【SDGsと地域循環】新潟県妙高市「とうふ工房矢代」が最新機器導入で地元企業・農家・畜産業者と連携、おからを飼料にアップサイクル

とうふ工房矢代が最新機器導入で地元企業・農家・畜産業者と連携(画像提供:とうふ工房矢代)

有限会社とうふ工房矢代(新潟県妙高市)はこのほど、豆腐業界として初めてスチームコンベクションオーブン、ブラストチラー、真空包装機の3つの調理機器を組み合わせた製造体制を整え、豆乳・おからを使用した本格スイーツなど新たな商品、サービスの取り扱いを開始した。人手不足の打開が期待される最新機器を活用するほか、自社製造のおからを地元畜産業者に納品する循環型の取り組みも進めている。

ドイツ製RATIONAL(ラショナル)社のスチームコンベクションオーブン (左)

同社は2012年にブラストチラーを導入し、HACCPに基づく衛生管理体制を構築してきた。その後、世界シェア50%を誇るドイツ製RATIONAL(ラショナル)社のスチームコンベクションオーブンと真空包装機を新たに導入。豆腐業界でこれら3つの機器を組み合わせた製造体制は全国初とみられる。

代表取締役の沼倉健氏は「地元の食材とコラボレーションし、農家の捨てるところをなくしたかった」と最新機器導入の背景を語る。妙高地域へのインバウンド増加も見据え、世界基準の設備を整えた。

新商品の中心は、自社独自製法により小規模事業者として初めて成功した乾燥おから。創業23年目で、自社製造品としては初の常温商品となる。乾燥おからプレーン(20グラム、税別200円)と乾燥おからキャラメリゼ(20グラム、税別300円)の2種類を販売する。ヨーグルトの上に乗せて植物性タンパク質を摂取する使い方が好評という。

乾燥おからの利活用によるスイーツ

冷凍スイーツとして販売している「とうふ入り焼きごま団子」(左)と「豆乳カタラーナ」(右)

冷凍スイーツとして、とうふ入り焼きごま団子(4個入り、税別650円)と豆乳カタラーナ(1個100グラム、税別500円)も販売開始した。焼きごま団子は、自社の豆腐、君の井酒造(新潟県妙高市)の酒米の米粉、大杉屋惣兵衛(新潟県上越市)のこしあんを使用し、揚げずに焼成することでカロリーを抑えた。豆乳カタラーナは自社の豆乳と日本海ファーム(新潟県上越市)の卵で作り、今後は地元産いちごなどを使用した商品も展開する予定だ。

また、買い物に困っている人や自社商品の購入者を対象に、オードブルの販売も始めた。長時間低温焼成したローストビーフや自社商品を使用した総菜など、すべて自社で手作りし、人数や予算に合わせて対応する。

オードブルには長時間低温焼成したローストビーフや自社商品を使用した総菜などが盛り付けられる

同社の特徴的な取り組みとして、SDGsを意識したおからの循環型利活用がある。独自製法で乾燥させたおからの約90%を、地元のJAえちご上越の紹介で荻谷畜産株式会社(新潟県上越市)に納品。荻谷畜産は頸城牛などのブランド牛を生産しており、乾燥おからは飼料として活用される。一方で、同社のオードブルやその他催事で使用する牛肉は全て荻谷畜産から購入しており、おからのアップサイクルを通じて飼料高騰に悩む畜産業者と相互に支え合う関係を築いている。

地元農家の規格外野菜の活用にも取り組んでおり、出荷できないナスや枝豆を使った商品をイベントで販売するなど、食品ロス削減にも貢献している。沼倉氏は「地方だからこそ良い素材が近くにある。地元の食材とコラボレーションできることを示したい」と話し、地域と連携した循環型の事業モデルの構築を目指している。

 

【関連リンク】
とうふ工房矢代 公式Instagram

こんな記事も