【記者ノート】妙高はねうま複業協同組合理事兼事務局長東智隆氏インタビュー、移住者らに妙高地域で安定した収入の確保や仕事のマッチング・定着を提供する

旧保育園の中に事務所を設けた妙高はねうま複業協同組合の事務所前で東智隆事務局長

妻の実家、妙高で移住・定住のために尽くしたい

東智隆事務局長は愛知県春日井市の出身で、東京で知り合い結婚した妻の故郷へやって来たのが3年前。と言っても妻や子供達は現在横浜で暮らしており、それでも2週間に1度は帰っているという。元々東京で人事部門の仕事を23年間続けていたことから、妙高にやって来て最初に仕事に就いたのが、新井商工会議所で相談員だった。その前年にNPO法人はねうまネットワークを立上げ、現在代表理事を務めている。

その流れの中で令和5年6月に妙高はねうま複業協同組合(山崎健太郎理事長、組合加入企業12事業所)の開所へと繋げていったのだ。同組合は国の特定地域づくり事業協同組合制度の認可であり、移住や定住支援を行いながら、労働者派遣事業を行うものだが、派遣事業と言っても正規雇用である。

妙高のマルチワーク(複業)で充実の働き方実現

第5回新潟SDGsアワードの大賞の賞状と副賞の絵

第5回新潟SDGsアワード大賞にも選ばれた同組合では現在9人の従業員のうちマルチワーカーは7人(平均28歳前後で男性2人女性5人)が同組合からそれぞれの派遣先等で働いているが、これまでも具体的には事業所の繁忙期が異なることから、これまでも約3カ月ごとに派遣先を変え、春は農業(稲作等の農業法人)、夏は林業(森林組合等)、秋は酒造り(酒造会社)、冬は観光業(ホテル・旅館)といった異なる事業所で就労体験するなどして来た。

このように季節労働(短期)を通年労働(無期)に変えて来るなどして来たことで、各就労者に合った育成・キャリア形成を行い、働く場の確保という安定した雇用を生み出す仕組みをつくったことから、第5回新潟SDGsアワード大賞(主催・地域創生プラットフォームSDGsにいがた)を受賞することとなった。東事務局長は「移住希望者らをまず組合の職員として受入れ、安定した収入(仕事)の確保や仕事のマッチングによる移住者の定着率アップを狙い、努力して来た結果だ」とこれまでの取組みの成果を噛みしめている。

移住者に寄り添うべく妙高市もバックアップを

受入の事業所も昨年より2事業所増え12事業所を数えている。そんな中、昨年2人が同組合から卒業し就職や起業を果たした。1人はウインタースポーツが趣味で家族移住し、同組合で建設業など複数の仕事をして建設会社で働くことになり、もう1人は千葉県出身で、妙高市に移住し市内の3事業所での業務の体験を経て、その後空き家を改修し民泊施設の開業に至った。

もちろんそこには、移住者に寄り添うべく移住施策に力を入れる妙高市の様々なバックアップがあったことは言うまでもない。というのも、移住者の住まいの確保も重要であり、同組合とNPO法人はねうまネットワークが連携して移住者の居住支援も進めて来たことから、妙高市としてもそうした動きを後押しするため、本年6月に妙高市が特定居住支援法人の指定を行うことになった。

過疎少子化の中、人材確保・定着の基盤を創る

このように同組合を卒業した人達が、派遣先に就職するケースもあるし、起業することもあるし、同組合にいて内部を支えるケースもあるという。同組合では3年キャリアプランで進んでおり、3年をメドにした進路を考えている。これについて東事務局長は「過疎や少子化が進む妙高にあって、どのようにして県外などから若者らを呼び込み、育てながら、定着させていくかが私達組合の役割であり、人手不足が続く様々な職種において、人材確保を図っていくかが重要な使命と考えている。まさに持続可能な人材基盤を創っていくかである」と意欲的に考えている。

インタビューを受ける妙高はねうま複業協同組合理事兼事務局長の東智隆氏

 

竜 哲樹(にいがた経済新聞社顧問)

昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和483月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。にいがた経済新聞社顧問。

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