【インタビュー】(株)コロナ(新潟県三条市)代表取締役社長 小林一芳氏「励ましの手紙全国から」

株式会社コロナの小林一芳代表取締役社長

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、最近はコロナ禍という言葉が定着した感もあるが、新潟県内に同じ名前の東証1部上場企業がある。株式会社コロナ(新潟県三条市)である。同じ名前ということで風評被害を受けた。株式会社コロナの小林一芳代表取締役社長に新型コロナウイルスの影響を振り返ってもらった。

――新型コロナウイルスの報道が1月末から始まりました。
小林 当社は2月頃から危機感を持って動き始めた。
1月中旬以降、(船内で感染が広がった)ダイヤモンドプリンセス号の様子がテレビで放映され、日本の政府もそうだが、われわれも何が起きているんだと思っていた。ただ日本は島国のため、水際できちっと防げるから大丈夫だろうと思っていた。ところが、1月末頃から、新型コロナウイルスという名前が報道で出た。コロナウイルスなんて変な名前をつけるなと思った。そもそもコロナウイルスは60年くらい前からある。今回の新型肺炎は、7個目のコロナという名前がつくウイルスらしい。WHO(世界保健機関)がCOVID―19という正式名称を付けたのが2月11日。これでようやく、マスコミも変わるんだろうと思ったし、海外の映像を見ると(COVID―19という)字幕で出ていた。ところが、正式名称ができたにもかかわらず、(国内では)コロナウイルス、どんどん化けてきて、現在ではコロナ禍。聞き方によっては、『コロナか』と叱られているような感じだ。

――どんな反応がありましたか?
小林 ウイルスが、コロナと呼ばれるようになってから、当社のホームページにも書き込みが多少あったようだ。大阪のコロナホテルや、コロナビールも同じ状況だった。ただ、さわるとそこで炎上するので、一切反応しない、反論しないようにした。とにかく、黙々と本業に務めることや、全国の社員に対して出張禁止の行動規制をかけたり、『常に自分を律しなさいと』というお願いを出したりした。

――6月には新聞に全面広告を出しましたね。
小林 そうこうしているうちに、国が緊急事態宣言(5月25日)を解除した。新潟日報に全面広告を載せたのは6月13日の土曜日だった。それ以前のゴールデンウイークもみんな不要な外出が制限されていたし、学校でも友達と話すなと言われていたようだ。子どもを持つ社員のお母さんたちが『最近、子どもがおかしい』とか『お母さん、コロナなんか辞めちゃえば』というあらぬ話が私の耳にも入ってきた。私も三条市の近郊に友人や同級生がいるが、この近郊に住んでいても当社が稼働しているのを分からない人がいた。私のところに電話をくれて『おまえの会社大丈夫なのか』と言われた。どの社員も何かがあったと思う。新潟県でものづくりをしていて、新潟県の皆さんから協力してもらっているので、(全面広告で)コロナは健在だということと、子どもたちに心配するなということを届けたかった。

6月13日の新聞全面広告

――御社の社名の由来は?
小林 コロナウイルスを顕微鏡で見ると、太陽の丸にとげが出ている。要するに、ウイルスの名前は太陽の日食から来ている。明治20年に当時の陸軍が主導して、新潟県から千葉県まで日本を横断する太陽の日食観測をした。茨城県、栃木県、千葉県で観測を行ったが、三条市の大崎山だけが晴天で見事に日食が観測できた。当社がコロナを商標登録したのが昭和10年で、創業が昭和12年。当社の創業者の経歴を見ると電気の技術者だった。点火プラグの火花でパチパチという青い炎がある。それと石油ストーブの青い炎が似ているということで、コロナという名前を付けたらしい。だが、さかのぼると太陽のコロナだと思う。今でも私は太陽のコロナだと言っている。太陽の表面温度は6,000度、コロナの温度が100万度、中心部の温度は1,100万度。それだけの熱量をもっているからこそ、太陽光はわれわれに熱を与えてくれる。太陽光のお陰で人類と植物があると受けとめて感謝している。そもそもは、コロナは、太陽のコロナなんだと社員や子どもたちに伝えなければならないと思い、『キミのじまんのかぞくは、コロナのじまんのしゃいんです』というタイトルの広告を作ることになった。最初は漢字も入っていたが、小学校低学年だと漢字が読めないという女性社員の声もあり、全部、ひらがなとカタカナに打ち換えた。素案は私が作って、あとは社内で揉んで、一部詩を作る人からも見てもらったりして、比較的短期間で仕上げた。

――新聞広告の反響がすごかったとか。
小林 反響はびっくりするくらいあった。13日に載せて、すぐさま取材の申し入れがあって、15日の午前中に民放テレビ4社とNHKの同時取材を受けた。それが放送されてまた反響が出た。全国のメディアが取り上げてくれたこともあって、全国のみなさんから励ましのメッセージをいただいた。一番感動したのは、小学校の教員や校長先生がこの題材を取り上げてくれて、子どもたちが全員で手紙を書いたことだ。その他にも個人の方からメッセージをいただいた。メディアのみなさんからも、『コロナと呼び捨てにしていて、私たちも悪いんだよね』という反省の弁も頂いたりした。しかし、『コロナは親しみがあり、言いやすいので言ってしまう』と。それは間違いない。

ある小学校からの応援メッセージ

――社員の士気も上がりましたか?
小林 13日土曜日に広告が出て、それを見た友達から『すごいね、いいね』という連絡をもらい、気持ちが晴れたようだ。また広告掲載と同時に社員に私のサイン入りの直筆の手紙を送った。15日月曜日の朝会社に出社した時の雰囲気が明るかったようだ。広告を掲載したのは新潟日報だったが、その日のうちに全国に広まった。県内に知っていただくという趣旨だったが、予想以上の反響に驚いた。だが、やはり、名前が同じということで、嫌がる人もいる。そこをどうやって払しょくするかというのが課題だったが、現段階で店の方で拒否されることはほとんどない。電話を掛けるときや受けるときも、従来は『コロナです』と言っていたが、あるタイミングからは『株式会社コロナです』というようにした。そういった細かい工夫でしのいだ一面もある。

株式会社コロナ本社

本社/新潟県三条市東新保7番7号
事業内容/暖房機器、空調・家電機器、住宅設備機器の製造・販売
連結売上高/787億1,100万円(2020年3月期)
従業員数/連結2,304名 単体1,727名 (2020年3月31日現在)
サイト/https://www.corona.co.jp/index.html

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