【岩盤リベラルを崩せるか】自民党が県都を託した内山航(新潟第一選挙区支部長)の「挑戦」

次期の自民党新潟1区候補に内定した内山航新潟市議

新潟にある「岩盤リベラル」

高市早苗内閣が誕生して約1カ月。臨時国会における予算委員会では「存立危機事態」という単語を独り歩きさせ、台湾問題(Taiwan Issue)や中国との関係悪化などで大揉めになっている。一方で高市内閣の国民支持率は70%に迫り、依然として民衆人気は高い。こうしたネジレはオールドメディアの報じ方や、立憲民主党ら野党の追及がいかにクリティカルなものでないかを象徴しているように見える。

国政は、今何を求められているのか。民意が示されるために選挙がある。

注目されるのは次期解散総選挙のタイミングだ。「来春にも」と噂に上るが、果たしてその時にどんな風が吹いているのか目が離せない。特に新潟県は石破政権下で戦った前回選挙で5つの選挙区を全て立憲民主党の候補にあけ渡し、自民は唯一新潟3区で斎藤洋明が比例復活で得た議席を守っている状況。なぜ新潟県ではこれほどまでに立憲が強い(自民が弱い)のか。新潟県の戦況はまるで、全国とは逆に「岩盤リベラル層」とも言える。「保守王国」など今は昔になってしまった。

そんな中、自民党新潟県連では今年5月に小選挙区新潟第1選挙区支部長(次期公認候補)公募を行った。前支部長だった塚田一郎氏の辞任に伴う公募である。元国会議員、官僚など10数人から応募があった中で、9月、次の県都決戦を託す候補に新潟市議3期目の内山航氏(44)に白羽の矢を立てた。

内山氏のプロフィールを簡単に紹介する。新潟市立上所小学校、新潟市立鳥屋野中学校、県立新潟江南高校、新潟大学経済学部卒、と生粋の新潟っこ。大学卒業後にパチンコ大手に就職。その後、参議院議員森裕子(当時自由党)の秘書となり、その関係で2012年に行われた衆議院議員選挙で新潟1区から出馬(日本未来の党公認)し3位で落選。さらに2015年の新潟市議選に出馬し初当選した。

新潟市議会では「スケートボードパークの開設」「JR新潟駅周辺キャッチ禁止条例の制定」「駅南バスの実現」「JR上所駅の開設」などに尽力し、実績を積み重ねてきた。

ここまで衆院選新潟1区は2017年の第48回から数えて、自民党候補が3連敗。地方都市における「岩盤リベラル」の牙城は高くなっている。

某日、内山氏を事務所に訪ねた。

議場にて

今の新潟にない「夢」

―― 1区支部長の公募に応募したきっかけを教えてください

内山 支援者の方に声をかけてもらったのが直接のきっかけですが、気持ちの中には「挑戦の一歩はいつも自分から」という想いがあったので。もちろん後援会の皆様にも相談し、妻にも相談しました。これまで政治関連で私が相談すると、たいていは反対していたのに今回は背中を押してくれて涙が出そうになりました

― 県都を選挙区とする1区の候補になるわけですが、市政から国政への想いをお聞かせください

内山 自分なりに経済や安全保障に対して思うところもありますが、あまり突飛なことは言わないと決めています。基本的には市議の経験で培ったことの延長線上にあります。地域の要望を吸い上げ、それを国会に持っていこうと。市議の時代も、一人の小さな要望が地域の「夢」となり実現していく姿をいくつも見ました。一人の小さな挑戦がいつか誰かの夢になる

―― 今の「新潟の夢」は何ですか?

内山 今の新潟は、ちょうど夢を失っているのだと思います。だから元気がないと言われる。不自由ではありますが、国の直轄事業もごくわずかが進んでいるだけ。「地域の悲願」みたいなものが思い当たりませんよね。もちろん道路、橋、ハコ物ばかりが夢とは言いませんが

国政選挙で自民党が低迷していると言われますが、新潟では県議も市町村も自民党が強い。どうしてかと言えば、自民党が一番地域と向き合い、地域の要望を聞いているからだと思います。地域の要望が「夢」だとすれば、国会議員レベルなら国がかかわる夢を後押ししたい

 

なぜ自民党はダメになったのか

―― 少し前まで「自民党がダメになった」という声があちこちで聞こえていました。本当に自民党は昔に比べて「ダメになった」のでしょうか

内山 これは考え方もあるのでしょうが、自民党がダメになったのではなく、人口減少によって国民の生活が苦しくなった、その閉塞感からだと思いますよ。私の親父の世代は「昔はよい時代だった」と言って景気が良かったころを懐かしむ、若い世代は世代間ギャップで大勢の高齢者を支えていかなければならないことに不満を覚える。それが政権与党に向いてしまっているのだと

―― 「在留外国人問題」「政治と金の問題」「米価高騰の問題」「選択的夫婦別姓」今国政レベルで論戦が展開される問題に、端的なお考えを

内山 「在留外国人問題」は、やはり今後の受け入れは慎重にならざるを得ないかと。やはり日本がこれまで「当たり前」としてきたことが減るのは良くない。よく「外国人による犯罪が増えたなど聞いたことがない」と言う声も聞きますが、私たち新潟市民はどうしても拉致問題のことから離れられない。昔「拉致なんかない」と叫んでいた人がたくさんいたわけですから

「政治と金の問題」これは裏金の話ですか?(編集部:企業献金の是非についてです)なるほど。私自身も企業献金はいただいていますが、これを全部規制されてしまうと、よほどのお金持ちか組合の組織内候補しか選挙に出られなくなってしまいますからね

「米の問題」やはり農家が希望をもって経営していくことができるのは大切。まずは農家が続いていかなければいけないので。輸入米は増やしてはいけない。「日本で農業をする必要がない」などと極論を言う省庁もあると聞きますが、食料の安全保障はどうするのか。取り返しのつかないことになりますよ

「選択的夫婦別姓」には反対ですね。理由は夫婦だけの問題でなく、子供の問題でもあるからです

※      ※      ※

(感想)1区の次の支部長が内山氏だと聞いたときに、正直意外だった。しかし今の国政を見渡すと、国会討論では国を良くしようという建設的な内容ではなく揚げ足取りの批判合戦。そうかと思えばSNSや動画で、いかに相手を論破しようかという逆張り。国民の負託を受けた政治家の仕事って何?と辟易とする思い。「地域の要望を聞いて国政に持っていきたい」――こんなシンプルな抱負に、むしろ政治の原点を見た思いがした。

 

 

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