連載 第12回 新潟出身の起業家たち FTI JAPAN株式会社 鳴海健太朗代表取締役


マグロ漁獲量世界一のインドネシアから世界一の消費大国・日本にマグロを輸入

通常、生の状態で輸入された場合、賞味期限は加工してから3日間程度と言われているが、FTI JAPAN株式会社では独自の包装技術などを使って、最大2週間程度に引き延ばしている

マグロの消費大国・日本は、世界で獲れるマグロの5分の1を消費していると言われている。だが近年、「獲り過ぎ」により、種類によっては資源量が懸念されるマグロも出てきた。そんななか、FTI JAPAN株式会社(東京都千代田区)は、世界最大のマグロ漁獲量を誇るインドネシアから、生の状態で加工したマグロを「マグロネシア」のブランド名で日本に輸入し、水産卸売市場やスーパー、飲食店に卸している。通常、生の状態で輸入された場合、賞味期限は加工してから3日間程度と言われているが、同社では独自の包装技術などを使って、最大2週間程度に引き延ばしている。

FTI JAPAN代表取締役の鳴海健太朗氏(39)は新潟市の出身。新潟南高校を卒業後、東京薬科大学製薬学科に進学した。卒業後は製薬会社でMRとして石川県内の医療機関を担当していたが、「もともとマーケティングや企画がやりたかった」(鳴海社長)ことから3年半勤めて退社。半年間薬剤師として勤務した後、医療やトイレタリー業界の市場調査や営業戦略の立案・提案を行うマーケティング会社に転職した。さらに、「もともと食に興味があった」(同)ことから、この会社に勤務しながら、副業で茶の先生の事業サポート(茶の輸入)にも携わったという。

その会社も3年半勤めて退職し、先行きが明るく誰も手がけていない事業を見つけようと、世界各地を巡ったという。そんななかで、マグロ乱獲のニュースに触れ、これを機にマグロをめぐる動向を調べていくと日本はマグロ消費大国であることがわかった。

ベトナム、フィリピン、スリランカ、インドネシアなど各国のマグロ漁獲情報も集め、世界最大のマグロ消費国の日本と世界最大のマグロ漁獲量を誇るインドネシアをつなげるアイデアに行き着いたという。

帰国後の2011年、当時住んでいた横浜市のアパートに近くで、偶然、FTI JAPAN(2010年設立、FTIはフード・トレーィング・インダストリーの略)の創業者(現在は引退)と出会い、同社に入社。インドネシアからのマグロ輸入事業に取り組み始めた。

インドネシア世界最大のマグロ漁獲量を誇る

 

独自開発のフィルムで賞味期限を大幅延長

同社では現在、自社加工場を2拠点運営している。その場所が北スラウェシ州ビトンと南スラウェシ州マカッサルにある。

漁業者が釣り上げたマグロを現地の契約加工工場(約50名が勤務)で、「ロイン」「サク」「スライス」などに加工し空路で日本に輸入している。釣り上げから2日目に成田空港、3日目には顧客であるスーパー(イオン、アークスなど)や飲食店に到着する。通常、生の状態で輸入されたマグロは先述の通り、賞味期限はせいぜい3日間。だが、同社のマグロの賞味期限は2週間あり、スーパーや飲食店にとってもロスの大幅な削減ができる。また冷凍マグロに比べ味も好評で、値段も他社とくらべ1割ほど安い。こうしたことから、(輸入に占める絶対量は少ないが)生マグロだけの輸入で見れば、インドネシアでは3本の指(ベスト3の取扱量)に入るまでになった。

 

契約加工工場

ただ、マグロを生で輸入する取り組みはこれまで様々な人が挑戦してきたが、品質管理がうまくいかず失敗してきた分野。鳴海氏も最初から順風万歩だったわけではない。現在の状態に達するまでに「4、5年を費やし、鮮度管理、腐敗・酸化の劣化を防止するシステムを作り上げました」(同)と振り返る。

具体的には、鮮度劣化の防止のため、10本に1本程度の割合で鮮度の良いマグロを選別しているが、この選別に独自開発のカラーチャートを使用している。品質の一つの指標である”色調”を規格化し、担当者ごとのブレを軽減しているのだ。また、IT指導ツールを使用し遠隔から継続教育を実施し、継続的なスキルアップに取り組んでいる(ちなみに同社と取引している漁業者や加工関係者の所得は、ほかの同業他者に比べて高いという)。

また腐敗劣化の防止のため、薬剤師の知識などをフル活用し、加工施設の衛生管理指導も徹底的に行なった。その結果、米国のHACCP認証を取得している。

さらに、酸化劣化の防止のため、品質を維持したまま輸出ができる「熟成フィルム」を独自開発した。これを輸出の際に使うことにより賞味期限を大幅に伸ばすことに成功したのだ。「マグロの呼吸(スライスしても呼吸するという)を邪魔しない程度まで、(酸化の原因となる)酸素の量を減らす(ほぼ真空状態)ことのできるフィルムです」(同)と語る。

独自開発のカラーチャート

 

SDGsに合致したビジネスコンセプト

一方、設立10年ということもあり社内の人的資源(特に営業体制)が限られているなか、今後の課題となるのがいかに販路を開拓していけるかだ。その鍵を握るのが、「最終消費者の認知度向上」(同)という。そこで、同社では、プロモーション動画を作成するほか、近くホームページをリニューアルし、SDGsが掲げる17目標のうち複数の目標に合致したビジネスコンセプトであることなどを盛り込んだものにする。「インドネシアで継続的な品質改善とスキルアップに取り組むとともに、適正な買取価格と販売価格を設定することでフェアトレードを目指し、同国の水産業を持続可能性にしていくビジネスコンセプトであることなどを盛り込みます」(同)。

また業務用総合食品卸の西原商会が同社のマグロの全国キャンペーンを行う。鳴海氏は、「できれば(出身地である)新潟のスーパーとも取引をしていきたい」(同)と語っていた。

さらに新型コロナウイルスの影響で、地域によっては、マグロの消費が安価な刺身に取って代わられていることから、低価格の食べきりサイズ(100g)の販売も9月中旬に始めた。

このほか、今年6月にはECサイトも立ち上げている。
https://ftijapan.co.jp/2020/06/11/maguronesia-ec/

FTI JAPAN代表取締役の鳴海健太朗氏

FTI JAPAN株式会社では、インドネシアで継続的な品質改善とスキルアップに取り組むとともに、適正な買取価格と販売価格を設定することでフェアトレードを目指し、同国の水産業を持続可能性にしていくことを目指している

 



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