【梅川リポート⑨】「国産資源でエネルギー安定供給を」上越市でメタンハイドレート視察・講演会

午後には上越市市民プラザで2部構成の講演会が行われた
メタンハイドレートに関する視察・講演会が8月22日、新潟県上越市で行われた。新潟5区選出の梅谷守衆院議員の主催。当日の午前中は、同市の直江津港で産業技術総合研究所のスタッフの説明を受けての調査船視察、午後には同市の上越市市民プラザで2部構成の講演会が行われ、日本周辺海域に埋蔵が確認されているメタンハイドレートの研究開発が進展していることなどが説明された。
経済産業省資源エネルギー庁の永野喜代彦課長補佐によれば、同資源は将来のエネルギー安定供給に資する資源として位置づけられ、2000年代初頭から開発が推進されてきた。砂層型に加え、現在は日本海側で確認される表層型についても技術的研究が進められている。

経済産業省資源エネルギー庁の永野喜代彦課長補佐
国は「2030年度までに民間企業主導の商業化プロジェクト開始」を目標に掲げており、工程表や段階的な計画を定めて推進中である。2025年度は研究開発フェーズの区切りとなる年度に当たり、生産システムの検討や海洋調査が進行している。
上越沖メタンハイドレート調査の第一人者である東京大学の松本良名誉教授は、日本のエネルギー供給の現状について「低いエネルギー自給率」「原発への信頼性低下」「再エネ開発・実装の停滞」などを挙げ、深刻な状況にあると指摘する。そのうえで、2050年のカーボンゼロを目指す過程で、省エネ努力や再生可能エネルギーの発展が求められるが、現実的な対応として天然ガス利用とメタンハイドレート開発が重要になると強調する。

東京大学の松本良名誉教授
さらに、松本名誉教授は日本海や南海トラフに存在するメタンハイドレートの原始資源量について「国内天然ガス需要の20~25年分に相当」と言及し、再エネ社会が実現するまでの移行期における国産エネルギーとしての役割に期待を寄せる。
メタンハイドレートは、低温・高圧下でメタン分子が水分子に囲まれた結晶構造をもつ固体で、燃焼時の二酸化炭素排出量は石油や石炭の約半分とされる。そのため地球温暖化対策にも有効な新エネルギー源と位置づけられるが、現時点で商業化には至っていない。
新潟県上越市沖には豊富な埋蔵があるとされ、国の拠点を直江津に置いてほしいとの期待の声も上がっており、地域では国産エネルギーとしての早期実用化・商業化や直江津港を拠点とした産業振興や地域経済への波及効果も大きく期待されている。
(文・撮影 梅川康輝)