デジタルトランスフォーメーションで建設業のイメージを変える小柳建設株式会社(新潟県三条市)


小柳建設はデジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した新たな取り組みで全国的にも注目を集めている

建設業は新潟県の主要産業である。少し古いデータになるが、新潟県の平成28年度県内総生産(名目)が8兆8,840億円であるのに対し、建設産業は6,337億円で7.1%を占める。また平成27年の県内の就業者数114万840人のうち11万3,017人(9.9%)が建設業に就業している。

さらに通常のインフラ整備などに加え、災害時の迅速や復旧業務や除雪作業など県民の生活を支える上で不可欠な存在だ。だが、この建設業では就業者、技能労働者不足が深刻化している。

こうしたなか、小柳建設株式会社(新潟県三条市)が、社内組織の変革やデジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した新たな取り組みで全国的にも注目を集めている。

 

取締役を一新。平均年齢は43歳に

小柳建設は昭和20年に加茂市で創業した。創業間もなく土木、建築に進出し現在はこの2部門の施工管理に加え、河川などの浚渫、法面緑化などの事業を手がけている。このうち、浚渫は狭い河川に強みを持ち、皇居外苑、浜離宮をはじめ東京都内を流れる河川の8割近くを行ったことがあるという。

浚渫の様子

現在の売上高は約80億円で、従業員は約300人。その小柳建設を牽引する小柳卓蔵代表取締役社長(CEO)は2014年に就任し、就任後から様々な社内改革に取り組んでいる。例えば昨年5月、取締役を一新し、平均年齢60歳から43歳へと大幅な若返りを断行するとともに取締役数も3名に減らした。「価値(経営理念)を共有できる人に就任してもらうため一新した」と小柳社長は振り返る。

その経営理念の一つは、「社員の幸せ」で、小柳社長が考える社員の幸せとは「経営者のマインドを持った従業員に育つこと」だ。「従業員たちは、どこの会社に行っても仕事ができる力があるが、小柳建設が好きだからこのチーム(小柳建設)にいる状態にしたい」(小柳社長)と話す。

この目標に向かって、取締役、執行役員の役割を明確にした。小柳社長が会社を左右する大きな課題を統括するCEO、専務取締役が経営全般に責任を持つ最高執行責任者(COO)、常務取締役が営業を統括する最高戦略責任者(CSO)と、取締役の役割を明確にし、意思決定を任せているのだ。「役割を分担し、現場に意思決定を任せたことで現場がスピーディーに動くことになった。それに加え、従業員からいろいろなことを提案する“創造していく人材“が出てくるようになった」(同)という。例えば、コロナ禍で、同社がいち早くウェブでの採用活動を始め、注目を集めたのも従業員からの発案がきっかけだった。

小柳卓蔵代表取締役社長

小柳社長は就任時にグループとして5,000億円の売上高にしたいと夢を語っているが、その時も経営者マインドを持った従業員(社内起業家)を輩出したいという思いがあった。換言すれば、10億円規模のベンチャーが500社あるいは100億円規模の会社が50社生まれるというイメージ(アメーバ経営)で語ったのだ。「取締役が変わり、取り組みは始まったばかりですが、目標に向かって頑張っていきたい」(同)と語る。

 

電話やメールでの社内連絡は廃止

2014年の社長就任時にはITを宣言し、社内のIT化も推進している。社内のやりとりに電話やメールを使用することを廃止し、チャットツールを利用している。「電話は人の時間を奪いますし、メールは埋もれてしまう可能性があります」(小柳社長)と理由を語る。電話やメールに引き換え、チャットであれば、大人数への確認がスムーズになり、一人一人への連絡する手間を省くことができる利点がある。また、総務には複数の従業員から同じような質問がくることから、こうした質問については、事前に準備した回答をもとに答えるチャットボットを導入するなどコミュニケーションにおける効率化を図っている。

一連の取り組みは、今年7月に導入したというオフィスカジュアル(スーツスタイルほど固すぎず、プライベートで着る服のように緩すぎない服装)と相まって、小柳建設の社内は、多くの人が抱く建設会社のイメージ(3K=きつい、汚い、危険)とはまるで異なり、さながらITベンチャー企業のような雰囲気が漂っている。さらに“アイデアと成果を生むオフィス”として新オフィスが加茂市に近く完成する予定だ。

加茂本店新築パース

 

マイクロソフトとの協働プロジェクト

「長時間労働で働く現場社員を楽にしてあげたい」という思いもあり、3年前に日本マイクロソフトと連携し「Holostruction(ホロストラクション)」を導入した。MR(複合現実)を活用したマイクロソフトのホロレンズ(ヘッドセット)を使って、計画、工事、検査、アフターメンテナンスのすべてを可視化する。まだ作られていない橋や建物などをリアルな3次元映像で見ることができる。3次元(3D)映像も回転させていろいろな角度から眺めることが可能なほか、サイズは100分の1から実物大まで対応している(『ホロストラクション』のサイトでイメージを見ることができます)。

3年前に日本マイクロソフトと連携し「Holostruction(ホロストラクション)」を導入した

ホロストラクションを使うことで、紙の図面や建物などの模型が不要となり、コスト削減につながるほか、(図面や模型の代わりとなる)3次元映像を使いながらの打ち合わせには、アバターで遠隔地から参加もでき、生産性も高めることができる。「従来のように模型を持ちながら打ち合わせの現場に集合する必要がなくなります」(小柳社長)とメリットを語る。また参加者の認識(参加者それぞれが2次元図面を見て、頭の中で3次元に変換したイメージ)にズレが生じづらくなるといったメリットもある。

各種工事における地元説明会で、完成イメージ模型のかわりに、リアル感のある3D映像を見てもらえれば、住民の不安感を払拭することも可能となる。

小柳社長は「開発時期ごとの進捗状況も簡単に見ることができるので、時間軸も加えれば4次元であると思っている」と話していた。

Holostruction(ホロストラクション)

ホロストラクションは、完了後も建造物に関わる情報をクラウド化し、アフターメンテナンスなど必要なときに活用できるようになることから、現場での事前の確認作業を減らすことができ、検査員の負担軽減にもつながる。

なお、小柳建設のこの取り組みは、「令和元年度版 国土交通白書」に紹介されている。



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