専修大学ゼミ生が妙高で地域活性化提案、「関係人口」増加へ多彩なアイデア

妙高市役所での最終日の発表会の様子

専修大学商学部マーケティング学科の奥瀬喜之教授のゼミに所属する女子学生21名が、9月9日から9月11日まで新潟県妙高市を訪れ、地域活性化をテーマとしたフィールドワークを行った。NPO法人はねうまネットワーク(新潟県妙高市)と専修大学(東京都)の共催。

大学生たちは妙高市内での調査や交流を通じて、妙高市が抱える課題と可能性を掘り下げ、最終日の11日には妙高市役所コラボホールで提案を発表した。会場には地元行政関係者が集まり、学生の視点から描かれた妙高の未来像に耳を傾けた。
今回の活動は「私たちの求める妙高市―なぜ私たちは妙高(地方部)を選ばないのか」をテーマに設定。若者が地方を選択しにくい要因を直視するとともに、都市部の若者が関わりを持ちたくなる妙高の魅力を再発見し、具体的な施策へと落とし込むことを目指した。

学生たちは2日間にわたり、市内各地で調査を行った。地域住民や事業者との対話を重ねる中で浮かび上がったのは、豊かな自然や人々の温かさといったポジティブな側面と、若年層の減少や交通の不便さなどの課題である。その結果、4つのグループに分かれて、特色ある提案をまとめた。

1つ目のグループは「妙高グリーンツーリズム」を提唱。米を中心に据え、日本酒の飲み比べや米粉を使った食品体験、美容体験を組み合わせた「妙高大地の恵みフェスティバル」の開催を提案した。地域の自然と農産物を組み合わせることで、観光誘致と地場産業の振興を同時に狙う構想である。

2つ目のグループは、上越エリアの歴史的建造物や食文化に注目。都市部の人々が2拠点生活を営む拠点として妙高を位置づけ、ワーケーション需要に応える仕組みづくりを呼びかけた。地域住民との交流を通じて「人の温かさこそ最大の魅力」と強調し、関係人口の増加を促す狙いを示した。

3つ目のグループは、妙高の特産品である「かんずり」を主役に据えた。首都圏での試食イベントや飲食店とのコラボレーション企画、さらには「かんずりグランプリ」の開催を構想し、ブランド力の強化と市の知名度向上を目指した。調味料を単なる食材にとどめず、交流と定住促進の契機とする点が特徴的である。

4つ目のグループは、サイクリングと観光を結びつけた提案を行った。レンタサイクルステーションの拡充や専用ロードの整備、観光スポットを盛り込んだサイクリングマップの作成を掲げ、若者世代が気軽に移動できる環境を整備することで、移住定着につなげる計画を示した。

君の井酒造見学の様子(はねうまネットワーク提供)

苗名滝見学の様子(はねうまネットワーク提供)

発表後には、地元関係者との質疑応答が行われた。学生たちは短期間ながらも妙高での体験を踏まえ、実現可能性や課題に関する指摘に真摯に応じた。奥瀬教授は「普段は消費者行動や商品企画を研究しているが、今回初めて地域課題に取り組んだ。学生にとって視野を広げる貴重な機会になった」と意義を語った。

この取り組みは、はねうまネットワークとの縁によって実現した。参加した学生は2年生から4年生までの幅広い学年にわたり、21名全員が女性。都市部の大学生が地方の現場に入り込み、地域の人々と対話を重ねる機会は限られている。今回の活動は、若者と地域との接点をつくり出す新たな試みとして注目される。

妙高市にとっても、学生による提案は新鮮な視点として受け止められている。行政や企業が抱える課題は複雑だが、若者の自由な発想と熱意が突破口を開く可能性を秘める。今回のフィールドワークは単なる一過性の交流にとどまらず、関係人口の拡大、さらには移住定着への布石として、大きな意味を持つものだと言える。

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