【記者ノート】「ユースエール」に認定され、若年層を積極採用 従業員に寄り添う働きやすい建設会社に(源建設)
木材業からスタート、土木建設のほか異業種にも
株式会社源建設(新潟県上越市吉川区)は、中山間地の多い上越市吉川区で1950年に設立し、75年間に渡って地域密着型の土木建設企業として、地域とそこに暮らす人々の安全と安心、快適な生活環境の提供を行なって来た。
同区は高齢化と過疎化が急激に進み、今は若者達の区外への転出も加速する地域であるが、そんな中でも、同社は先代が木材業を興したことからスタートし、その後先代(故矢澤正敏氏)と現社長(矢澤源一郎氏)が土木・建設(土木・建築・管工事や舗装工事・立木伐採等の解体事業も)を中心に地域を守って来た。
今はグループ企業も含め、土木建設(水田の圃場整備事業も)だけでなく不動産業や農業、車両関係、酒造販売など幅広く経営している。
社員と対話し本音聞き、完全週休2日制の導入
同社の谷中悠吾取締役は7年前、現社長の三女と結婚し、東京から上越市吉川区の株式会社源建設に入社し、約5年前に取締役に就任した。役員になったことで、経営陣として今後の若年層の雇用をどうしていくかが最大の問題意識となった。
同取締役は「土木建設会社に入る若者達が減って来ており、特に私どもの様な中山間地にある建設会社に入社してくれる若者は極端に少なかった。そこで、社長と危機感を共有しながら、若手社員や中堅社員との対話の機会を増やしていった。昼休みや仕事後に、時には一対一で対話するなど積極的に本音を聞いていった。次第に率直に話してくれるようになり、そういった社員からの意見をもらうことで、完全週休2日制の導入や有給取得の推奨などに取り組むことに繋がった。
経営陣の中では比較的若かった事も、話しやすさに繋がっていたのかも知れない」と当時のことを思い出しながら話してくれた。「中途採用にも力を入れた。異業種からの転職で働くことになった従業員が『前職は同じ作業をこなすだけだったり、ずっと室内作業だったので、将来のビジョンが見えなかったが、建設業は現場毎に毎回やることが変わって新鮮だし、工事の達成感もある。屋外で働けるのもとても楽しい』と話してくれた時は、大変嬉しかった」と付け加えた。
会社挙げ雇用管理の改善努め『ユースエール』に
その後も会社独自の休暇制度やハッピーバースディ制度など様々な工夫やアイデアにも取り組んだ。
同取締役は「今まではどうしても若手からの声が通りにくかった。そのため社員らのモチベーションも低下気味だったし、更に女性の広報担当社員らも協力してくれ、会社全体で働きやすい良い雰囲気を作っていった。現在どこの会社も若年層の獲得に必死であり、そんな中にも関わらず有難いことに2年続けて新卒の社員の採用にも繋がった」と嬉しそうに話す。
そのほか作業着における空調服の採用や使い易い土木器材・機械の利用など、従業員への様々な配慮もなされるようになった。こうした会社を挙げての努力が実り、今年5月厚生労働省認定の『ユースエール認定企業』に選ばれることになったのだ。
ウッドチップや米づくり、酒造販売なども
今、同社ではメインの土木建設業のほか環境事業部として、木材業からスタートしたこともあって、「上越ウッドプラント事業」にも積極的に取組み、立木伐採などを通してバイオマス発電用や紙パルプ用のウッドチップの生産も行っているほか、グループ企業として7㌶余りのコメづくり、上越市から買い取った株式会社よしかわ杜氏の郷(上越市吉川区)による酒蔵酒造・販売と幅広く異業種事業にも取り組んでいる。
同取締役は「公共土木工事の今後の見通しは不安定な部分も多いため、会社を維持発展させていくためにも、様々な事に取組んで行ければ。とは言え、中山間地域であることから、災害がいつ起こるかも知れず、何よりもそのための体制だけは整えておかねばならない。先代もそうだったが、社長も私も“地元愛”だけは守っていきたい」との地元への変わらぬ熱い思いを語っている。
竜 哲樹(にいがた経済新聞顧問)
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。にいがた経済新聞社顧問。