに小泉農相になってから与党の支持率が回復してきました。私が小泉農相を見て思うのは「この大臣は、本当の意味で生産者の方を見ているのか」ということ。小泉さんが大臣になって、最初に会いに行ったのは楽天の三木谷浩史社長など経済界の重鎮と言われる方ですよね。最近になってようやく生産者に会うようになりましたけど。
外国産米の輸入を拡大しようとしていたり、農水大臣というより経産大臣みたいな動き方ですよね。消費者が安く買えることはいいことですが、新潟県では生産者のための米政策が求められており、適正価格であることが求められるのです。
(編集部 伊藤 )