新潟東港にロシア産牧草を輸入するプロジェクトが進行中

燻蒸施設の建設に向けた準備も始まる

試験栽培の農場(2016年)

比較的雨量の少ないロシア・ウラジオストク市の近郊に広がる土地に、牧草(チモシーなど)を植え、新潟に輸入しようというプロジェクトが実現に向けて前進している。このプロジェクトは6年前から協議が進められてきて、今年5月には日ロ当局間で輸入に関して合意書が締結。さらに、日本への輸入に不可欠な燻蒸施設の設置に向けて準備に入った。実現すれば、現在の輸入先であるアメリカや、カナダ産のチモシーと比べ、安価になることが予想され、県内畜産業の経営力アップにつながると期待されている。

日本の畜産業者が牧畜のために海外から輸入する牧草は年間180万トン。主な輸入先は、アメリカ、カナダ、オーストラリアであるが、価格はトン当たり6~8万円(農家渡しで)で、加えてアジア各地の需要が増えていることから価格は高騰する傾向にある。畜産業での経費のうち、55%は飼料代が占めるといわれ、輸入牧草の高騰が畜産農家の経営を圧迫している。

一方、ロシア極東地域では本格的に輸出用の牧草は未だ栽培していないが、本格栽培を始め、日本に輸入した場合、価格は新潟港渡しでトン当たり4~5万円と既存の輸入先より低価格になることが想定されている。「ロシア産牧草が輸入されれば、輸入先の分散化(リスク分散)とともに、コスト的にも日本の畜産業に大きな利益をもたらすと期待されています」(関係者)

しかし、2014年にロシア沿海で口蹄疫が発生し、日本への牧草の輸入が禁止されている。そこで3条件(※)を満たすことを前提に、輸入禁止を除外する2ヶ国間協定について日本・ロシア当局で交渉が進められ、今年5月に合意書の締結が行われた。

さらに、日ロで合弁会社を設立し、燻蒸施設を設置する準備も始まったという。会社には日本側に加え、ロシア・極東開発基金が2~4億ルーブル(1ルーブル=1・6円程度。27日16時現在)出資する予定。建設資金は、新潟の金融機関や、国際協力銀行(JBIC)の融資で調達したい意向だ。2年後の稼働を目指しているという。

一方、県が大口株主の会社である新潟国際海運が、新潟と極東ロシアを船で結び、対岸交流を活性化させようという「日本海横断航路」構想が進められていた。だが一昨年、船舶の購入を巡る売り手企業側との裁判で、県の出資金3億円の大半を喪失したことで頓挫してしまった。もし牧草の輸入が実現すれば、この横断航路の可能性も高まってくるという。

今後の動向に注目だ。

(※)協定の前提となる3条件
1)2ヶ国間協定の条件は、「現地での燻蒸(水蒸気80度以上で10分)」「牧草生育地の半径50km以内で3年間口蹄疫が発生していない」「燻蒸後に日本に着くまで密閉されている」ことが3条件である。
2)3つの条件の内、燻蒸のための施設については、現地に設置することになるが、事前に日本の農水省の認可(許可)が必要であり、実際には担当官が現地に設置される燻蒸施設を実地検分することになる。

2017年に試験的に新潟に輸入された牧草