【キャプテンスタッグ生誕50周年】日本版アウトドア文化をリードし続けた「鹿番長」の偉大な足跡
「日本式BBQ」を生んだ純日本製コンロ第一号
パール金属株式会社(三条市)のアウトドア部門としてスタートしたブランド「キャプテンスタッグ」が2026年にブランド生誕50周年を迎える。圧倒的アイテム数と求めやすい価格に比した高性能、デザイン性、商品開発力で、国内アウトドアグッズ業界では大きな存在感を築き上げたキャプテンスタッグ。今やネットのアウトドア掲示板では「鹿番長」という愛称で親しまれている。
新潟で生まれたキャプテンスタッグが日本にアウトドアレジャーを定着させた、という説は、以下の事実により十分に説得力がある。
国内のアウトドアレジャー草創期は「どこに設定するのか」にも依るのだが、団塊世代を中心に1960~1970年にかけての登山ブームが一つの起点となったのは確かだ。それはまだ限られた人達のものであり、休日に家族連れが気軽に楽しむような「アウトドア=外遊び」の概念で語られるようになったのは「BBQ(バーベキュー)」の定着を待たれる。
そして「日本にBBQを持ち込んだのがキャプテンスタッグである」というのは、一側面において間違いではない。1976年にパール金属が売り出した「ジャンボ バーベキューコンロA型」これが国産バーベキューコンロの第一号と言われる。キャプテンスタッグブランドの前身、パール金属のアウトドア事業部はこの商品開発をきっかけに生まれたのだ。

パール金属が1976年に製造販売した国産第一号バーベキューコンロ「ジャンボ バーベキューコンロA型」。トランク型になっており、持ち運びに便利な構造になっている
この時代、米国の商業文化が数多く日本に流入した。GMSやホームセンターなどがまさにそれで、日本企業の多くが欧米や北米に視察旅行を繰り返した。三条の金属加工品を日本中で販売したいという想いから創設されたパール金属の高波文雄社長が米国への市場調査に赴いたのが1975年。その際に通り掛けの公園で目にしたのが、丸型のグリルで大きな肉を焼いて家族で楽しむBBQの姿だった。「これは日本でも広まるのではないか」ここから国産第一号のバーベキューコンロが生み出された。アウトドアレジャーが一般の日本人に定着する、その夜明けだと言っても過言ではない。

パール金属代表取締役社長兼、キャプテンスタッグ株式会社代表取締役の髙波文雄氏(2021年のにいがた経済新聞記事より)
日本のアウトドアシーンに確かな足跡
ブランドの起点を「ジャンボ バーベキューコンロA型」とするキャプテンスタッグだが、実はこれ以外にも日本のアウトドアレジャーシーンにおいて節目節目に印象深いヒット商品を残している。そしてそれらのヒット商品は、その時々でブランドにも転機をもたらしている。
例えば1994年に発売された「ラニー メッシュタープ」。これはテントよりもコンパクトに収納が可能で手軽に持ち運びできるタープに、日本古来の「蚊帳」の概念を取り入れた画期的な屋外居住空間。天面にしか生地を持たなかった従来のタープに一石を投じた。側面のすべてにメッシュを配し、虫よけ効果を持たせたもの。一時期、世のキャンプ場では、このメッシュタープであふれかえっていた。

タープの手軽さに日本の「蚊帳」の概念を取り入れた爆発的ヒット商品「ラニー メッシュタープ」
このメッシュタープは「メーカー側からの提案」ではなく、より快適なアウトドアレジャーを求めたユーザーからの声から生まれた商品。それまでのプロダクトアウトだけでなく積極的に売り場や消費者の声を吸い上げて具現化するマーケットインの姿勢から生まれた製品であり、これは現在の経営方針にも大きく反映されている。
1997年に製造販売され、後にミリオンセラーとなった「オーリック シングルバーナー」は、一緒に開発されたOD缶ガスボンベも画期的なものだった。それまでコールマンなどから発売されていたシングルバーナーはホワイトガソリンを使用していたが、それに代わり、より軽量で素早い着火のガス缶、それも一般的なカセットボンベ(CB缶)ではなくキャンプ専用(ボンベにバーナーを直結できる)のOD缶を使用した製品を世に出したのが、キャプテンスタッグだった。これは、それまで同社が扱ってきた領域の外である「ガス器具」に当たる。したがって第三者機関のガス機器検査を通過しなければならないため、点火装置やその他の構造を作り上げるのに苦労したのだという。現在、多くのメーカーからOD缶仕様のガスバーナーが出ているが、構造はおおむねキャプテンスタッグが開発したものを踏襲したと言ってよいだろう。

業界初、OD缶直結のガスシングルバーナー「オーリック シングルバーナー」
もう一つ、ブランドの転機になった忘れてはならない製品がある。それは2001年に商品化された「アルミローテーブル コンパクト」だ。軽量かつコンパクト設計でトレッキングやツーリングなど多様なシーンで重宝されるため爆発的にヒットした小型ローテーブルだが、実に計算しつくされた構造で、その使い勝手を生み出した。キャプテンスタッグが誇るプロダクトデザインチームが知恵を出し合い、軽量化とコストダウン、さらに強度など基本性能を実現した、まさに「逸品」。これ以降、「製造コストを削りながら機能は高めていく」というキャプテンスタッグ製品のブランドポリシーが強調された感がある。

キャプテンスタッグの「凄み」が詰まっている製品「アルミローテーブル コンパクト」
強みは「産み出す力」
キャプテンスタッグの強みは、フォローする領域の異常な広さを実現している点にある。アイテム数に関してはアウトドアブランドの中では随一といって良いのではないか。一般的にアウトドア用品と称される製品だけでなく、自転車をはじめとするレジャー用品、カトラリー・調理器具など。現在も年間200アイテム平均で増えているという。
これは開発チームの能力だけが支えているのではなく、工業産地である燕三条を背景にしていることが大きい。また親会社であるパール金属が持つ販路やネットワークを最大限駆使できることも重要。多くのバイヤーや売り場責任者とネットワークを持つことで、そこからの声をプロダクト開発に活かせることが強みとなる。さらにパール金属が持つ物流拠点のポテンシャルが売り場から見ると絶大な信用を置けるのだ。どんどん作ってどんどん在庫できることは重要な意味を持つ。

キャプテンスタッグのショールームでは、ただただ扱いアイテムの多さに圧倒される
記者が最も感銘を受けたのは、プロダクト開発において「営業」面に重心が置かれている点である。もともと経営サイドに「営業がモノづくりをやるのが一番良い」という思想があるのが良い。営業は日々、顧客から「こういうものを作れないか」「こういう商品はこうだから売れない」「ここをこうすれば売れるだろう」という「解」を吸い上げている。
「ウチは『作る』『作らない』のゴーサインを出す決済スピードは速い方だと思います。もともと『売れる、売れないは市場に出さないと分からない』という考え方がある会社。なので『失敗しない』ことより『作り続ける』『産み出し続ける』ことが重要です」と高波洋介常務取締役は話す。メーカーとして、ベンダーとしてよほどの底力がなければ、こうした発想には至らない。
「『まだ足りない』と常に思う精神は大切にしたい。ユーザーの求めるものが増え続ける限りは、常識を更新していく必要があると思います。価格を含めた手の届きやすい商品を提供し続けていく、そのスタンスは次の50年も変わりません」(高波常務)
ブランド生誕50周年の2026年は、数多くのメモリアルグッズが発表される予定がある。「鹿番長ファン」は今後の動きから目が離せない。
