【逆境選挙を乗り越え】鷲尾英一郎(自民党)が捲土重来期す「新潟の政治家として、日本農業復活のために」
次期総選挙において小選挙区新潟4区で捲土重来を期す自民党・鷲尾英一郎前衆議院議員の近況を尋ねたく、本人にアポイントメントを申し入れると、その多忙ぶりに驚いた。
昨年11月の総選挙で議席を失い、既に現職の身でないにもかかわらず、かなり先まで予定がびっしり詰まっている。イベントや会合、選挙区内を歩いて有権者のあらゆる声を拾っているのだという。朝と夕方には必ず辻立ちで「本人」のたすきをかけての手振り。スケジュールは30分刻みで埋まっており、まるで県知事のアポをとっているかのようだ。
「初出馬の時からずっとこんな感じです。そういう行動は変わっていません。性分ですかね」と鷲尾本人は自嘲気味に笑う。
2005年の第44回衆議院議員選挙に民主党公認で旧新潟2区から初出馬、以来、6回連続当選。選挙に強い政治家のイメージだったが、2024年10月に行われた総選挙には誕生したばかりの石破茂内閣の下で自民党公認、新しい区割りとなった新潟4区で出馬し、政治家人生で初めての落選を味わった。
「選挙に強いイメージ」というのは、鷲尾の政治家人生を振り返った時、6期目の比例北信越ブロックを除けば1回として楽な選挙がなかったこと、しかも割と理不尽な逆境を、その都度跳ね返してきたことがそう思わせるのだ。
民主党公認として戦った旧2区では連合新潟の推薦を受けられず、別の革新系候補が常に出馬して、新潟6選挙区のうち唯一野党共闘が成立しない分裂選挙を強いられてきた。
前回の選挙では新しい区割りになったため、長岡市や魚沼エリアなどこれまで選挙をしたことのない市町村で出馬した。鷲尾自身の知名度不足が懸念される一方で、相手には全県で知名度のある「知事経験者」が二人。しかも今度は、全国265選挙区で新潟4区ただ一つという自民党系の分裂選挙。政治資金パーティーの裏金問題などで自民に逆風が吹く中で受けるさらなる不利は、さすがの鷲尾といえども跳ね返すことはできなかった。
落選後は翌2025年7月に行われる参院選に向け、自民党公認の中村真衣氏の応援に全力で挑んだ。中村候補の地元が4区の長岡市ということもあり、鷲尾は選対の中心として精力的に動いた。対抗の立憲民主党候補が組織作りで後れを取る中、年明け前から着々と準備を始めた中村陣営は、当初優位に進めたと言える。しかしふたを開けると石破自民党の支持率は予想を上回る低迷ぶり。また急激に支持を拡大した参政党候補に、保守層の票が大きく切り崩されもした。とどめは選挙戦中に自民党議員が決定的な舌禍事件を起こし大勢を決した。中村候補も最後まで追い上げ肉薄したものの及ばなかった。
ことごとく「身内に足を引かれる」選挙の連続。それでも「地元をくまなく回って有権者の声を聴く」という基本的な選挙スタイルは変えない。その中で鷲尾が聞いたのは、苦境にあえぐ農業従事者の声だった。だからこそ「もし再びバッジをつけることができたら、農政をやりたい。新潟の政治家として、是が非でも」と力をこめる。自身は民主党時代の第3次野田政権で農水副大臣の経験がある。
日本の農業と言えば、昨今は米価高騰問題ばかりがフォーカスされるがそれは一面で、もっと構造的な問題が横たわる。
「米価を落ち着かせることは確かに必要。ですが生産者が稼げなければ後継者不足はさらに深刻になる。もっとも大事なのは国民を『国産米離れ』させないこと」(鷲尾氏)と話す。
高市内閣誕生以降、自民党の支持率は確実に回復している。次の総選挙では対抗馬の動向が気になるところだが、自民党公認候補は一本化が確実。一方で参政党候補が4区で出馬することもあり、保守票がどういう動きをするか読めない部分もある。
かつて田中角栄が牙城を築いた地盤を含む新潟4区で、果たして保守の復権の節目となるか。全国的にも注目の選挙区となった。(文中一部敬称略)


