【IPOの新潮流】地方企業はどの市場を選ぶべきか フラーとtane CREATIVEが語った上場のリアル

新潟県が主催したイベント「ローカルスタートアップの“新”上場戦略 〜市場関係者に聴く!IPOの新たな潮流とは?〜」(新潟市中央区)

IPO(新規株式公開)を巡る環境の変化や、地方発スタートアップの上場戦略をテーマとしたイベント「ローカルスタートアップの“新”上場戦略 〜市場関係者に聴く!IPOの新たな潮流とは?〜」(主催・新潟県)が2月4日、新潟市内で開かれた。市場関係者と実際に上場を果たした企業経営者が登壇し、IPOを巡る最新動向や実務のポイントが共有された。

第1部「IPOの新潮流 〜スタートアップを取り巻く環境はどう変わるのか?〜」には、東京証券取引所上場推進部の宇壽山図南氏、名古屋証券取引所の小池哲氏、フィリップ証券の脇本源一氏、新潟ベンチャーキャピタル代表の永瀬隆氏が登壇した。

宇壽山氏は、上場の目的を明確にした上で市場を選択する必要性を挙げ、TOKYO PRO Marketや地方市場を経由するなど、段階的な上場の考え方を紹介した。小池氏は、名古屋証券取引所では時価総額が比較的小規模な企業の上場も受け入れており、上場後もIR支援などを通じて企業と伴走していると説明した。

脇本氏は、上場は企業の内容だけで決まるものではなく、主幹事証券が投資家に販売できると判断することが重要だと説明。証券会社の立場によって評価や対応が異なる場合がある点にも触れた。

第1部「IPOの新潮流 〜スタートアップを取り巻く環境はどう変わるのか?〜」に登壇した4人、(左から)新潟ベンチャーキャピタル株式会社の永瀬俊彦代表取締役、株式会社東京証券取引所上場推進部の宇壽山 図南課長、株式会社名古屋証券取引所上場推進・企業サポートグループ 上場推進担当の小池 哲課長、フィリップ証券株式会社の脇本源一取締役常務執行役員

フラー株式会社(新潟市中央区)の山﨑将司代表取締役社長 (左)

tane CREATIVE株式会社(新潟県佐渡市)の榎崇斗代表取締役

第2部では、「ローカルスタートアップのIPO戦略を考える」と題し、実際に上場を経験した企業による事例紹介が行われた。2025年7月に東証グロース市場へ上場したフラー株式会社(新潟市中央区)の山﨑将司代表取締役社長は、自社の上場までの経緯と、上場によって生じた変化について説明した。山﨑代表は、同社が新潟と千葉の二本社体制で事業を展開していることに触れた上で、上場の目的として採用、営業、新潟への発信の三点を挙げた。

また、採用面では、上場企業であることが応募者にとって分かりやすい指標となり、首都圏在住の新潟出身者からの応募が増えたと説明。営業面では、大企業との取引において、上場しているかどうかが発注先選定の基準の一つになる場面があると述べた。

さらに山﨑代表は過去に上場直前で中止となった経験にも言及した。準備を重ねてきた上場が、直前のトラブルによって実現しなかったことを振り返り、上場準備では管理体制や内部統制、情報開示など、日常の経営そのものが問われると説明した。その上で、上場後は取引先や関係者からの見られ方が変わり、事業フェーズが一段階進んだと語った。

一方、2024年10月にTOKYO PRO Marketへ上場したtane CREATIVE株式会社(新潟県佐渡市)の榎崇斗代表取締役は、同社が上場を選択した背景について説明した。榎代表は、佐渡市でウェブ制作会社として創業した後、AIの進展を受けて事業の将来性を見直し、ウェブセキュリティ分野へ軸足を移した経緯を紹介した。

セキュリティ分野では、取引先から与信やコンプライアンス対応を厳しく求められる場面が増えたことから、企業としての信頼性を示す手段として上場を選んだと述べた。
また榎代表は、上場準備の過程についても触れ、申請後も細かな確認が続き、緊張感のある期間を過ごしたと振り返った。上場後は、企業としての信用力が可視化されたことで、M&Aを実施するに至った事例を紹介し、事業拡大に向けた取り組みを説明した。

イベントに参加した新潟市内の情報サービス関連の経営者(40代)は、「市場関係者の話を直接聞いたのは初めてで、本やネットでは得られない現場のリアルな感覚を得られた。同じ新潟の企業が上場していることは励みになるし、2人が語られた実体験は大変参考になった」と話した。

第二部では県内の上場企業2社と市場関係者が「上場のメリット」や「上場後の展望」などについてトークセッションを行った。

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