【プロ県議の現場主義#2】県営スケートパークとアーバンスポーツ振興を結実させた、市村浩二県議の一般質問

新潟県議会議員の市村浩二氏

スケートパークを持たない政令市

スケートパークという響きは、当時の新潟市民には耳なじみがなかった。

2021年に開かれた東京五輪でスケートボードが正式種目に採用され、ストリートカルチャーで生まれた「プレジャー」が「アーバンスポーツ」として昇華した瞬間ともいえる。もちろん世界的には、それ以前からX-GAMESのような巨大スポンサーがつく協議会が存在していたのだが、それが「スポーツ」として一般の人たちにも認識されるようになったのは東京五輪がきっかけといってもよいだろう。

その東京五輪で、若き日本人選手たちが大活躍した。別にストリートカルチャーがなじんでいるわけでもない日本が、なぜスケボー強豪国となったのか。育成システムの優良さ、練習への勤勉さなど理由はいくつかあるが、大きな追い風となった一つに「環境が整備されていた」ことが挙げられている。

2025年3月の調べでは日本国内に747カ所(公営430、民営317)のスケートパークが整備されている。東京五輪の2021年当時ですでに、国内には243カ所の公営スケートパークが整備されていた。

ところがだ。日本海側唯一の政令指定都市である新潟市には、2021年当時にスケートパークがなかった。市内の西海岸公園に管理者のいない野ざらしの「スケボーを滑ってもよい公園」はあったが、整備されたパークはなかった。

新潟県を見渡すと、スノボのメダリストでありスケートボードでも五輪代表となった平野歩選手の地元である村上市や南魚沼市には高レベルのパークがあり、県都新潟市にスケートパークがないというのはかなり恥ずかしい状況だったといえる。

一方で、新潟市のスケボー熱が冷めていたかと言えばそうではない。JR新潟駅の駅南広場や県営スタジアムの通路などには多くのスケーターが集い技を競い合う場となっていた。しかし一般の歩行者も多い場所であり、事故の発生などが危惧されていた。

海外のスケートパーク

2021年には新潟市スケートボード普及協会が発足。スケートパーク建設に向けて署名運動が展開され、2万筆を超える署名が集まる。署名簿は新潟市に提出された。

しかし新潟市は、スケートパーク建設に首を振った。理由は定かではないが、考えられるのはアーバンスポーツやストリートカルチャーに無関係な大人と、若い世代の間の温度差なのだろう。新潟市の財政は当時からかなり苦しかったが、実はスケートパークを整備する予算というのはそれほど高額なものではない(もちろん上を見ればきりがない)。

この時点で新潟市は、国内政令市で唯一のスケートパークがない街だった。

プロ県議・市村、動く

2021年に新潟市で起こったスケートパーク建設期成運動を注視していた人物がいる。新潟県議会の市村浩二県議だ。

市村県議の地元は新潟市中央区の駅南地域で、新潟の若いスケーターたちが行き場なく駅南広場で滑っているのを頻繁に見かけていた。このままにしていると確かに危ない。スケボーを愛する皆が、安心して楽しめる場所さえあればよいのに。

同年の12月に開かれた新潟県議会定例会一般質問で、市村県議はこれに触れた。

中略)オリンピック後、新潟市の小中学生が(原文ママ)市長に屋内スケートパークの設置を求め、2万人超の署名を提出するなど、本県においてもスケートボードやスポーツクライミングといったアーバンスポーツへの関心が若者を中心に高まっています。
県としてアーバンスポーツ普及に向けた施設整備や競技人口拡大に向けた取組について、知事の所見を伺います。

これに対し花角英世県知事は、

(中略)アーバンスポーツを含め様々なスポーツに関心を持った子供たちが県内において練習できる環境を整えることが望ましいと考えております。一方、スポーツ施設の新たな整備については、建設費はもとより、維持管理費等が新たな財政負担につながることから(中略)その必要性や設置主体を慎重に検討する必要があるものと考えております。

と回答している。

この時点ではまだ入り口かと思われたが、なんと翌年2月の補正予算で、やにわにスケートパークの建設費が計上された。目を見はるスピード展開だった。

しかも当初予算として組まれたのは約6,500万円だったが、最終的な実施予算はこの約6倍にまで盛られる本気モード全開となった。

新潟市中央区の鳥屋野潟公園内に建設されたスケートパークはその後、北越工業株式会社(2025年2月にAIRMANへ商号変更)がネーミングライツに手を上げ「AIRMANスケートパーク」という名称になった。

市村県議の質問がひとつのきっかけになった、県営スケートパーク構想

AIRMANスケートパークは2023年7月にオープン。この間にパリ五輪も開催され、冷めやらぬスケボー熱の中、好調な利用率を継続。初年度1年間で延べ14,439人が利用した。注目すべきは「県外からの利用者」が約1割となっており、新潟市の交流人口拡大にも寄与している点である。

マイカーでよその土地のパークに乗りに行くスタイルは、多くのスケーターに定着している。しかもSNSを駆使して拡散力があるだけに、乗りに行ったパークの評判は瞬く間に広がる。AIRMANスケートパークは「どのレベルでも楽しめる要素があり満足度が高い」と評され、スケボー関係団体からも「ほかのパークに比べて賑わいがある」と評判になった。

またオープン後は「アーバンスポーツフェス」や「MU∞EN(ムゲン)ダンスバトル」など、スケボーの枠を超えたアーバンスポーツのイベントが開催され、拠点として認知が上がっていった。

完成したAIRMANスケートパークにて

ダンス・踊りの街に、障がい者スポーツの振興も

「スポーツが盛んになるというのは、すなわちその地域の元気につながります。だからスポーツ振興は大切な行政の仕事なのです」(市村県議)

そんな市村県議が、アーバンスポーツ振興の延長線で考えるのは「ダンス」「踊り」の文化の振興である。パリ五輪ではブレイキンが競技として注目され、またひとつストリートカルチャーからアーバンスポーツへと昇華する存在が現れた。

AIRMANスケートパークで開催されたアーバンスポーツフェスにて、パリ五輪銀メダリストの赤間凛音選手と

「新潟には世界大会を4連覇しているChibiUnityという存在があるし、新潟総踊りも現在では全国から200を超える団体が参加し、県外からの交流人口拡大に大いに貢献している。歴史的にも民踊をはじめ踊りの文化が根付いていますから」(市村県議)

市村県議は、2025年2月に開かれた新潟県議会定例会の一般質問でも、新潟の踊りの文化を観光振興や交流人口拡大のための戦略的施策を提案している。

その結果、2025年3月に策定された「新潟県文化振興基本計画」にダンス文化の活用に関する内容が盛り込まれることになった。こうした提案は、地域文化を基盤とした観光振興や若者の関心を引き出す重要な戦略として評価される。

新潟の交流人口拡大にも寄与するにいがた総踊り

また市村県議は、アーバンスポーツとともに障がい者スポーツの振興にも言及している。

新潟県ではこれまで、新潟県スポーツ推進プランの見直しを進めてきた。市村県議は2020年の2月定例会連合委員会で、その成果指標中に障がい者スポーツの指標がないことを指摘。そこで改めて追加される運びとなった。

「2020年の当時で『障がいのある人とない人がともに参加しているスポーツ教室・イベント等がある市町村』が示され、実績があるのは県内で9市町村にとどまっていました。しかし2023年にはは23市町村が実施しています。県は全30市町村での実施を最終目標としています」(市村県議)

明確な定量目標は、人の励みになる場合が多いのだ。

(編集部 伊藤直樹)

 

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