【記者ノート】メタンハイドレート講演会・講師は東京海洋大学特任准教授の青山千春氏(水産学博士)『上越沖の表層型メタンハイドレート、地産地消の観点からまずは地元で実用化を目指そう』

上越科学館にも展示されているメタンハイドレートのコーナー

 

県新エネルギー資源開発室が盛上げPRを

上越沖などの県内の海で日本初の本格的な自前資源、表層型メタンハイドレートが発見され、2013年から政府による研究開発が進められており、その研究開発に関わって来た東京海洋大学青山千春特任准教授(水産学博士)が12月25日、『いよいよメダハイの時代へ 地元でやろう』とのタイトルでメタンハイドレート講演会を行った。この講演会は「県新エネルギー資源開発室」が県民らにメタンハイドレートを一層理解して貰おうと開いているもので、25日上越文化会館中ホールで開催され、約80人の市民らが駆付けた。併せて同じく企業としてメタンハイドレートに関わる太陽工業株式会社の川岸靖部長も『メタンハイドレートにおける膜構造の利活用』とのテーマで講演した。

 

10数年の研究開発(実験)経て2030年民間主導の商業化に向けたプロジェクト始動目標に

青山准教授は動画も含めたスライドを通し「2013~2015年に資源量把握調査を実施(200×250㍍マウンドで約6億㎥)、ドーム状態膜構造物によるメタンハイドレートの回収方法の提案及び実験(魚群探知機や無人潜水機)、メタンプルーム湧出の収録、湧出量調査などを進めて来た」と説明、その過程で多くの大学はじめ数多くの民間企業(地元ではウエタックスの水中スピーカーなど)との共同実験、漁業者との連携・共存を重ねて来た。その上で「上越沖40㌔程先の海底900~1000㍍には豊富なメタンプルームを確認しており、これからも資源エネルギー庁の産業技術総合研究所プロジェクトなどの大きな支援のもと、2030年民間が主導する商業化に向けたプロジェクトの始動を目標に、政府と共に生産技術・共通基盤技術開発を進めていきたい」と強く意気込みを見せた。

 

まずは地元で使える地産地消のエネルギーとして優先的に使用、地元の雇用促進へ

さらに青山准教授は「エネルギー安全保障の面からも、自前資源の重要性が高まっており、メタンハイドレートの生産技術を確立することがとても大事な観点だ。地元の理解とやる気によって、地産地消のエネルギーが生まれ、しかも地元の企業や機関と連携して開発・生産することは中央とも繋がることになり、ひいては地元の雇用促進と地域の活性化に繋がっていく」と訴えるとともに、「実用化に向けて時間はまだ掛かるほか、メタンプレームの回収方法にも大きなコストが予想されるが、太陽工業の膜構造物の進展によって、メタンプレームをホースなどで採れるようにし、まずは一日も早く地元で使えるようにすることが私達の目標だ」とも強調した。

 

来年1月28~30日東京ビッグサイトでエネルギーイノベーション総合展(講演・式典・セミナー)

現在のところ、上越沖の40㌔程の海底900~1000㍍での海域(海鷹海脚と呼ぶ=東京海洋大学の海洋調査船から名付けた)でのメタンハイドレートを探索しているが、その海底のメタンプレームを船上まで運ぶ過程の中で、安定領域曲線を越えるとメタンプレームはガスと水に分かれることで回収し易くなるという。講演会での聴衆者からの質問に応えるかたちで青山准教授は「メタンハイドレートも化石燃料であるが、化石燃料には生物起源と熱分解起源が考えられるが、メタンハイドレートを分析してみると生物起源の方が多く混じっている」などと語っていた。なお、来年1月28~30日には東京ビッグサイト南1、2、4ホール&会議棟を会場に、エネルギーイノベーション総合展が開催予定。

 

竜 哲樹(にいがた経済新聞顧問)
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。にいがた経済新聞社顧問。

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