【記者ノート】「全国初の本格的なデュアルシステム」のライトシップ高等学院、「グッドデザイン賞」受賞
ライトシップ高等学院カリキュラム「グッドデザイン賞」
今年4月に新潟県上越市港町の直江津港佐渡汽船ターミナルビル内に開校したライトシップ高等学院が進めるカリキュラムがこのほど、公益財団法人日本デザイン振興会の「グッドデザイン賞」を受賞した。受賞理由の一つに、「現在の画一的な教育が生む弊害も課題であるため、課題解決を見据えた価値ある手法の好事例」として評価されたものだ。
この広域通信制高校を活用した「新しい学びの場」を立ち上げた松本将史学院長(46)は、「日本で初めての本格的なデュアルシステムを高校教育のスタンダードにしようと挑戦しているなか、当学院のカリキュラムがグッドデザイン賞に評価されたことはとても嬉しい。トップランナーとしての課題を乗り越えながら、ライトシップ高等学院の運営モデルを確立していきたい」と喜びを語る。
「高校卒業・働く・地域おこし」は通信制の強み
元々新潟県立海洋高校で教員として活躍して来た松本学院長は、「職業教育に長年携わってきたので、現状のキャリア教育の課題を自分なりに把握し、それを克服する仕組みを考えてきた。当学院の開校に向けては、協力していただく企業様への株式の発行を想定し(現在未発行)、株式会社LIGHTSHIPを起こし、2年掛けて準備してきた」と経緯を話してくれた。
同学院の生徒は、新潟産業大学付属高等学校通信制課程に在籍し、オンライン等で教科学習に取り組み、高校卒業に必要な単位取得する。また、地域の企業と開発した独自のOJT(有給インターンシップ)カリキュラムにより、各企業でその業種・職種の初級レベルの知識と技術を身に着けることができる。
さらに、学院生同士が協力して地域課題を解決するプロジェクト型学習にも取組み、持続可能なまちづくりにも貢献する教育プログラムもある。
高校卒業に必要な教科学習と職業訓練を同時に受けられるというドイツの教育制度であるデュアルシテムを基盤に、地方創生に資する地域人材の育成を目指すいう、これまで国内には存在しなかった新たな高校教育が上越市に誕生しているのだ。
学習活動の一環でまちの賑わいづくりにも貢献
先日、同学院にお邪魔させて戴いた折、10月25日に開催する佐渡汽船ターミナル1F旧売店の再生を目指すテストマーケティングの“第3弾”ともなるイベント(手洗い洗車や飲食提供等)に集客するためのポスター掲示依頼やチラシ配りなどの打合せを行っていた。松本学院長は「前回SNSで集客できなかった経験から、泥臭い方法に行き着きましたね。体を張ってまずはやってみよう、という考えが芽生え始めていますね。」と学院生達の成長を感じ取っていた。
今年の1期生は地元上越市をはじめ糸魚川市や妙高市、十日町市などからやって来ており、南魚沼市から列車で通う男性(16)は「自動車整備の仕事がしたくて入校した。勉強も出来、仕事も出来るのでとても充実している」と仲間達との学院生活を楽しんでいる。遠距離の学院生のための寮も完備する。
「才能を磨け」のキャッチフレーズに込められた教え
全国初の本格的デュアルシステムの通信制高校ということで、学院の周知には時間をかけているが、まだまだ全日生課程に進むのが当たり前という風潮を大きく変えることはできていない。しかし、現役の学院生の姿が、少しずつ市民の価値観を変えていくのだと思う。学院生募集のキャッチフレーズは『才能を磨け』である。
松本学院長は「“才能”は、第三者が認知するその人特異の能力のことであり、様々な経験を経るなかで形成されるものです。持って生まれた力を指しているわけではありません」と言う。
まさに、学院が重視する実践こそが、才能を磨くプロセスなのであろう。また、安易な「自己評価」が社会に蔓延するなか、松本学院長は「評価は第三者が行うこと」と学院生に事あるごとに伝えている。仕事の評価はお客様がする、という社会人になって初めて気づくこの感覚を、15歳の子供たちが身につけていった先の高校卒業時の姿が楽しみでならない。
今後の学校説明会は、上越会場が10月25日と11月24日、柏崎会場が11月15日に実施される。また、随時学校見学や個別相談にも応じている。詳細やお問い合わせはライトシップ高等学院のHPより。
竜哲樹(にいがた経済新聞社顧問)
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。にいがた経済新聞社顧問。