【特集】一年で一人前を目指す! こだわりの寿司を届ける「佐渡弁慶」の仕事・育成の流儀
佐渡の海で獲れた新鮮な魚、昔ながらの製法で育てた佐渡産コシヒカリ。素材へのこだわりを貫きながら、回転寿司から江戸前寿司まで多彩な業態を展開する「佐渡弁慶」。各店舗では幅広い世代のスタッフが活気を生み出し、若手の活躍も目覚ましい。新潟から東京、京都へと事業領域を広げるこのグループで今、未経験から一人前の職人を目指す若者たちが成長を遂げているという。
修業期間が長く、一人前になるには数年かかるといわれる寿司業界。新人教育の常識を変える「佐渡弁慶」ならではの仕事・育成の流儀について、同社の小崎和彦代表取締役社長や実際に働くスタッフに尋ねた。
素材の美味しさを追求した、新潟・佐渡発の寿司店グループ

佐渡発祥の弁慶グループ。新潟県内外にさまざまなコンセプトを持つ15店舗を構える
現在、「佐渡弁慶」は県内外で複数の店舗を展開。回転寿司、立ち食い寿司、居酒屋業態など店舗ごとにコンセプトが異なることも、同社の特徴であり、こだわりだ。
また、寿司に関して「佐渡弁慶」の特色は、全店舗で使用する米へのこだわりにある。「一番肝心要なのは米です。全店舗、昔ながらのコシヒカリを使っていることがうちの特徴です」と小崎社長。
一般的に主流とされているコシヒカリBLではなく、契約農家で栽培した「昔ながらのコシヒカリ」を使用し、東京でも京都でも、佐渡産の米で握った寿司を提供する。

米にこだわる弁慶グループは全店で「佐渡産コシヒカリ」を使用する
もともとは佐渡島内の回転寿司から始まった佐渡弁慶だが、お客様の声を聞き、出店依頼に応える中で、多様な業態が誕生していった。
「寿司から広がる食の極み、驚きと感動を届けるというビジョンのもと、回転寿司から高級寿司まで、各々のシチュエーションに合った商品の提供で、オリジナリティを追求しています。寿司の技術を活かして、和食に関しても深掘りができると考えています」と小崎社長は営業展開を語る。

米にこだわる弁慶グループは全店で「佐渡産コシヒカリ」を使用する
技術とホスピタリティは現場でとことん磨く

佐渡 廻転寿司 弁慶 ピア万代店(新潟市中央区)
現在は県内外に店舗を持つ同店だが、佐渡から新潟市への初出店は「ピア万代店」がスタートだった。同店の平日は年配層を中心に、朱鷺メッセでアーティストのライブなどがある日には若い女性客も多く訪れる。国内外の観光客、地元の常連客など客層は実に多様で、リピーターが多いのも特徴だ。
「今度家族を連れてくる」「毎年来る」という声も聞かれ、家族連れから接待まで、幅広い客層に支持されている。

取材当日、店舗の前でオープン時間を待つ利用客の姿が複数人見られた。佐渡 廻転寿司 弁慶ピア万代店(新潟市中央区)

ピア万代店で寿司職人として勤務する中島隼人さん、開店前に仕込みをする様子
同店で寿司職人として働くのが、入社3年目の中島隼人さんだ。元々寿司が好きだったという中島さんはアルバイトで半年間経験を積み、働きぶりが評価されて社員に採用された。
「先輩職人が手取り足取り教えてくれました。切った一つ一つを確認してくれて、失敗してもいいからと挑戦することを大切にしてくれます。丁寧な指導がありがたいです」(中島さん)。
朝は魚の仕込みでアジの三枚おろしやネタ切り、開店中は寿司を握り、夕方は翌日分の仕込みを行う。何人もの職人たちが厨房で忙しなく仕込みを行い、ひっきりなしに訪れる客のために、スタッフが一丸となる。
「魚をきれいにおろせた時の達成感があります。佐渡産の寒ブリや村上牛の炙りなど、他店にない素材を扱えることもやりがいです」とにこやかに語る。

「本日のおすすめは?」と聞くと、笑顔で自信満々に説明してくれる中嶋さんは、お客とちょうどいい距離感でコミュニケーションをとることを心がけている。リーズナブルな値段と寿司の美味しさに驚く様子を目の当たりにする瞬間が嬉しいと話す。
同じく「ピア万代店」でホールスタッフとして働くのが、下林美咲さんだ。下林さんは佐渡出身で、小さい頃から弁慶の寿司を食べて育ったそうだ。
「昔から馴染みがあるお店でした。やはり弁慶が一番おいしいという思いから、ここで働いてみたいと思いました」と入社のきっかけを語ってくれた。

ホールスタッフの下林美咲さん
ホールスタッフの仕事は、開店前は持ち帰り注文の確認、ネタの確認、味噌汁の準備。開店中はご案内、オーダー取り、提供、会計と多岐に渡る。下林さんが大切にしているのは、余計な気を使わせないサービスだ。

オープン前にお味噌汁の準備をするのもホールスタッフの役割だ
「お茶をこぼしたお客様に、言われる前におしぼりを持って行く、赤ちゃん連れのお客様にはお座敷をご案内するなど、お客様の様子を見ながら素早い判断や対応を心がけています。飲食業は初めてだったのですが、未経験でもお店の皆で教えてくれます。ホール、職人、裏方関係なく店全体で仲が良いことが、働きやすさにつながっています」(下林さん)。

「鮨 弁慶 海」の大将、近津代志(こんつよし)さん
一方、新潟市古町の「鮨 弁慶 海」で働く近津代志(こんつよし)さんは「ピアBandai店、イオン新潟青山店」で店長を経験した後、3年前に自身の希望で「鮨 弁慶 海」へ異動。
「鮨 弁慶 海」は、弁慶グループで唯一の江戸前ベースの寿司店で、マグロにエシャレットとからしを使う握り、玉ねぎ醤油にニンニクを加えた漬けマグロなど、同店の山崎大将が開発した独自の技法を提供している。
「回転寿司しか知らなかった入社当初は、先輩たちのレベルの高さに驚きました。自分もそんなふうになりたいと、基礎的な仕事を全部一からやり直してみたのですが、そうすることで仕事全体の流れや仕組みが全て繋がり、いろいろなことができるようになりました」(近さん)。

「今日、いいマグロが入ったんです」と話し、丁寧な包丁さばきで寿司を握る近さん
「海」では魚の原価制限もあまりなく、使いたいものを使える環境が整う。寿司に集中できる環境で技術を追求できることが、近さんにとっての大きなやりがいにつながっている。
「お客様が驚いてくれる瞬間がやりがいです。知らなかったことを知って帰ることで、今後の人生が少しでも楽しく感じていただければと思っています」と近さん。カウンター越しのコミュニケーションでお客様の人生が垣間見え、会話を通じて自分も学べることが多いという。
多店舗展開だからこそ実現する成長環境
「佐渡弁慶」では「飯炊き3年、握り8年」という従来の寿司職人の修行ではなく、顧客のために一日でも早く一人前になれるよう、実践的な教育を行う。職人は入社初日から包丁を持ち、実践を通して技術を習得。特に回転寿司では魚をさばく量も多いため、普通の寿司店より早く技術が身に付くというわけだ。

佐渡 廻転寿司 弁慶 万代シテイ店
回転寿司、江戸前寿司、立ち食い寿司、居酒屋業態など、それぞれの店舗でお客様の層や接客スタイルが異なるため、多店舗展開の強みは店ごとで多様な経験を積めることにある。本人の希望により業態変更や県外への異動も可能で、近さんのように複数の店舗を経験した後、江戸前寿司の技術を追求するというキャリアパスも実現できる。社長や常務、専務などトップが若手育成に積極的に関わる体制も整っている。

「技術は後からでも十分伸ばせる」と話す小崎社長。従業員一人一人を家族のように大切にする姿勢は創業時から変わらない。
佐渡弁慶が求めるのは、技術よりも人柄と学ぶ姿勢だ。技術は後からでも十分伸ばせるというのが、小崎社長の育成における真髄だ。
「大切なのは、寿司を通してお客様に喜んでもらいたい、世の中に貢献したいという気持ちです。お客様が『おいしい』『こんなお寿司食べたことがない』といった言葉が一番の糧です。目の前にエンドユーザーがいて、直接反応が見られるのが寿司職人の醍醐味でしょう。お客様との会話を通じて、自分も学び成長できる環境が、ここにはあります」(小崎社長)。
また、寿司という食の仕事の可能性についても、小崎社長は明確なビジョンを持っている。「寿司は日本を代表するメニューです。回転寿司から高級寿司まで、いろんなスタイルで食べてもらえる。和食の深掘りができるのが寿司の面白さだと思います」。小崎社長は寿司業界の展望、業界で働くことでの視野や技術の広がりにも期待を込める。
待遇面も充実している。年功序列ではなく実力主義で、若くても頑張れば給料が上がる。完全週休二日制、年間一週間の連続休暇取得を推奨。社会保険完備、有給休暇も取得しやすい環境だ。過酷な環境では人が育たず、業界そのものの衰退に直結するとの考えから、労働環境の改善は積極的に行なってきた。
「人生の中で仕事が占める割合は大きい。仕事が楽しくないと人生も楽しくない。やりがいを持って働ける職場づくりを、会社がサポートします」と小崎社長。同社は佐渡弁慶ブランドを全国に広げながら、新しい寿司の意義や価値、そこに関わる“人”の可能性を追求していく。
(取材・文・撮影/野口彩)
【会社情報】株式会社弁慶
本社事務所:新潟県佐渡市河原田諏訪町90-2 TEL:0259-57-3964
新潟本社オフィス:新潟県新潟市東区長者町5-9 TEL:025-288-6967
公式ホームページ:https://sado-benkei.com/
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