【第11回】外国人労働者~外国人雇用とその在留資格〜勝島一真(税理士・行政書士)
私たちビジネスカツシマグループでは、新潟、東京で開業支援業務、経営・財務会計コンサルティング業務、事業承継・M&A業務を、上越市で税理士業務、行政書士業務をおこなっています。それぞれの分野を特化させて専門性を磨き経営のお役にたてるビジネストータルサポートを目指しております。
10月は変化の月といわれていることだけあって、色々なものが変化しました。たとえば食料品や公共料金の物価変動からはじまり、自民党総裁選や首相指名選挙で国のトップが変わり、上越市ではつい先日上越市市長選挙がおこなわれました。
総裁選では論点のひとつとして外国人政策がありましたが在留資格の取次申請業務をおこなっている私からすると、日本はこれから外国人をいったいどうしたいのか、どのように外国人とむきあっていきたいのか、政策の方向性に少し迷いがあるのではと感じてしまいます。
一番動揺しているのは、現在真剣に日本で働いている外国の方たちかもしれません。例えば、経営者に与えられる「経営管理」という在留資格を保有し、日本で会社を営んでいる外国人は、今から3年以内に会社の資本金を3000万円以上にしないと在留資格の更新ができない可能性がでてきました。2025年10月16日以降、「経営管理」の在留資格を取得したい方は今まで資本金500万円を用意すれはよかったのですが、最低でも資本金3000万円以上を用意して会社を設立しないと、はなから申請ができないという改正がすでに施行されています。
日本法人における資本金の設定で、割合が多いのは「300万〜500万円」で、日本法人の96%が資本金3000万円以下の法人です。日本で会社を設立した外国人からすると資本金3000万円以上の会社をつくるのはとてもハードルが高くなります。
街でよく見かける外国の方が経営するカレー屋などの多くは「経営管理」の在留資格を取得し経営していますが、ほとんどのお店(会社)は資本金500万円から1000万円が多いことから3000万円まで増資しないといけないとなれば、お店継続の検討、もしくは閉店し国に帰らざるを得ない方たちが続出することになってしまいます。
日本、新潟、上越の在留外国人の数
在留資格(ビザ)を取得し日本に住んでいる外国人のことを在留外国人といいます。在留外国人は日本の入管の厳しい審査を経て日本に滞在されることが認められている人たちのことをいいます。つまり観光や出張で数日来る人ではなく、日本に中長期滞在し住民票も登録されている人たちのことをいいます。
この在留外国人の数は年々増加しており、日本全体でみると令和元年は293万人であったのに対し、令和6年では358万人まで増加しています。
ちなみに新潟県全体の在留外国人数は、令和元年は18861人に対し、令和6年では22139人、上越市の在留外国人は令和元年が1678人で令和6年では2377人となっており、ここ5、6年の間に外国人が増加していることがよくわかります。
日本全体における国別の割合は
1位:中国(23.5%)、2位:ベトナム(16.7%)、3位韓国(11.5%)
上越市における国別割合は、
1位:フィリピン(40%)、2位:中国(14.2%)、3位:ベトナム(12.0%)
外国人の雇用について
外国人を雇用する場合は、雇用したい外国人がどのような在留資格(ビザ)をもっているかということはとても大事な確認事項となります。雇用してもよい在留資格とそうでない場合があるからです。
例えば、留学生などは「留学」という種類の在留資格を取得し日本に滞在していますが、入社を希望しているからといって日本人のようにすぐに雇用させることはできません。すなわち留学ビザのまま就労することはできず、働ける在留資格を得ることが必要となることから、入社を希望している人が就労できる在留資格を得ることができる人なのかどうなのかの判断がまず必要になります。
働ける在留資格を得るためには色々な要件をクリアしていることが求められることから外国人の中でも限られた人になります。
※在留資格が「永住者」、「日本人の配偶者」「永住者の配偶者」「定住者」の方であれば、就労制限なしですぐに雇用することができます。
技能実習と特定技能の違い
外国人がたくさん働いている会社や工場の外国人はどの種類の在留資格をもっているの?と聞かれることがあります。そのほとんどは以前からある「技能実習」という在留資格を得てその制度の中で働いています。
また数年前から日本企業の人材不足を背景に「特定技能」という在留資格が誕生し、業種は限られますが、一定の要件をクリアすれば外国人を雇用できる仕組みができました。
外国人の雇用を考えている企業としては「技能実習」か「特定技能」の在留資格を選択肢として考える方が多いのではないでしょうか。
「技能実習」と「特定技能」はどちらも外国人が日本で働くための制度ですが「目的」と「在留資格の性質」がまったく異なります。
「技能実習」の主な目的は、「日本の技術を母国に移転するための人材育成」といった、国際貢献や研修の要素が強く、「特定技能」の主な目的は、「人手不足の分野で外国人が即戦力として働く」といった労働力確保の要素が強くなります。
つまり、「技能実習」は、学ぶために働く制度、「特定技能」は、働くために働く制度となります。
私が感じる「技能実習」と「特定技能」のおおきな違いのひとつに雇用形態があります。「技能実習」は外国人と企業との間に必ず監理団体(組合)を通さないといけないルールがあります。一方、「特定技能」は雇用者と企業の直接雇用契約になるため、組合や管理団体を通さず、自社で管理させることができることからコストの面においても大きな違いといえます。
いずれにしても外国人を雇用する場合、在留資格はとても複雑な制度となっておりますので専門家等に相談しながらすすめていくことをおすすめします。


