【2026衆院選回顧#2】新潟4区の不可思議、一度たりとも鷲尾がつけた圧差に触れなかった地元マスコミ
自民党が歴史的圧勝を収め、単独で衆院の3分の2を超える316議席を獲得した2026年2月の総選挙。改選前の野党第一党だった立憲民主党は、自民との連立を解消した公明党と合流して新党「中道改革連合」を結成したが、選挙戦は「高市旋風」と呼ばれる強烈な追い風の前に大敗。各地の選挙区で旧立憲の重鎮が敗れ、党は解党的出直しを迫られる結果となった。
その「旋風」は、現場ではどのように受け止められていたのか。新潟県内の激戦区で戦った当事者たちに話を聞いた(本文中敬称略)。

先の衆議員選挙小選挙区新潟4区で当選を果たした鷲尾だが、地元紙は終始ビハインドを報じていた
地元紙が報じた「米山先行」はなぜ外れたのか
「豪雪の選挙だったので、なかなか身動きが取れませんでした。雪の壁ができた長岡の街で、街宣車を停めて演説をすれば、大渋滞を引き起こしかねない。『市民に迷惑をかけることだけはやめよう』ということで、選挙戦略を大きく見直しました」
こう語るのは、自民党元職で新潟4区から出馬した鷲尾英一郎(49)である。
記録的な降雪に見舞われた今回の選挙戦は、従来のような街頭活動が制約される異例の展開となった。しかし、この選挙の異変は、天候だけではなかった。
新潟2区では、鷲尾が中道改革連合現職の米山隆一(58)に4万票以上の差をつけて圧勝した。開票開始と同時に当選確実が打たれる、いわゆる「ゼロ打ち」である。
これほどの大差が、わずか2週間余りの選挙戦だけで形成されたとは考えにくい。

豪雪下の選挙戦で、鷲尾陣営も戦略の転換を余儀なくされた
だが、公示直後の地元紙は「米山が先行、鷲尾が追う」と報じていた。
一般に「先行・追う」という表現は、数ポイントから1桁台後半程度の差がありつつも、逆転が可能な情勢を示すものとされる。全国紙が選挙戦中盤以降、「与党優勢」や「議席大幅増」の見通しを相次いで報じる中でも、地元紙は最後まで両者の順序を維持した。
最終結果との間に生じたこの大きな乖離は、どこから生まれたのか。
鷲尾陣営が感じていた手応えは、報道とは異なっていた。
「動けば動くほど支持が広がっていく実感がありました。選挙戦を通じて、手応えは強まっていった」
地元紙が相手候補のリードを伝える一方で、陣営は有権者の反応から独自の感触を得ていたという。
その背景の一つとして挙げられるのが、いわゆる「高市旋風」である。
「高市総理への期待の大きさは、現場で強く感じました。陣営の大きな原動力になっていたと思います」
全国的な政治潮流が、地方選挙区にも影響を及ぼしていた可能性がある。ただし、前回選挙で敗れている経緯もあり、その効果の大きさは当初、見通しにくかったという。

ホテルニューオータニ長岡で開かれた決起集会には小泉進次郎氏が駆け付けた
もう一つの要因として、鷲尾は「有権者の見極め」を挙げる。
背景には、過去の政党再編の経験がある。2010年代後半、旧民主党勢力は再編を繰り返し、希望の党への合流や分裂を経て、現在の政治勢力図へと至った。
その過程で鷲尾は民進党を離党し、無所属で衆院選を戦った経験を持つ。
「選挙のための離合集散は受け入れられないということを、有権者は見ている」
こうした認識が、今回の選挙戦でも一定の影響を及ぼした可能性がある。
実際、前回選挙で新潟4区から出馬していた元知事の泉田裕彦が今回は立候補しなかったことについても、「影響はほとんどなかった」と鷲尾はみる。
陣営の事前調査では、泉田支持層と自らの支持層は重なりにくい傾向が確認されていたという。
これらの要素を踏まえると、選挙戦中盤にはすでに両陣営の差は一定程度開いていた可能性もある。

一方で、情勢調査は有権者の動向を完全に捉えきれるものではない。豪雪による行動制約や、無党派層の動き、回答傾向の偏りなど、複数の要因が結果に影響した可能性も考えられる。
今回の結果は、情勢報道の限界を改めて示したともいえる。
選挙後、鷲尾は自民党政務調査会長代理に就任し、政策面での役割を担うこととなった。豪雪対策に加え、農政や外交といった分野を担当する。
「雪害は近年、激甚化している。平時からの政策対応が必要だ。農政についても、水田活用や補助制度の見直しが課題になっている」
外交についても、中東情勢の緊張が高まる中、資源調達の安定化などが課題として浮上している。
今回の選挙では、鷲尾が全ての地区で得票トップとなり、とりわけ長岡市での支持拡大が勝敗を分けたとみられる。地盤は一定程度強化されたといえる。
ただ、近年の選挙では、政治状況の変化や「風」によって結果が大きく左右される傾向も強い。
有権者の判断と報道の間に生じた今回のズレは、その不確実性を象徴している。
情勢を数値で測ることの難しさと、現場に漂う空気の重み。その両者の隔たりが、今回の選挙結果には表れていた。

「選挙のための離合集散は受け入れられないということを、有権者は見ていた」と鷲尾代議士
(編集部 伊藤 直樹)
【関連記事】