イタリア人シェフも惚れ込む 燕三条地区にあるサントク(新潟県)の「世界一軽い鍋」

三条特殊鋳工所(サントク)にて

ブランドアンバサダーにイタリア人シェフのマリオ・ガンバ氏が就任

新潟県の県央地域にある日本有数のものづくり地域、三条市にある株式会社三条特殊鋳工所。「サントク」という通称で知られている同社が、いま新たな局面を迎えている。同社のブランドアンバサダーに「マリオ・ガンバ」氏というイタリア人シェフが就任したのだ。

このガンバ氏、同社の「UNILLOY(ユニロイ)」ブランドのホーロー鍋やフライパンの大ファン。海外の自身の店舗でも愛用するほどほれ込んだUNILLOYブランドをさらに底上げすべく、取り組みを進める。7月に、同社の本社工場を訪れたガンバ氏はモノづくりの姿勢はもちろんのこと、燕三条の土地柄にも関心を持ったようだ。

ガンバ氏が運営するのは、ミシュラン星付きレストラン「acquarello(ドイツ・ミュンヘン)」など。ミシュランガイドでも紹介されたり、世界のレストランを紹介するサイトでも人気ランキングで上位にランクインしたりするなど、常に人気の高い飲食店だ。

この厨房ではUNILLOYの鍋やフライパンが大活躍している。UNILLOYの特徴といえば、なんといっても軽いこと。自社のホームページでも「世界一軽い、鋳物ホーロー鍋」と銘打っている。同ブランドのホーロー鍋は厚み重さともに「他社製の半分ほど」(内山照嘉社長)で強いというから、鍋を商売道具とする料理人の間でも評判が高い。かくいうガンバ氏も、その性能にほれ込んだというわけだ。

ちなみにレッドドットアワードや、グッドデザイン賞などの世界的なデザインコンテストで受賞するなど、デザインも洗練されている。

世界一軽い、鋳物ホーロー鍋(広告)

 

燕三条発のクオリティとモノづくりのカルチャーに感銘

2019年7月11日、サントクを訪れたガンバ氏は、「UNILLOYを作る職人にはとにかく強いスピリットを感じる」と印象をのべた。サントクの得意技といえば、社名にもある鋳工、つまり鋳造だ。この鋳造とは、型の中に溶けた金属を流し込み、冷やしてできた金属を磨くなどして製品に仕上げる方法だ。夏場とはいえ、製品づくりは灼熱の環境になる。そんな中でも、職人がひたすらいいものをつくろうと頑張る姿に、リスペクトを感じたのだろう。

ガンバ氏は同社見学の前に、銅器の株式会社玉川堂(燕市)も見学。サントクの内山照嘉社長が、地域の横のつながりを生かした。ガンバ氏はこの地域のつながりも「自分のところだけでなく、周りとともに歩もうという姿勢が素晴らしい!」と感銘を受けていた。

ガンバ氏は、モノづくりにおける重要な要素は「火」「水」「空気」だと断言する。料理作り、鍋づくりともにその三つを用いており、燕三条のモノづくりに親近感を感じている模様。

だが、モノづくりに大事なのはそのほかにもあるという。「料理人にとってのいい仕事とは、今ある料理を毎日いいものにしていくこと。それはモノづくりにも同じことが言えるのではないか。いいもの、つまりクオリティを追求し続けることで、それがいつの間にかカルチャーになる。燕三条のクオリティを追求する姿勢が、この地域のモノづくりカルチャーとなっている。こんな地域、他にはない!」。ガンバ氏はどうやら、燕三条の職人の姿勢、そして燕三条という場所にも感銘を受けている。

「UNILLOYの製造元である三条特殊鋳工所の人々と一緒に仕事ができるのは、存外の喜び」。同日に、にいがた経済新聞などの取材に応じたガンバ氏は、このようにうれしさを表現した。一方、内山社長も「世界を股にかけて活躍する料理人のガンバ氏に愛用してもらえているのは、作る側としてもありがたい」と話す。ガンバ氏は料理を作り、サントクはUNILLOYを作る。同じモノづくりを生業とする職人同士、惹かれあいつつ相手を認め合う。モノづくりの場所ならではの交流を見た。

マリオ・ガンバ氏

燕三条と世界をつなぐ鈴木氏が橋渡し

ガンバ氏とサントク、両者をつないだのが、鈴木里美氏だ。同氏は、欧州市場向けに燕三条産調理器具の開発やプロデュースをするSATOMI SUZUKI TOKYO(東京都港区)の社長を務める。

同社はもともと、日本企業向けに欧州展示会の出展支援などを主な業務としている。と同時に、ドイツ・ミュンヘンで日本製品のセレクトショップを運営。同店舗でも燕三条の製品が多く置かれている。特に、カンナなどを手掛ける株式会社角利製作所(三条市)が手掛ける鉛筆削り「Shin」は、鰹節を削るように鉛筆に手を添えて削るスタイルや削りの心地よさそして製品のクオリティの高さが、日本だけでなく世界で好評だ。また燕振興工業株式会社(燕市)のカトラリーに食洗器でも剥がれないコーティングを施した「ビーナスラインBVDゴールドカトラリー」も、海外で高い人気を保つ。燕三条の高い技術力や品質を持つ製品を、海外のし好に合わせてコーディネートする、燕三条と海外の新たな橋渡し役を鈴木社長は担っている。

現在、サントクはガンバ氏と連携した製品の開発を進めている。ガンバ氏はUNILLOYを「100年先も使える品として開発してほしい。また、それを見据えて価格設定をしてほしい」と呼び掛けている。どのような品を開発しているのか、もう間もなくの発売に向け、準備は着々と進む。鈴木社長という橋渡し役を得たUNILLOY。今後、どのような展開を見せるか、目が離せない。