【起源は縄文?江戸?】サメ食文化が根付く新潟県上越地域 サメバーガーを買いに東京から新潟県上越市に来る客も

新潟県上越市のサメ売り場

人喰いサメのハリウッド映画「ジョーズ」ではなく、逆に人間がサメを食す――。

知らない人には驚きかもしれないが、なんと新潟県上越地域では江戸時代からサメを食べていたという。これは実際に古文書に載っていることだ。

 

上越地方ではサメの皮が並ぶのが冬の風物詩

サメのにこごり

上越地方では、現在でも冬になるとサメの煮物や雑煮、サメの煮こごりなどが食べられている。サメの煮こごりは、サメの皮を煮込んで、醤油、生姜などを加えて、皮に含まれるゼラチン質を利用して型で冷やし固めるもの。上越地方では冬になると、スーパーの鮮魚売り場にサメの皮が並ぶのが風物詩となっている。

サメ食文化研究家の井部真理さん(新潟県上越市在住)によると、片貝縄文遺跡(新潟県上越市中郷区)では、人が食べたものか、装飾品かはわからないものの、サメの歯が発見された。また、縄文時代の釜蓋遺跡(新潟県上越市)には、サメに似たイラストが発見された。ただし、イラストが全体像ではなく、一部分だったため、学者や学芸員もサメとは断定できなかった。しかし、青森県では縄文遺跡からサメの骨が発見されており、井部さんは「上越地域でも縄文時代から食べられていたのではないか」と推測する。

郷土食(明治より前から食されている)として食べられている場所としては、青森・秋田県、新潟県、栃木・茨城県、大阪府、三重・和歌山県、島根・広島県、愛媛県、大分県の一部の地域(新潟県でも上越地域のような感じ)で、おおよそ8地域ほどになる。北は青森から南は九州まで比較的全国的に食べられているが、山間地が多い傾向がある。サメは尿素を体内に溜め込んでおり、日が経つとアンモニアとなって、腐りにくく保存がきくため、海なし県の山間部などでは、貴重な魚のタンパク源として重宝されてきた。

 

高田藩の財政危機を救ったサメ

サメのセリの様子

一方、上越市では、江戸時代に高田藩があったが、第8代将軍・徳川吉宗による享保の改革の新田開発で強引に治水したことなどが影響して洪水が多発、約10年間、大飢饉の時代があった。

1756年発行の寺泊の医師が書いた書籍「越後名寄(なより)」によると、1742年には水害、1743年には洪水の影響で秋の収穫が激減した。1744年には大雪、1751年には宝暦高田の大地震と続き、高田藩は長年財政難に苦しむことになった。

また、江戸時代日本は鎖国しており、貿易は長崎の出島でしかできなかったわけだが、そこで日本は中国などから絹などを買っていた。日本は金や銀で支払っていたが、幕府は金や銀の外部流出を防ぐため、乾燥したアワビやナマコ、フカヒレで物々交換をしていたという。

その中で、サメの食文化が根付いていた高田藩に白羽の矢が立った。高田藩は財政を支えるために、ネズミサメからフカヒレから取っていたと言われ、残った肉が高田藩内で流通したとも考えられている。まさに高田藩の危機を救ったのはサメであるとも言えるのである。高田城は別名、鮫ケ城と呼ばれており、その別名は平城のため、穴を掘って築城する際に大量のサメの骨が出てきたことに由来しているという。

 

「サメは上越市の通年観光の要になる」

サメバーガー

無印良品のサメたれカツ丼

井部さんは「全国的にもトップクラスのサメ食文化の歴史がある上越では、ヒーロー的な存在のサメですが、ぜひ上越にサメを食べに来てもらいです」と話している。

上越市のパン店「ソフィー」では、サメフライを挟んだサメバーガーを販売しているが、週末になると東京や大阪、北陸などから客が買いに来るという。また、上越市の「無印良品」の食堂では、サメのタレかつ丼が人気のため期間限定メニューから通年メニューに入ったほか、上越市立水族館「うみがたり」のレストランでは、サメのナゲットやサメのパニーニ(イタリア料理の温かいサンドイッチ)を提供している。現在1番サメを目的に食べに来ている客が多いのが無印良品だという。

さらに、有限会社西沢珍味販売(上越市)では、「鮫のワインづけ」、「鮫の清酒づけ」を販売しており、井部さんは「『ソフィー』のサメバーガーは県外からお客さんが来ており、すでに観光になっています。サメは上越市が推進する通年観光の素材の要になると思います。西沢珍味や魚住かまぼこのサメかまぼこもお土産にしてもらいたい」と話していた。

意外と上越の近海でも獲れるというサメ。顔がネズミに似ていることから名付けられたネズミザメを主に食す上越地域だが、通年でサメの煮付けやフライが食卓に並ぶほか、通年でスーパーマーケットや魚屋さんにサメの切身が並んでいる。もしかしたら、サメ食文化は遥か遠い古代からのDNAに組みこまれているのかもしれない。

サメ食文化研究家の井部真理さん

キッチンカーと井部さん

(文・梅川康輝)

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