【にいがた健康経営ストーリーズ vol.01】社員発案の施策も採用し、人生を豊かにする働きがいのある企業へ 株式会社村尾技建(新潟市中央区)
経済産業省が現在推奨している、社員の健康管理から企業の生産性向上を図る「健康経営」は、今、働く上で注目される要素の一つとなっている。6年連続で「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」に認定されている株式会社村尾技建(新潟市中央区)の取り組みから、社内に健康経営が浸透する鍵を探る。
健康経営支援・コンサルティングサービスを提供している株式会社アイセック(新潟市中央区)の木村大地代表取締役CEOによるプロからの視点で分析するシリーズ第一弾。
健康作りに手厚い施策の数々。6年連続「健康経営優良法人」認定!
従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」の推進を経済産業省が始めて10年を超えた。健康診断の補助や運動習慣の推奨など、従業員の健康管理が推進されることで、従業員自身の活力・生産性が向上し、その先に業績アップが期待されるとするアメリカから生まれたこの概念は、国内では2000年代中頃に定義され、2013年に「健康経営優良法人認定制度」が始まった。
今年設立50周年を迎えた地盤調査・建設コンサルタント企業・株式会社村尾技建(新潟市中央区)では、6年連続で経済産業省と日本健康会議で選定する「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」に認定された。新潟市健康経営優秀賞なども受賞しており、その取り組みは広く高く評価されている。
<村尾技建の健康経営コンテンツ一例>
■ノー残業デー&社員研修「M-JUKU」の開催
村尾技建では毎週水曜日をノー残業デーに設定し、その日の夕方は2021年からスタートした「M-JUKU」という社員研修を定例化。
意識・業務レベルの向上と自己研鑽の機会となる社員研修を行っており、ここで食生活改善やセルフケアなど健康をテーマに取り上げる機会も設けている。
■人間ドックおよび一部がん検診を全額補助
2023年からは同社では全社員の人間ドックと一部のがん検診を全額補助している。
「会社で受けてほしいと社員に言っているのに、一部自己負担ということに私自身疑問を持っていました。受けてもらいたいなら負担しないと」(村尾社長)
■スポーツ活動奨励金制度
社員の運動不足改善を目指して設立した制度。3人以上のスポーツサークルの活動費や、個人のスポーツイベントの参加費を年間一人当たり1万円を上限に補助する。新潟市の「ウォーキングチャレンジ」にも参加を呼びかけ、社内での表彰制度を設けている。
他にも様々な切り口から社員の健康を支援する施策を導入しており、確実にその成果を上げていっている。
社員の幸せな人生を目指し、慢性的な残業体質にメス
健康経営へ積極的に取り組んでいるように見える村尾技建だが、その背景にある思いは「健康経営」ありきではない。
「同じ組織で一緒に働く仲間が健康で幸せになってほしい、その想いからずっと取り組みをしていて、結果として現在認定をいただいています」と話すのは村尾治祐代表取締役社長だ。
25年前、村尾社長が技術職として入社した当時の村尾技建では、繁忙期を過ぎても残業する状況が常態化していた。
「時代的にも業界的にも、それが当たり前という認識でした。しかし異業種である製造業の知人と話した時に、残業が全くない話を聞いて衝撃を受けました。そこから長時間労働に対する意識が芽生えたんです」(村尾社長)
2011年に代表取締役社長に就任した村尾社長は、労働環境の改革に本格的にテコ入れを図り始めた。しかし、単純に労働時間を短くすれば、それだけ生産性は落ちてしまう。業務の効率化には社員の成長が不可欠と判断し、一番労働時間削減が難しかった技術部にベテラン技術者チーム「技術審査室」を設置。技術審査室のベテラン技術者が全ての現場に入りアドバイスをすることで、新人から中堅技術者のスキルアップとそれに伴う労働時間の削減に繋げた。
「これまで当たり前だと思っていたことを変えるのは、やはりすぐには難しいものです。ですが、働く時間が短くしても売り上げを維持できれば利益率が上がり、その分を社員に還元できます。そうした工夫によって成果を上げれば、それが社員に還元されるということを、少しずつ理解してもらえるよう取り組んできました」(村尾社長)
社員の要望と公平性を大切にした施策で、新卒離職率は3年連続0%
健康経営の施策を現場レベルでリードするのは、7年前から健康経営部門を担当している管理部の齋藤百代課長代理だ。「経営方針と社長の意向に沿った取り組みができるよう努めています。常に社員の声にアンテナを張っていて、上がってきたアイディアや要望は必要性・実現性があると判断すれば社長に提案しています」とのこと。
冒頭に紹介したスポーツ活動奨励金は、まさに社員からの要望で採用されたもので、村尾社長も「社員発のアイディアは基本、乗ります。同時に特定の人だけではなく、全社員が恩恵を受けられる制度にすることを意識しています」と、公平性にも心を配りながら、積極的に施策を採用していっている。
結果、人間ドックを受ける社員数は増加。健康診断の再検査受診の呼びかけも強化したところ、従来横ばいだった再検査受療率が20%も向上した。さらに新卒の3年以内の離職率0%を3年連続で更新(就職3年以内の全国平均離職率は3割以上)しており、働きやすい会社、自分自身を大切にできる会社という納得感が現場に浸透していっているようだ。
勤続10年目、事業開発部の村山岳彦係長も「社員のために様々な施策を計画してくれていると強く感じています。例えば私は、会社の呼びかけから新潟市主催のウォーキングチャレンジという企画に毎回参加しています。それをきっかけに歩数をチェックしたり、平日あまり歩けなければ休日に歩く意識づけができました。有給取得の環境づくりも徹底されていて、私は金曜に取得して3連休にして家族サービスをすることが多いですね。ノー残業デーは子どもの保育園のお迎えにも行けるし、それが普通にできることがありがたいです」と声を弾ませる。
村尾技建の取り組みは、社員一人ひとりの人生や働き方にアプローチするだけにとどまらず、社外にも確かなインパクトを与えているようだ。
村山さんによると、健康経営の各種認定を受けたことがメディアにも載ることで、同業者から「新聞に出ていましたね」「すごいことやってるね」という声をかけられることが少なくないそう。業界からの注目度の高さが窺える。
充実した人生のために、健康経営は目的ではなく手段
健康経営という概念にはまった村尾技建。健康経営は目的ではなくあくまでも手段というわけだ。
これだけ健康経営を現場に浸透できている秘訣については、社長が率先して発信し、協力する重要性を齋藤氏は挙げる。さらに「取り組みたいことはたくさんありますが、一番どの課題を改善したいのか優先順位をつけることを大切にしています。今後は特に睡眠に注目しながら、運動に取り組むきっかけを作っていきたいです」と、さらなる体制向上を志す。
村尾社長が目指す自社の将来像は、「幸福度業界No.1の組織」だ。
「生きるために働くのであって、働くために生きているのではありません。目指すのは生き生きと活躍できるような組織づくりであり、施策はその一環。意欲的に働けることは真の健康経営に通じていると思います。社員一人ひとりが仕事にやりがいや働く喜びを感じられて、社会に貢献していきたいと思えるような組織へ。そのためにこれからも積極的に取り組んでいきたいと思います」
会社という枠を超えた視座で、社員の人生における幸せと健康を考える村尾氏。後半では、その考えと行動に健康経営のプロが切り込む。
【健康経営対談】
アイセック木村大地CEO×村尾技建村尾治祐社長 「型」ありきではない、健康経営の本質がここにある
木村CEO 村尾社長のお話の中で、印象的だったのが「変化を恐れない姿勢」です。社員からの要望を柔軟に受け入れ、今までの取り組みを進化させ形にしていく。特に仕組みを変える際に「公平性」を担保している点も素晴らしいことだと思いました。
村尾社長 公平性は価値基準として大切にしているところです。経営者が良ければ、一部の社員が良ければ、ということはありません。スポーツ支援も、それが社員皆なの幸せや働く喜びにつながるなら、悩む必要はありません。社員一人ひとりにとって働きやすい環境というのは絶対必要なんです。
木村CEO 今、国や自治体が準備した「健康経営」の型にはめて健康経営をカタチだけ進めよう、そして採用等のブランディングに生かそうという企業が増えています。結果、型だけ作って従業員に浸透せず、経営層の理解や真剣度が深まらず、形骸化して続かないケースが出てきています。
一方で村尾社長は、社員を大切に思って地道に取り組んできたことが、結果健康経営の思想と相まって健康経営の土台が作られている。これは健康経営の本質だと思うんです。
村尾社長 型にはめて施策を作っていないので、型にはまっている前提の質問をされると答えづらいんです(笑)。なんのために健康診断をしているのか。認定を受けるためではなく、社員の健康的な生活を支えるためです。社内でも時々「なんのためにやっているのか、目的を見失うな」と言っています。
木村CEO 最後の質問ですが、「ここで働いてよかった、退職した後も健康で充実した人生を送ってもらいたい」そんな組織作りを考えるようになった背景を教えていただけますか?
村尾社長 学校を出てから定年まで、ずっと当社で働いてもらって、退職したらあとは自己責任というのはありえません。当社に関わった以上はファミリー。棺桶まで笑顔でいてほしいし、途中で病気になってほしくないんです。
労働で一生終える生き方ではなくて、自分の時間を楽しめたり、定年後も豊かに生きることを、職場が削ぎ落とすのではなく下支えになる場であってほしいですね。不健康になることを許容するなら、その組織はないほうがいいです。弊社もまだまだ足りないところがあるので、もっと貪欲に社員の健康と幸福を追求していきます。
木村CEO 経営トップが、経営戦略の根幹に従業員への思い遣りが根付いており、結果的に健康経営が社員全員で推進されている村尾技建様、これからどんどん中小企業のロールモデルになっていってほしいと感じました。ありがとうございました!
【企業情報】
株式会社村尾技建(新潟市中央区女池南2丁目4番17号)
ホームページ:https://www.muraogiken.co.jp/
株式会社 村尾技建は、1975年に新潟本社を設立。地質・土質調査、環境調査、測量、計画・解析・設計といった建設・防災・環境分野におけるコンサルティング事業を展開してきた。官公庁をはじめ多くの取引先とともに、大地と人との調和ある社会づくりに貢献。2025年には設立から50周年を迎え、半世紀にわたる実績を礎に、次の50年へ向けた災害対応力の強化や人材育成と技術革新に注力している。
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