【垣根を越えたリアルな学び場】起業マインドを育む講義に大学生や高校生たち19人が参加

株式会社リプロネクスト(新潟市西区)の藤田献児氏代表取締役
起業マインドを育てる特別講義が7月12日、開志専門職大学・紫竹山キャンパス(新潟市中央区)で開かれた。新潟大学が主催し、地域の実務家を講師に招いて行うアントレプレナーシップ教育の一環で、大学・高校を越えた学生生徒19人が参加。講師を務めた株式会社リプロネクスト(新潟市)代表取締役の藤田献児氏は、自身の起業体験や最新の事業事例を紹介しながら、社会課題をビジネスで解決する意義を熱く語った。
この講義は、新潟大学経済科学部が2024年度から開講した「起業・創業のための会計入門」の一部で、今年度の実務家による特別講義は今回が2回目。同大学に加え、開志専門職大学、新潟商業高校、新発田商業高校の学生生徒が対面で参加し、講義の様子はオンデマンドでも配信された。地域の若者が学年や校種の枠を越えて集い、起業家精神を育む新たな試みとして注目されている。
藤田氏は、人口減少による経済縮小への危機感から起業を決意。物理的な距離を超えて人と人をつなぐ手段として、メタバースやAI技術に注目し、仮想空間のプラットフォーム「Roomiq(ルーミック)」や、AIアシスタント「NOIM(ノイム)」などを開発してきた。

大学間連携および高大接続によるアントレプレナーシップ教育講義の様子

グループに分かれワークショップを実施、メタバースのビジネス活用について意見交換した
講義では、引きこもり支援や小学校での英語教育といった社会実装の事例を紹介。「メタバース空間では、人との距離を縮めることで行動のきっかけが生まれる。技術は人の心を動かす場にもなり得る」と語った。
また、自身の原点として「幼稚園の卒業アルバムに『会社のお仕事をしてみたい』と書いた」と明かし、社会に貢献する思いを胸に、アルバイトをしながら起業した初期の苦労や、事業が拡大する中で100万円の借り入れやプラットフォームの買収を決断した経験なども率直に語った。
「お金を稼ぐことが目的になっていたら、今のリプロネクストはなかった。起業は社会に必要とされる価値を形にする手段」と訴え、学生たちに「自分ならどうするか」を考えるワークショップも実施した。
講義を担当する新潟大学の有元知史准教授は、「企業会計の教育は、どうしても大企業を前提にした内容になりがち。若者が小さくビジネスを始めたいと思ったときに、現実に即した教育が必要だと感じた」と語る。大学独自の「メジャー・マイナー制」に基づき、全学部の学生が起業に必要な知識を横断的に学べるよう設計されている。
さらに、有元准教授は「学生の将来の立場は多様。起業する人もいれば、公務員や金融機関で起業を支える側になる人もいる。ビジネスの現場に触れることで、それぞれの立場から経済を支える想像力が育ってほしい」と話し、高校・大学を越えた連携にも期待を寄せる。
ワークショップでは、参加者が5グループに分かれ、メタバースの活用法を考案。修学旅行の仮想下見や就職合同説明会の仮想空間での実施、飲食店のアルバイト体験型サービスなど、学生ならではの視点で具体的な提案が発表された。藤田氏は「現実の課題に対してどうアプローチするかという発想がすばらしい。今日のアイデアの中にも事業化できそうなものがあった」と参加者の発表に賞賛した。