【キシャメシ】 長岡駅で新潟県内最高のへぎそばを(新潟県長岡市)
取材の移動の合間に、JR長岡駅に直結するCoCoLo長岡の奥へ。長岡小嶋屋 CoCoLo長岡店に足を踏み入れると、駅ビルとは思えないほど穏やかで落ち着いた空気が漂っている。昼時は買い物客やスーツ姿の人々で活気づくが、どこか品のある静けさが保たれているのがいい。
この日頼んだのは看板メニューの一つ、「にしんそば」。運ばれてきた丼を見た瞬間、思わず息をのんだ。一本の身欠きニシンが、まるで主役のようにどっしりと横たわり、丼の縁を堂々とまたいでいる。そのスケール感と存在感に、まず目が釘付けになる。

つゆは透き通った琥珀色で、立ち上るだしの香りが鼻をくすぐる。ひと口含めば、優しい甘みが先にきて、じんわりと醤油のコクが追いかけてくる。塩気はあえて抑えめで、全体が丸く、温かな余韻を残す味わいだ。
このニシンは、本乾の身欠きを熟成させた「かえし」で丁寧に味を染み込ませたもの。箸を入れると、身は驚くほど柔らかく、繊維に沿ってふわりとほぐれる。甘辛い味が骨の髄まで行き渡っていて、噛むたびに深い旨味がじゅわっとあふれ出す。脂の乗りは申し分ないのに、決してくどくなく、つゆと溶け合うことでさらに味わいに奥行きが生まれる。

存在感たっぷりのニシンだ
そばは細めで、のどごしはつるり。海藻のつなぎが入ったへぎそば特有のコシと滑らかさが、ニシンの甘みとだしの風味と見事に調和する。三位一体となった瞬間、派手さはないが、職人の丁寧な手仕事が静かに伝わってくる一杯だ。
駅直結の便利な場所にありながら、慌ただしさから少し離れた落ち着きを味わえる。取材前の腹ごしらえに、旅の途中の小休止に、あるいは長岡を訪れた際に立ち寄りたい、確かな存在感の一軒である。
(編集部 Y)