連載④ 流通最前線「本当に総合的に商品を扱う業態はその役割、使命を終えたのか」

イオンとセブン&アイ・ホールディングスはGMSという業態を抱えているが、2社ともにもはや稼ぎ頭はGMSではない

総合スーパー(GMS)という業態は少なくなった。今や多くのGMSが淘汰されたりイオンに吸収されたりしている。それは「GMSは何でも置いてあるが、買いたいものがない」といわれた始めてからだ。現在、GMS企業として流通業界に君臨している企業は、GMS以外に有力分野を抱えており、「GMSはその役割を終えたようにみえる」という声は少なくない。しかし、本当に総合的に商品を扱う業態はその役割、使命を終えたのか。

現在の2大スーパーといわれるイオンとセブン&アイ・ホールディングスはGMSという業態を抱えている。しかし、2社ともにもはや稼ぎ頭はGMSではない。現在イオンのGMSの20年2月期の売上高は3兆705億円、前期比0・6%減と売上高は大きいが、利益の稼ぎ頭はクレジットカード会社などファイナンス会社やデベロッパー会社、セブン&アイはご存知のようにコンビニエンスストア事業が主力である。

イオンにとっても、セブンにとっても業といえるGMSは例えばセブン&アイでは店舗網の縮小に動いているし、イオンではショッピングモールの核テナントとして導入しているが、このところ業績は振るわない。ましてコロナ禍がその追い打ちをかけている。

しかし、一か所で必要な商品が揃う総合と呼べる業態はその役割を終えてしまったのだろうか。「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)傘下のドン・キホーテは新型のGMSだ」とあるスーパーの社長はこう話す。ドンキはGMSのように食品を始め衣料品、雑貨、家電と品揃えは一通りそろっているし、ワンストップショッピングができるからだ。

「ドン・キホーテは新型のGMSだ」とあるスーパーの社長は話す

ワンストップショッピングといってもGMSのように、短時間で買い物を済ませるという狙いではない。GMSという業態を再定義し、むしろ時間消費型の業態を作り上げることに成功、若者に受け入れられ、業績はうなぎ登りに上昇してきた。

PPIHの20年6月期の連結売上高は1兆6819億円で流通業界ではイオン、セブン&アイ、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングに次ぐ第4位だ。PPIHは「ユニー」を買収して傘下に入れたし、経営破綻したGMS、長崎屋を傘下に入れ再生を果たしている。まさに〝総合の新勢力〟による〝総合の旧勢力〟の草刈り場になっている格好だ。そのPPIHも現在は海外展開に力を入れており、海外店舗数の目標はアジア、アメリカの両事業で21年1月時点の55店から24年には126店まで増やし海外売上高3000億円を目指している。コロナ禍で低成長が見込まれる国内から、海外に主戦場を移し、次の時代を勝ち抜いていく構想といえる。

しかし、そのPPIHも実態的にはもはや、国内では何百店というきめの細かい店舗網が構築され、「業態を大胆に変革しなければ出店余地はそう多くはないのではないか」(ある大手小売業幹部)という指摘もある。これまで若者のオアシスになってきたドン・キホーテも若者という「従来のメーンの客層が高齢化、かつての伸びは期待できない」(ある新聞記者)ともいわれている。

歴史は繰り返すのか。イオン、かつてのジャスコやイトーヨーカ堂というGMSはかつて安売り、ワンストップショッピングで成長した。そこに時間消費という概念を付加したドン・キホーテが台頭してシェアを奪った。いずれも総合という品揃えだが、そんな〝総合〟という業態は、かつてドンキがそうしたように、また再定義を求められている。

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