【梅川リポート17】Amaya farm(新潟県上越市三和区)が挑む独自製法のフリーズドライ商品
新潟県上越市でぶどう栽培を手掛けてきた歴史ある農園が新たな挑戦に乗り出した。1966年創業の北代葡萄園(あまや農園)をルーツとする株式会社Amaya farm(新潟県上越市三和区)である。令和元年に法人として新たな歩みを始めた同園は、フリーズドライ製法を活用した商品開発に力を注ぎ、今年1月から本格的な販売を開始した。これまで新潟伊勢丹「越品」での対面販売も行い、来場者から好評を得たという。
同園が目指すのは「フリーズドライを看板商品にすること」だ。旬のフルーツや野菜の魅力をそのまま閉じ込めた瓶詰めは、彩り豊かで目にも美しく、口にすると軽やかな食感と濃厚な風味が広がる。ヨーグルトやアイスのトッピング、さらにはワインや炭酸水との組み合わせなど、食べ方の提案も幅広い。保存期間は1年に及び、栄養価も損なわれない点が特徴である。
2年をかけた試行錯誤
開発は決して平坦ではなかった。フリーズドライの過程では、一度冷凍した材料を凍結のまま真空状態で水分を昇華させるが、フルーツごとに性質が異なるため温度や時間の調整が難しい。思うような仕上がりにならず、試作を繰り返す日々が続いた。試作から完成までには約2年間を要したという。商品が完成するまでにはおよそ5日間の製造工程を経る。こうした積み重ねが、現在のサクサクとした食感と鮮やかな色合いを実現した。
「お客様に驚きと楽しさを届けたい。その一心で試行錯誤を重ねてきた」と同社の室山明美代表取締役は語る。県内では唯一の取り組みであり、オリジナル性の高さが市場での強みになっている。
瓶に詰められた四季折々の果実
同園のフリーズドライ瓶には、季節ごとに異なる果実が彩りを添える。上越産のいちご「越後姫」、自家栽培のシャインマスカットや上越産のいちじく、さらには九州産のキンカンなどが並ぶ。とりわけぶどうは、祖父の代から続くあまや農園の伝統を背景にした主力商品だ。約50アールの畑で大切に育てられた房は、甘さと酸味のバランスに優れ、多くのリピーターを生んできた。価格は大瓶が2570円、小瓶が1980円。贈答品としても利用されており、手土産やギフトとして人気が高いという。
「お客様の笑顔に出会うために、一房一房に愛情を込めて育てている」。同園が掲げる理念には、半世紀以上にわたり家族で農業を営んできた誇りがにじむ。季節になると直売所には多くの人が訪れ、完熟した果実を求める賑わいが見られる。その熱気を一年を通して届けたいとの思いが、フリーズドライ商品誕生の背景にある。
カフェで広がる楽しみ方
上越市三和区の加工所「アマヤフリーズドライ」には、カフェ「マンマルテラス」も併設されており、人気商品となっているのがシフォンケーキだ。価格は税込350円で、三和牛乳を使用し、オレンジや抹茶など複数のフレーバーを揃えている。ふわりとした食感と素朴な甘みが評判を呼び、地元住民のみならず観光客にも親しまれている。フリーズドライ商品をアレンジしたメニューも検討されており、カフェは新たな食文化の発信拠点となりつつある。
今年に入り、新潟伊勢丹の「越品」で行った対面販売では、来場者が次々と足を止めた。瓶に詰められた鮮やかな果実は視覚的な訴求力が高く、試食をした人々からは「想像以上にサクサクして美味しい」「贈り物にぴったり」といった声が寄せられた。都市圏での反応を直に得られたことは、今後の販売戦略に大きな手応えをもたらした。
次代へ続く挑戦
フリーズドライ製品は、保存性と栄養価の両立により、日常の食卓だけでなく、災害備蓄やアウトドア需要にも対応できる。今後はオンライン販売の拡充やギフト展開を進める計画もある。
Amaya farmは、農業と加工の融合によって、新しい価値を生み出そうとしている。その背景には、半世紀以上にわたって守り続けてきた土地と果実、そして「お客様に喜ばれるものを作る」という一貫した姿勢がある。「旬のおいしさを、いつでもどこでも楽しんでもらいたい」。その思いが詰まった瓶は、農業の未来を切り開く象徴ともいえるだろう。
【記者メモ】
新潟県上越市在住ながら、初めて入ったカフェで初対面の室山代表にインタビューさせていただいた。以前、上越市三和区の知人に案内されて来たことがあったが、店内に入ったのは初だった。とてもおしゃれな空間で、ドライフルーツやシフォンケーキなどいかにも女性が好みそうなラインナップで中年男性記者の私は少し入りずらいかなと感じたが、今度マックブックを持って行きたいと思っている。フリーズドライフルーツは高品質な商品なので、感度の高い層にいかにアプローチするかが重要だと思う。今後の同社の動向に注目したい。
(文・撮影 梅川康輝)