「新潟での起業」起業家3名インタビュー

「新潟県の産業をもっと元気に」を使命に、県内の中小企業や起業家への助言や助成を行い、その発展を支援しているのが、にいがた産業創造機構(以下、NICO)だ。

ビジネスでなくとも、新しいことを始めようとすると、とにかくわからないことが多い。そんな時、豊富な知見を抱える機関や個人からの助言は、とても貴重だ。ましてビジネスであれば、資金面の支援がとても助かるのは、当然の話。それらを一手に引き受けてくれるNICOは、ニュービジネスを立ち上げようとする中小企業や起業家にとって、とてもありがたい存在だ。

今回は、新潟で創業した起業家3名に、「新潟での起業」について話を伺った。集まっていただいたのは、株式会社クーネルワークを創業した坂井俊氏(現・同社取締役)、リプロネクスト株式会社の代表取締役・藤田献児氏、株式会社ramの代表取締役・齋藤駿氏。

【司会は、にいがた経済新聞社・三浦健一郎】

― 貴社の紹介をお願いします

坂井
クーネルワークは、デジタルマーケティングを主軸としたITベンチャー企業です。2014年に私が個人事業として始め、翌年に法人化した株式会社クフーと、東京からの移住者たちが2011年に作った「新潟直送計画」を運営する合同会社直送計画の2社が合併してできた会社です。

「ローカルビジネスの未来を作る」をミッションに、デジタル技術を使った販路拡大の支援や、「新潟直送計画」という自社運営の産直サービスの運営を行っています。

藤田
リプロネクストは、約3年前にスタートしたインターネット広告の会社です。うちの会社のいちばんの主軸は、VR(ヴァーチャルリアリティ)。お客さまがPRや販促をしたいという時に、インターネットとVRによって、良いモノやその質感といった「リアル」を、より多くの人に届けていくというのがメイン事業です。

齋藤
ramでは、「生活が変わるITをより便利に」というビジョンのもと、海外でのEC事業、国内でウェブ制作受託、SEOコンサルを行っています。その他に学習塾と家庭教師の事業を展開しています。ただ、よくある学習塾とは違う方向性もあって、基本的にはITをベースにした教育で、将来は子どもに無料の教育インフラを届けることを目ざしています。

― 起業を考えたきっかけについて教えてください

クーネルワーク・坂井氏

坂井
今思い返しても、起業にあたっての明確なきっかけやタイミングは、特になかったと思います。ただ、ずっと新潟でできることが何かあるんじゃないかな、とは思っていました。

大学院に進学して色んな起業家の人を知ることができた中で、だんだんとその意識が強くなっていったような気がします。

藤田
私も、起業のきっかけとか、改めて考えるともう忘れ始めています。

でもたぶん、小さい頃から起業はしたいなという思いはあって、実際に意識し始めたのは、大学生の就活くらいかなと思うんです。とはいえ、東京の大学に通っていて、就職も東京で5年くらい働いていました。人生の中でちょうど27歳くらいの頃だったと思います。自分の人生を考えた時に、このままの状態で過ぎていくのはもったいないなと。

坂井
それは、私も思いました!人は、3万日くらいを一生で生きるんですけど、27歳の何ヶ月目かに、1万日を迎えるんです。
私の場合、9千何日目かになったときに、1万日になる前に何かしなきゃと思い始めて。そのタイミングがメーカーに就職してから2年目の頃だったので、当初予定していた5年勤めることなく、起業したんですよね。

藤田
やっぱりそうですよね!僕なんて、会社作ったのは生まれてから1万1日目ですから。同じことを考えていたなんて(笑)

齋藤
私の場合は、まさか会社を経営する人間になるとは思っていなかったですね。
海外で働きたいという夢があって、海外の大学に行きたいと思ったんです。でもそんなお金はないから、卒業後はフリーターから始まりました。バイトを4つほど掛け持ちしながら、「人生とはなんだろう」とか考えたりしていました。
起業を考えたきっかけは、マレーシアの会社を辞めたタイミングだったかと思います。

藤田
私は最初は東京で起業しようと思っていました。でも東京だと、自分がやらなくても誰かがやるというか、それが当たり前だなとも思ったんですよね。そうではなく、より責任感を持って自分で何かを良くしていくには、地元で起業した方がいいのかなと考えて、新潟での起業を決めました。

―起業時にNICOの支援を利用しましたか

リプロネクスト・藤田氏

坂井
あまり事業の計画らしい計画というものはないまま起業したこともあって、私の場合、実はNICOさんは起業当初は知りませんでした。

最初にNICOさんにお世話になったのは、2016年だったと思います。戦略産業創業支援事業という助成金を頂きました。
また昨年は、ニュービジネス雇用助成金を、第2創業ということで頂きました。WebとかITは人ありきの世界ですが、新潟では特に、ITの人材は首都圏に出ていってしまうという実情があります。ですから、中途の経験ある人材の獲得は難しい。人材の流動性もないですから、未経験の人を教育するしかないところを、人件費の3分の2を半年間支援してくれるというのは、すごく有難いんです。これがなかったら、規模の拡大には踏み切れず、諦めていたかもしれません。人材獲得と教育に苦労していたところを、助けてもらいました。

藤田
私の場合は、新潟に移住して起業する人向けにビジネスプランコンテストを実施して優秀賞を得た人に補助金が出るという、潟チャレ(新潟起業チャレンジ)という支援制度があったのですが、残念ながら入賞はできませんでした。
私もNICOさんの支援を受けたのは創業時ではなく、ニュービジネス雇用助成金が初めてですね。

齋藤
私はNICOの創業準備オフィスを利用していました。創業当初は新潟県阿賀野市で事業を行っていましたが、そこから営業活動を行う際のアクセス性が課題だったので、オフィスを使うことで、営業活動の時間が効率化できましたし、景色も良いので前向きに事業を展開できたと思っています。9FにはNICOさんも入っているので、事業の相談もしやすかったです。

―起業後は、どのようなことに苦労されましたか

ram・齋藤氏

藤田
最初の1年くらいはきつかったですよ。知り合いは友だちとか家族くらいしかいないし、仕事の面では誰も知らない状態でしたから。とりあえず人と合わないと始まらないと思って、市場調査のような感じでテレアポや飛込みをやっていましたね。

坂井
最初は孤独ですもんね。同じスタートラインに立って、今まさに頑張っていますという人のつながりが、今思えばもっと欲しかった気もします。

藤田
普通に生活していると、そういう人には会いませんからね。

坂井
クーネルワークは途中で2社が合併して今に至るんですが、その合併相手の社長だった谷(現・クーネルワーク代表)は、私と同い年だったんです。しかも同じ新潟市西区で、ITをやっている。最初は起業家のブログを探して彼を見つけ出したのですが、「奇跡だ!」と思いましたよね。すぐ突撃しましたから。
でもその当時見つけられた起業家は、彼と、その後の藤田さんくらいです。

齋藤
私の場合は、会社をどう回すか、事業のつくり方とか、そういう勉強が一番苦労したかもしれません。一度始めちゃうと、時間を使って勉強するっていう時間の切り売りは、なかなか難しいじゃないですか。とにかく行動が先の状態になってしまっていて。
そこで、NICOのアドバイザーのくらたまなぶさんの相談会を利用させていただきました。くらたさんはリクルートで新規事業をいくつも立ち上げ、経験豊富な方ですから、そういう方から直接アドバイスをもらい、すぐビジネスでアウトプットできたのがよかったと思います。

―もっと、こんな支援があればいいなと思うことがあれば教えてください

坂井
ベンチャーコミュニティみたいなものがあれば、もっとよかったなと今では思います。
その意味では、昨年、藤田さんと一緒にやったスタートアップブルワリー。起業や新規事業で0から1を作ろうとする人が集まるコミュニティですが、これをSN@Pでやらせて頂いたのは、起業後に話し相手がおらず苦労した経験を踏まえてなんですよね。

藤田
あれは、評判良かったですよね。

坂井
支援とは話がズレるかもしれませんが、コミュニティがあるといいなというのは、起業しようとしたり、起業したばかりの人も思っているはずです。起業家の人口自体を増やすのは難しいかもしれませんが、一方でこうしたコミュニティみたいなものがあれば、起業した人が諦めたり、失敗する確率を少しは減らせるんじゃないかなと考えています。
あとは、ちょっと贅沢な話かもしれませんが、0から1を立ち上げる支援は充実している印象があるのですが、1から10に事業を大きくする支援があるといいなとは思います。

―最後に、これから起業しようとする人に向けて一言

左から、藤田氏、坂井氏、齋藤氏

坂井
起業した後にすごく思ったんですが、新潟にすごい会社があるとか、世界的に注目されている仕事があるとかになったら、それは大きな希望になると思うんです。
特に人口減少、経済が縮小してという情勢に逆行して、「新潟はITの先進県だ」とか「起業は新潟だよね」なんて言われる状況になれば、頑張ってよかったなと思えるんじゃないかなと。
ですから、新潟でぜひやってやろうという人があれば、それは新潟全体の願いだと思うので、ぜひ一緒に頑張っていきたいと願っています。

藤田
起業すること自体は、今は難しくないと思います。だからやりたいことがあっても実際の起業に踏み切れなかったりするのは、どちらかといえば心理的な部分が大きいんじゃないでしょうか。
会社がなくなれば数字上は失敗の一つになるかもしれないですが、失敗=死ではなないですし、その後の人としてのキャリアを考えれば、起業したことが貴重な経験になっている可能性も高いと思っています。

齋藤
私は、起業して諦めずに続けていくためにという観点からの話ですが、自分と同じ意見かとか、ポジティブな反応をしてくれるかとかはあまり関係なく、とにかくいろんな人と触れ合って、自分を感化させてくれる人を見つけて、話すことが大事だと思っています。

 

NICOの創業支援として今年度新たにスタートした「NICOスタートアップカフェ」では、4名の起業サポートコンシェルジュが、起業に関する疑問や悩みの解決に向けてサポートを行っている。

起業に興味のある方や、起業に向けてこれから一歩踏み出そうとしている方は、NICOに相談してみるといいだろう。

 

本記事は、にいがた産業創造機構提供の記事広告です。

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