発光する魚たちの理由 ミライエ長岡で深海生物の生存戦略を学ぶ(新潟県長岡市)

日本海の深海に広がる未知の世界をテーマにしたサイエンスカフェ「深海を知りたいかい?」が1月10日、新潟県長岡市のミライエ長岡で開かれた。市民向け学習講座「まちキャンでまなぶ」の一環として企画されたもので、深海生物の不思議や海底調査の最前線に触れようと、長岡市民20人が参加した。

講師を務めたのは、マリンピア日本海展示課の新田誠学芸員。長年にわたり水族館で深海生物の調査・展示に携わってきた立場から、深海という過酷な環境の特徴や、そこに生きる生物たちの巧みな生存戦略について、わかりやすく解説した。

深海は太陽光がほとんど届かず、水温は低く、水圧は地上とは比べものにならないほど高い。そのような極限環境の中で生き抜くため、深海生物の多くは発光器官を持ち、仲間とのコミュニケーションや捕食、外敵から身を守るために光を利用しているという。会場では、実際の深海生物の標本が並べられ、参加者は間近で観察しながら、形や色、質感の違いに驚きの声を上げていた。

また、調査の現場でのエピソードも紹介された。新田学芸員は、ある魚が「水深10メートルほどにすむ魚」とされていたにもかかわらず、実際には水深200~300メートルで漁獲されていた例を挙げ、「漁師の証言から、実は深海性の魚だとわかったこともある」と説明。新種である可能性に気づかれないまま、日常的に水揚げされていたケースもあったという話に、参加者は驚いた様子だった。

また、深海魚を生きたまま水族館に運ぶための工夫についても詳しく解説があった。飼育員が調査船に同乗することで生存率が上がることや、活魚トラックを使って迅速に輸送する体制が整えられていることなど、舞台裏の努力が語られた。

深海魚の標本を興味深く観察する参加者

さらに、調査船によって撮影された深海の映像も上映された。暗闇の海底にふわりと現れる生物の姿や、静かに漂う様子は、まるで異世界をのぞき込んでいるかのようで、会場は静かな感嘆に包まれた。

長岡市内から娘2人と訪れた松見祐子さん(40代)は、「娘が“めんたこ”に興味を持っていて、そこから深海にも関心を持つようになった」と話す。知穂さん(11)と理子さん(7)の姉妹も講座を楽しんだ様子で、感想を尋ねると「楽しかった」と笑顔で答えた。深海という難しいテーマでありながら、子どもたちの好奇心を自然に引き出していたことが窺える。

「楽しかった」と話す松見祐子さん・知穂さん親子

その他、参加者からは「深海がこんなに身近だとは思わなかった」「図鑑で見るのとは全く違い、実物を見ると印象が変わる」といった感想が聞かれ、知的好奇心を刺激されるひとときとなった。暗黒の海に広がる未知の世界を学ぶこのサイエンスカフェは、日常の足元に広がる自然の奥深さを改めて感じさせてくれる催しとなった。

(文・写真 湯本泰隆)

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