リネンサプライは厳しさの一途 南魚方面との新契約で「あんしんらんどりー」もキャパいっぱいに、NPO法人支援センターあんしん

らんどりー作業の様子 写真提供:NPO法人サポートセンターあんしん

「南魚沼市や湯沢町まで受注先が広がるとはまったく想定していなかった『あんしんらんどりー』事業ですが、今現在、南魚方面の観光施設十数軒と新規に契約を追加し、これまでと合わせて、ほぼキャパいっぱいのリネン作業を担っています」。そう話すのは、NPO法人支援センターあんしんの担当者。

障がい者を支援したいと発足した「NPO法人支援センターあんしん」では、障がい者を支えるために仕事を生み出し、トイレットペーパーの製造販売に加え、少しでも工賃を上げるために委託業務として、宿泊施設などのシーツやタオルといったリネン類を回収・洗濯する「らんどりー(リネン)」作業や、「ひまわり福祉給食」など、農福連携を含めた多種多様な仕事に取り組んでいる。

「らんどりー」業務の始まりは19年前。当時、偶然閉鎖するリネン施設があり、様々な機器類などを安価で引継ぐことができたことがきっかけだった。これまで、十日町・津南・栄村地域から中間委託や直契約を受注してきた。

南魚方面の新規契約を受けるようになったのは、南魚沼市のリネンサプライ大手業者が人手不足などに苦しみ、仕事を効率化して地元旅館などのリネン契約を昨冬シーズン限りで終了すると示したことがきっかけだった。その状況を受けて昨年末から問い合わせ電話が来るようになったという。

「和風いん越路」の河﨑千夏さん

最初の電話は、塩沢の舞子スノーリゾート前で雪国A級グルメ認定の宿を営んでいる「和風いん越路」の河﨑千夏さんだった。河﨑さんによると、ほかにも突然の契約中止に困っている旅館やペンションが多かったという。南魚方面が多忙となる冬場だが、NPO法人支援センターあんしん「らんどりー」には比較的余裕があり受け入れをスタートした。

河﨑さんは語る。「私は真っ先に動きました。祖父母の代から何十年も、しかも使ってくれとお願いされて始まった地元大手リネンサプライから、たった紙1枚の文書で契約を切られるとは思いもよらず、他にも思うところがあり閉口していたので、こっちらから願い下げと、すぐ他のリネンに変えようと軽く考えていました」。

しかし、思いつくクリーニング店全てに当たったがすべてけんもほろろの対応。「『人手がなく、リネンを持ち込んだり取りに来てもらってもできない』と言われ、一度断られた会社に再度『どうしても駄目ですか』と電話して粘り、可哀想と思ったのか、十日町市で『あんしんらんどりー』を行っている久保田さんを紹介してもらいました。藁にもすがる思いでさっそく電話をさせて頂いた次第です」と当時の状況を話す。

河﨑さんは「全て門前払いが続く中、最終的に受け入れて下さり、本当に助かりました。私たちはリネンが無ければ営業できず、受けてもらえて本当にありがたかったです。私どもの仕事は様々な方々に支えられ成り立っています。それだけに皆が良い形、共にハッピーになるようにしたいと思っています。効率よく配送ができるように、と同じくリネンで困っている方を紹介したり、少しでもリネンの仕事が増えるようにと、夏合宿の子どもたちにバスタオルを提供するサービスも始め、逆に『あんしん』を紹介した旅館さんや先生方から本当に喜ばれています。『あんしん』さんは一生懸命さが伝わってきて、変わって良かったです」と目を細める。

最初は数軒のスタートだった南魚方面。しばらくすると次々と契約が増え、南魚専用の配送用中古3トントラック(4WD)購入や機械設備追加などを進め、今では十数軒と契約を締結。あんしんの担当者は「キャパの関係で、遅れて要請をいただいた何軒かはお断りせざるを得なく申し訳なかった」と話す。まだリネン先が見つからない施設もある。リネン先が見つからないと、営業できない時代に突入したのかもしれない。

らんどりー作業の様子 写真提供:NPO法人サポートセンターあんしん

リネン業者を取巻く環境は年々厳しさを増している。普通に洗える衣服などが増え、クリーニングを利用する人は大幅に減少したが、電気代や燃料費、人件費や設備の老朽化、配送経費の上昇などが重なっても簡単に値上げはできないのが現状。また、「安さ重視」の観光宿泊業の方も多い。さらにリネン事業を始めるには、大型のロール型乾燥機や大型洗濯機など大きな投資が必要で、需要が高まったからといって新規開業や規模拡大することは簡単ではない。

「幸い私どもは、最初の機器類を安価に譲り受け事業を始められ、障がい者支援の立場からきちんと指導すれば、きちんと仕事を覚えてくれる人材にも恵まれています」と同担当者。旧撚糸工場を改装した現在地に移転して6年目。大地の芸術祭をはじめ、近年の観光復活と今回の新規契約に伴い手狭な状態となり、「繁忙期も年中続くような、かなり大変な状態となってきている」という。

同担当者は力を込める。「今はこの状況に耐えながら、利用者さんの工賃アップを図り、力を蓄えていく時だと思っています。これ以上契約は増やさず、より良い仕上がりを目指して頑張っていきたいと思っています」。

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