【梅川リポート22】地域密着型で独自路線を貫く「車の総合医」、自動車販売・整備のファミリーオートが創業40周年

「ファミリーオート」の店舗外観(新潟県上越市)
新潟県上越地域で自動車販売や車検整備、レンタカー事業を手がける株式会社ファミリーオート(新潟県上越市)は今年創業40周年を迎えた。創業以来、同社の佐藤俊和代表取締役が「地域の車の総合医」として事業を展開し、長年にわたり地元ユーザーの支持を集めてきた。同社は新車・中古車販売、車検整備、レンタカー・リース、損害保険代理店業務まで一貫して手がけ、上越地域の暮らしを支えるトータルサービスを提供している。
佐藤代表は創業以来の歩みを振り返りながら、「この10年ほど当地では全国大手の中古車販売店が次々と参入し、競争が激しくなってきた。しかし、同業他社を意識するのではなく、あくまでも自社カラーを守りながら運営していきたい」と話す。
新車は買う時代からリースの時代へ
新車を利用期間だけ便利に安く乗りたい…そんなアメリカナイズされた時代がきた。新車リースが会社関係が主流の中、個人リースが注目されるようになり、当社はいち早く令和1年に「新車が月々1万円から乗れるフラット7」の全国チェーンに加盟し多くの顧客にカーライフが楽しんでいるとのこと。経済景況が見出せない中、車に掛るコストをできるだけ抑えた便利な乗り方は今のニーズにピッタリとも言える。「今までの中古車ユーザーも気軽に新車に乗れるようになり好評をいただいている」とは佐藤代表の言葉。
「ロープライス専門店」の原点
「車をスニーカー感覚で安く乗りたい」。上越教育大学前の別店舗では、創業期から“買いやすさ” にこだわった中古車の品揃えも特徴的だ。特に50万円前後の軽自動車を中心とした「リーズナブルな中古車販売」は地域に定着している。かって「50万円以下専門店」という屋号で展開していた時期もあり、現在も30万~60万円前後の車を並べ、来店者の多くは“安くて良い車”を求めて来店するという。
この取り組みの背景には、佐藤代表の独自の目利きがある。中古車市場に出る車は年式が古く走行距離が伸びているものも多いが、「古くても状態が良く、ちゃんと整備すれば商品になる車」を全国から仕入れている。「価値があると判断すれば何処からでも仕入れる」と語り、整備士上がりの佐藤代表の経験を生かしたプロの鑑識眼が価格と品質のバランスに活かされている。仕入れた車は整備をし、徹底的に磨き上げ、きれいな状態で店頭に並べる。佐藤代表は「安いから汚いでは価値を感じてもらえない。予想を超える状態で届けることが重要で、お客様に“これでこの価格なのが”と驚いてもらえるようにしている」と話す。
実際、エリア外からの来店者も多く、「見に来ただけのつもりが、その場で購入を決めるケースもある」という。「明日はもう売れてしまうかもしれない」という心理が働くほど、安価帯市場での競争力が高い。
レンタカー・リースの需要増
最近ではレンタカー&リース事業が大きな柱になりつつある。四季の利用ニーズに合わせた車の使い分けや、短期だけ車が必要な事業者のニーズが増えており、50台ほどの車両を常時回転させている。特に1日 500円の「ワンコインリース」は人気で、「1カ月1万5,000円程度で利用できるため、維持費を考えると所有するより合理的」と利用者の評価も高い。地域の実情に合わせた“必要なときに必要なだけ使える” サービスとして定着している。
「車の総合医」としての自負

ファミリーオートの佐藤俊和代表取締役

「ファミリーオート」には整備工場も併設
車は使えば消耗していく。佐藤代表の原点は自動車整備士としての経験だ。「車は人と同じ生き物である。自分は車のドクターであり、健康管理を怠ると車も重病になる」とユーザーに伝えて行きたいという。
「壊れているのは車だが、メンタルが不安定になっているのはお客様の方だ。両方をケアするのが整備士(医者)の役目だ」と語る。整備後に、お客様が心から安心して帰れるかどうかを常に重視し、社員にも「喜んで帰っていただいたか」を確認する文化を徹底している。「儲かったかどうかではなく、お客様が満足して帰ったかが重要だ」と話し、地域密着の整備工場としての信頼を積み重ねてきた。
課題は人材確保と業務効率化
一方で課題も多い。特に整備士不足は深刻で、全国的に自動車産業の基盤を揺るがす問題となっている。佐藤代表は「自動車大国の日本で、車の安全と環境を守る整備士が減っている。特に町工場の整備士不足は国レベルの課題だ」と指摘する。同社も求人を出しているが、整備士資格を持つ若者の応募は少ない。
そして効率化の柱となるのがAI と DXの導入だ。仕入れ車両の情報管理や社内業務の効率化など、デジタル化に力を入れつつある。国や自治体が進める DX 支援策にも意識を向けながら、「中小企業が生き残るための手段として AI活用も不可欠」と佐藤代表は話す。
2025 年度の決算は好調、社内検証を進める
2025年度9月期の決算は例年より改善した。詳細な戦路は企業秘密として明かされなかったが、複合的な要因が奏功したという。現在要因分析を進めており、「うまくいった点を再現可能にするため、内部構築を進めている」と語る。
佐藤代表は「この地域の車社会を支える役割を果たしていきたい」と話す。新車・中古車販売、整備、レンタカーの三本柱を軸にしながら、AI・DXによる効率化、人材育成、内部体制の強化を進め、次の10年に向けた基盤づくりを急ぐ。創業40周年は、地域の車の暮らしを支える同社にとって新たなスタートとなる。

「ファミリーオート」の店内
【記者メモ】
実は筆者も昨年こちらで愛車を購入したが、「ファミリーオート」はサービスが充実しており、例えば、外国車やスポーツカーが乗られるレンタカーサービス券や年1回のお客様感謝デーの500円ワンコイン朝市など、顧客満足度を上げる施策が次々と打たれている。特に500円朝市は、大きな袋に野菜や果物、カップラーメン、レトルトカレーなどが詰め放題で、さながらフードバンクのようだった。顧客満足度のあくなき追求は、会長職も歴任した佐藤代表の倫理法人会の長年の活動が関連しているように思う。AIの導入にも積極的であり、今後も「街の車屋さん」として注目していきたい。
(文・撮影 梅川康輝)