【最終回】税制改正大綱= 税金のルール改正予告 〜勝島一真(税理士・行政書士)〜

ビジネスカツシマの勝島一真です。私たちビジネスカツシマグループでは、開業支援業務、税理士業務、経営・財務会計コンサルティング業務、行政書士業務、事業承継・M&A業務、それぞれの分野を特化させて専門性を磨き経営のお役にたてるビジネストータルサポートを目指しております。
最終回となる第12回目のテーマは、「税制改正大綱(ぜいせいかいせいたいこう)」についてです。先日、2026年の税制改正大綱が決定されました。
税制改正大綱は毎年12月中旬頃公表されます。税制改正大綱とはわかりやすくいうと、増税だったり減税であったりと、翌年度以降についてはこのような税制にしていきますという方針が示されているものとなります。
毎年12月に税制改正大綱が公表され、
翌1月に政府が税制改正法案を作成し通常国会に提出
2月から3月にかけて衆議院参議院の両院で法案の審議
3月はじめ頃に衆議院本会議で法案可決通過させ
3月末頃参議院本会議で可決され、法案が成立するという流れになっています。
政権の方向性をよむうえで税制改正大綱はひじょうに重要なものとなります。
税制改正大綱はホームページ等で公開されていますが、とても内容は細かくページ数も膨大であります。
今回その中でも身近に感じる改正内容をなるべくわかりやすく説明したいと思います。簡潔さがゆえ言葉たらず説明たらずとなってしまいますことをご了承ください。
【個人に関すること】
〇年収の壁ひきあげ(2026年からの見込み)
178万円の壁:所得税がかからない給与収入が178万円へひきあげられる。
また給与収入が132万円までは扶養の範囲に入ることができる
※130万円の社会保険の壁は現在検討中でありまだかわりません。
〇ビットコインなど暗号資産にかかる税金の計算や申告方法がかわる(予定)
通常の株式と同じ税金の計算方法になる
〇NISAの対象を18歳未満に拡大(2027年1月から)
いままでは18歳以上(成人のみ)とされていた要件が撤廃され、0歳から利用できる新たな仕組みが導入される
【会社や事業に関すること】
〇少額減価償却資産の特例(2026年4月以降からの見込み)
中小企業者が固定資産を購入した年にまとめて経費にできる金額の上限が30万円から40万円に引き上げられる。たとえば36万円でノートパソコンを購入した場合、現在はその年の経費としてすべての金額(36万円)を経費計上することはできず、1年で経費にできる金額は9万円でした。(ノートパソコンの耐用年数4年)今回の改正により1年で36万円全額が経費計上することができます。
〇青色申告特別控除額が要件次第では65万円から75万円になる(2027年以降)
75万円の控除をうけるには、e-Taxでの申告と「優良な電子帳簿」の備付けと保存が必要となります。最近の会計ソフトで計算し電子(e-Tax)で申告することで要件は満たされると思われます。
一方、電子申告(e-Tax)ではなく申告書を紙で提出する場合、いままでは55万円の控除をうけることができましたが、今後は10万円の控除しかうけることができなくなります。
〇賃上げ促進税制の見直し
賃上促進税制は、給料を前年よりも全体的にアップさせ一定の要件を満たした場合、その一部を法人税(個人は所得税)から控除できる制度でしたが、会社規模に応じて対応がかわります。
・大企業:2026年3月31日をもって廃止
・中堅企業:要件を厳格化し継続
・中小零細企業:現状の制度を維持
〇事業承継税制をうけるための特例承継計画の提出期限延長
事業承継税制を活用するためには令和8年3月までに特例承継計画が提出されていることが必要であり、期限がせまっていることで焦りを感じていた方もいると思います。この提出期限が令和8年3月から令和9年9月末までに(個人については令和10年9月末)まで延長されることになりました。
首相の交代や自民と維新という組み合わせによる税制改正大綱ということもあり、いままでのカラーと少しちがう税制改正大綱になったという感じがします。
今まで手をつけてこなかったところに手をつけたり、延長されてきたものが廃止されたりとメリハリがとてもきいているイメージがあります。
税金の話はややこしく、ときに距離を感じやすいものでありますが、実際には私たちの仕事や暮らしのすぐそばにあります。だからこそ正しく知り、上手につきあうことが大切であると感じています。
12回にわたりコラムを掲載させていただきました。原稿内容の整理は、頭の中の整理、また新たな発見にもつながりました。
このような良い機会を与えていただきましたことを感謝申し上げます。
