新潟県の食と燕三条の伝統産業を発信しつづけるイタリアンレストランBit


株式会社Bitの秋山武士代表取締役・オーナーシェフ

新潟県の燕三条エリアは金属加工技術の集積地として国内外にも有名で、特に燕市は明治時代、和釘生産から洋食器産業への転換を経て成長を遂げた歴史もあり、株式会社玉川堂、株式会社藤次郎、ツインバード工業株式会社など数多くの食器・台所用品を生産する企業が集まっている。

キッチンウェアの一大産地でもあるこの土地で、地場産品を積極的に用い、「燕三条」の名前を多くの人へ伝えることをミッションとするレストランがある。それが、燕三条イタリアンBit(株式会社Bit)だ。

 

目次

◎レストランで故郷を発信
◎利用者だけでなく協賛企業からの反響も
◎後進を育てること
◎産業観光地化を進めるこれからの燕三条

 

レストランで故郷を発信

株式会社Bitを創始した秋山武士代表取締役・オーナーシェフは燕市の出身。専門学校を卒業後、関東のホテルでイタリア料理の修行を積み、新潟へUターン後もイタリアンシェフとして活動していた。そして2010年、玉川堂が主催し燕三条の食器類を活用した食事イベントにケータリングのシェフとして参加したことで、改めて地元へ関心を持ったという。

玉川堂のイベントはその後も何度か開催され、秋山代表は参加するごとに「同じように燕三条製品を中心に揃えたレストランをつくりたい」(秋山代表)という思いが強くなっていった。

同イベントには、株式会社スノーピーク代表取締役社長の山井太氏(現・代表取締役会長)といった燕三条のものづくり企業の代表や、元・三条市長の國定勇人氏も参加しており、秋山代表は彼らとの繋がりを作りながら2013年に独立。「地場産品をコンセプトにしたレストラン Bit」(1号店 新潟市中央区)をオープンした。

bit燕三条店の一画は、三条市のアウトドアメーカー、スノーピークの製品で揃えられている

さらにその後のBitは、2017年に2号店を東京都銀座へ出店。2019年には地元・燕三条の「地場産業振興センター」1階への出店に至った。そして、現在関わりを持つ燕三条企業は20社ほどになっている。

燕三条Bitへ協力したのは金属加工業だけではない。Bit創業当時から、地元の若手農家が立ち上げた「燕三条イタリア野菜研究会」とも協力。開業から現在まで、豊富な地元食材や新潟・佐渡産の食材を料理に利用している。

 

利用者だけでなく協賛企業からの反響も

プレースマットには燕三条の地図と企業の名前が紹介されている

Bitは地元の利用者に加えて、燕三条地域と同様に観光客が多い。特に近年は燕三条の多くの企業が産業観光化に取り組んでいることから海外からのインバウンドも多いようだ。

「(燕三条産の食器などは)本来であれば都市部の百貨店などで売りに出されるが、当店では実際に体験できるのが良いところだと思う。(百貨店では)玉川堂の製品でビールを飲むことなんてできない。特に飲食店は老若男女来るので、広い層に一撃で燕三条のものづくりを知ってもらうことができる」(秋山代表)。

燕三条店にはプロジェクションマッピングにより新潟の自然や燕三条のものづくりの現場を楽しめる「5Dルーム」も用意されている

飲食店ならではの客層の広さと、燕三条のプロダクトを肌で触れる体験は、作り手たちが本来ターゲットとしていなかった客層や、あまりものづくりに興味のなかった地元の人たちが燕三条企業へ目を向ける機会を創出している。秋山氏によると、コロナ禍以前にはBit来店への来店を契機に玉川堂のオープンファクトリーへ向かった人も非常に多かったという。

協賛企業からの評価も高い。商品のアピールになっていることはもちろんだが、食器や調理器具を製作した社員が、実際に使われている現場を見ることができる、という点にも反響があるようだ。

 

後進を育てること

bit燕三条店の様子

燕三条企業との繋がりが注目されることが多いBitだが、自社の社員教育にも力を入れている。一般的に連休が取りづらいとされている飲食店業界であるが、Bitでは社員の教育も兼ねて県外・海外へ行くことを推奨し、店自体を休業して従業員に長期休暇を与えたり、資金の補助も行っている。

こうした取り組みを秋山代表は「自分1人で発想したり課題を挙げても、それを従業員と共有できなければしょうがないと考えている。世界の素晴らしいモノを見たり、一流のサービスを受けて経験を積んでもらいたいし、『研修をしたい』と言われれば海外のレストランへ行ってもらう。みんなで意識を合わせて店を考えていくことが大事」と説明する。

現在、Bitの従業員は新潟県外からも集まっている。秋山代表は、労働環境の面でネガティブなイメージの大きい飲食業界自体の変化も目標の1つに掲げていた。

 

産業観光地化を進めるこれからの燕三条

エントランスには燕三条のプロダクトが並ぶ

秋山代表は燕三条という土地とプロダクトを発信する上で、Bitを遠隔地へ出店することに重要性を感じていると話す。そして現在、Bitは新潟伊勢丹への出店と、東京駅近くに現在建設中のビルのレストランとしてオープンする2つの計画が進んでいる。

さらに、2025年にはニューヨーク、その先にはロンドン、パリなどの世界都市への出店を秋山氏は目標としている。そこにあるのは経営的な視点ではなく、「燕三条の名を広める」というBitのミッションだ。

秋山代表は語る「(日本全体で)今後人口は減少していくし、地方には大都市への人材流出という課題もある。しかし、みんなこの燕三条に大切な人がいて、その人たちに10年後、20年後にどういう未来を残せるか、ということを弊社も含めたあらゆる企業が考えている。世界へ発信していくことが、この地域の未来へ繋がっていくことであり、我々が一生を通してやっていくこと。同時に、地域の未来を担う後輩たちを育てること、伝えていくこともやっていかなくてはいけない」。

燕三条を含め、伝統産業の継承は大きな問題となっている。しかし、後進の育成は地域の存続や活性にとっても同じ課題だ。Bitは、地場産業を伝えることに留まらず、先述の職場環境や従業員教育のように、人間的な面への注力にも意識を向けている。地場産業と飲食店──戦う場所は異なるが、同じ方向を見つめて地元・燕三条の未来を思考していた。(文:鈴木琢真)

 

【関連リンク】
燕三条イタリアンBit webサイト

【グーグルマップ Bit新潟店】

【グーグルマップ Bit燕三条店】

【グーグルマップ Bit銀座店】



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