【記者ノート】ダイセル新井工場長兼ダイセル新井ケミカル代表取締役社長池田信彦氏インタビュー、「『新井から世界へ』をモットーに、最先端の技術力による世界シェアの高い高品質なモノづくり研究開発型工場として発展を続けたい」

株式会社ダイセル新井工場全容(上空から)
新井進出90年、なぜ新井が選ばれた?
株式会社ダイセル(大阪市北区)は1919年に創業され106年もの歴史を刻む。同社新井工場の歴史も古く旧新潟県新井町(現新潟県妙高市)に進出したのは1935年と戦前まで遡る。当時の新井町から工場誘致の話があり、妙高山麓に近く水が豊富だったこと、多くの水力発電所があったことが決め手となり新井の地への進出が実現したという。現在は既存製品の製造に留まらず、続々と新規製品を開発・上市する研究開発型の工場であり、約450人が働いている(ダイセルグループ)。
時代のニーズに寄り添った変化を恐れない事業変遷
新井工場は、設立当時、酢酸から酢酸セルロースまでを一貫生産していた。石油化学の台頭により、1980年頃から大規模な汎用化学品製造は、新井工場から太平洋側の兵庫県姫路市に位置する網干工場へと移管された。酢酸は主力製品となり、世界でもトップシェアを誇る商品となった。その後、医薬品原体・中間体、発酵製品などファインケミカルの生産へとシフトした。現在は、有機合成品(医薬品原料・殺菌剤・包装フィルム・塗料等)、医薬品関連製品、健康食品素材(サプリメント・飲食品)、電子材料(スマホ・パソコン・LED照明等)などが主な製品であり、少量多品種変量生産へと転換が進んでいる。
世界を舞台に挑戦し続け、健康とスマートに貢献する工場へ

ダイセル新井工場の本社建物(イノベーションセンター新井)で2018年完成
光学異性体(キラル)分離用カラムは、医薬品の研究開発・製造・品質保証に必要不可欠であり、世界中の製薬会社で使用されている。健康食品素材は長年培った発酵技術を用いて開発・製造され、人々の健康をサポートしている。スマートフォンやパソコン等に使われる半導体を作るために用いられるレジスト用ポリマーは、最先端の電子材料であり、デジタル社会の発展に貢献している。我々の身近な生活の中に、ダイセルの製品は多く存在しており、支えられているのである。
池田工場長は「世界No.1シェアであるキラルカラムはインド市場で成長が著しい。大豆由来の発酵製品や乳糖由来のオリゴ糖などの健康食品素材も販売量が伸びており、今後海外展開を見据えている。半導体は台湾勢がますます市場を牽引するが、我々はその成長を下支えしてゆく。新井工場は『健康とスマートに貢献する工場』を目指して今後も改革を続ける」と海外市場も視野に入れた展開を熱く語った。
誰もが羨む、より働きやすい職場環境を実現してみせる

インタビューに応えるダイセル新井工場の工場長兼ダイセル新井ケミカル株式会社社長の池田信彦氏
若手採用や昨今話題となっている女性採用・女性役職登用などについても聞いた。池田工場長は「今、高校生は“売手市場”なので人材確保に苦慮している。2027年11月完工予定であるライフサイエンス棟で、誰もが安心して働くことのできる・活躍することのできる職場を整備し、生産現場への女性進出を推し進めてゆく。更に、女性の課長は現在1名であるため、今後は候補者育成にも注力してゆきたい。組織全体で取り組む姿勢を大切にしている」とキッパリと答える。
「あらいまつり」への参加、いのちの森づくり(1,000本の苗木を地域の方々と植樹)で地域と共に成長し続ける
新井工場は、世界という大きな舞台を目指すだけでは終わらない。池田工場長からは、地域あってこその企業であるとの思いが強く伝わってきた。「あらいまつり」や地域の子ども達を対象とした「サイエンスフェス」等、地域行事に積極的に参加している。2017年には自然の森の創生を目的に「いのちの森づくり植樹祭」を開催し、従業員・地域の人々合わせて約1,000本もの苗木を植樹した。現在は2030年度に向け、3,000本を目標にいのちの森づくりを継続している。
ダイセルの企業理念でもある価値共創には、多様なパートナーと共創していくという思いが込められている。企業としてだけではなく、地域を形作る一員としての高い意識を持ち、地域とともに新たな価値を生み出し続けることで次の100年につなげるという熱い思いを、池田工場長は語った。


同社社員の業務中の様子
『安全・安心』、『環境』、『便利・快適』、『健康』を掲げ価値共創による社会への更なる貢献に意欲を示す
池田工場長は「『安全・安心』、『環境』、『便利・快適』、『健康』がキーワードとなる。開発スピードをさらに上げ、新井から世界へ価値を提供していきたい。ダイセルグループ全体では今6,000億円近い売上高だが、将来的にはトップラインをあげていく。その一端を新井が担ってゆく」と堅い決意を示した。今後の新井工場、そしてダイセルグループの活躍から目が離せない。
竜 哲樹(にいがた経済新聞顧問)
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ。新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。にいがた経済新聞社顧問。