【独自】祈りの空間、街の記憶、カトリック長岡教会が歩んだ歴史と伝世品(新潟県長岡市) 

今宵は聖夜、クリスマス・イヴ。

街に灯るイルミネーションの向こうに、もうひとつの静かなクリスマスの風景を求め、新潟県長岡市表町にあるカトリック長岡教会を訪れた。

地域のキリスト教信仰を支え続ける長岡カトリック教会

そもそも、長岡地域におけるカトリック教会の歴史は古い。第一次世界大戦後の1914年、現在のフェニックス大手ウエスト付近(長岡市大手通2)に借家の仮教会が設けられたのが始まりとされる。その後、市内を転々としながら活動を続け、1915年には高田カトリック教会から独立する形で、地域の祈りの場として発展した。関東大震災が発生した1923年12月には、長岡で初めての教会結婚式が執り行われたと伝わる。続く1929年には福住教会および聖母幼稚園が開設され、1963年には、現在の聖堂がある表町教会が献堂された。そして、2014年に福住教会と表町教会が合併し、現在のカトリック長岡教会となった。現聖堂は2020年に改築された。

この日、記者を迎えたのは、新潟教区のラウール・バラデス主任司祭。1965年生まれ、メキシコ出身のラウール主任司祭は母国で一般企業に就職後、1990年、神学校に通うために25歳で来日した。聖職者としての修行期間を経て、新潟・山形・秋田の各県を管轄する新潟教区に所属。1998年7月に一度長岡へ着任。その後、新潟県新潟市の寺尾教会、新潟教会、青山教会などを歴任し、2024年4月から再び長岡教会に赴任している。カトリックでは司祭としての活動のことを「司牧」と呼ぶが、ラウール主任司祭は日本での司牧歴がすでに母国での生活年数を上回ったという。

笑顔が素敵なラウール・バラデス主任司祭。地域の信徒に愛されていることがよくわかる

普段、信徒でなければ、なかなか足を運ぶ機会の少ない教会だが、この日はラウール主任司祭の案内で、同教会に伝わるいくつかのゆかりの品々を見学した。

まず目を引くのがステンドグラスだ。もともと表町教会にあったもので、詳しい来歴は不明だが、1963年頃に他の教会から移された可能性が高いという。2020年の改築に伴い、現在の位置に設置された。自然光を受けて浮かび上がる色彩は、朝、昼、夕と時間帯によって表情を変え、静かに祈りの空間を彩っている。

伝世の詳細が明らかではないステンドグラス。かつては立派な教会の壁面に設置されていたものなのだろう。格調高い

礼拝堂に掲げられた絵画の題は、「悲しみの聖母」、18世紀頃のイタリア・バロック期に描かれたものとされ、現地から直接運ばれてきた貴重な絵画だという。

聖母の表情がとても美しく描かれている。間違いなく一級の文化財だ

祭壇とその両脇の木像は、かつての福住教会から移されたもの。信徒でもあった彫刻家・田中氏による制作で、素朴ながらも温もりのある表情が印象的だ。

地元の信徒による作品。地域との深い信頼と結びつきが感じられる

クリスマス・イヴの夜は、恋人や家族と過ごす人もいれば、サンタクロースの訪れを待つ子どももいるだろう。そんな一方で、近所の教会を訪れ、その歴史や文化財に静かに思いを巡らせる一夜を過ごしてみるのも、またこの季節ならではの過ごし方かもしれない。

様々な来歴の文化財に囲まれたキリスト像。こちらの来歴も気になるところだ

カトリック長岡教会

住所:新潟県長岡市表町4-1-5

電話:0258-32-0932

FAX:0258-36-1411

交通:長岡駅大手ロ(JR信越本線・上越線・上越新幹線)より徒歩10分

ミサ時間:
日曜日 9:30、18:00
第四日曜日 14:00 英語ミサ
火~土曜日 7:00。第一金曜日 10:00、聖体顕示とミサ

(文・写真 湯本泰隆)

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