億り人を超える投資コラム第6回~東京電力HD株の動きから新潟県知事選の結果と将来を予想してみた~(個人投資家 元財務官僚・元衆議院議員 石﨑徹)


こんにちは。さて、本日は新潟県知事選の投開票日です。投資家としての立場からも今回の選挙戦をウォッチしておりました。まさに、争点となっている東京電力新潟県柏崎刈羽原発の再稼働の行方を左右するのがこの新潟県知事選であります。

これまでのコラムにも書きましたとおり、株式市場は将来を織り込むものです。数か月間の東京電力HD(9501)の株価推移から見てみましょう。

東京電力HD株価チャート図

このように、3月中旬の安値319円から選挙投開票直前の5月27日(金)終値500円まで約1.56倍に上昇しております。この間、ロシアのウクライナ侵略に起因する国際的な原油・エネルギー価格の上昇による原発再稼働期待や、岸田首相による原発再稼働前向き発言により、東京電力の財務基盤改善期待が高まってきたことも株価上昇の要因とも言えるでしょう。

ただ、世界最大とも言われる柏崎刈羽原発の立地県の知事選において、「原発再稼働賛成か反対か」という争点が加わるのは当然であり、他に重要な争点も当然あるものの、株式市場が特に東京電力株の行く末において注目していたのは、「原発再稼働に賛成・反対どちらの新潟県知事が当選するか」という点でした。

各種世論調査は新潟日報社が中盤戦に発表した「現職優位」といったものから大小様々ありましたが、既に選挙前から現職有利というのは完全に織り込まれていたため、上記のチャートのように選挙戦が始まるとむしろ株価は少し下落・横這いでした。

原発再稼働反対の野党系候補の勢いがついて、どちらに転ぶか分からない状況であった場合にはここまでの株価上昇とはならなかったはずです。選挙というのは4年に1度。反対候補が誕生したら少なくとも再稼働の実行は4年間遠のくわけですから、東電の財務基盤の脆弱化によって将来利益予想が下がり、株価も下落となるわけです。

今回の新潟県知事選は、柏崎刈羽原発に働く電力関連の組合員の意向もあり、連合新潟は現職を応援しました。前回の知事選では連合新潟は原発再稼働反対の候補を全面的に応援したわけですから、180度の転換です。連合新潟の会長の選挙演説を見ても、かなり激烈な応援演説でありました。これは、電力労組の訴えを代弁したものと考えると、再稼働が組合員の生活にとって死活的に重要なものであることの表れと言えるでしょう。

裏返してみれば、東電の状況が大変な状況であることの証左です。福島原発事故の影響で多額の賠償金がのしかかり、柏崎刈羽原発でも度重なる不祥事によって、再稼働が進められない状況が続いてきました。組合員以外の東京電力社員の応援は大きいものがありました。新潟の組合員のみならず、東電全体の将来を左右する選挙戦であったことは間違いないです。

直近では東電は増収増益を発表したものの、上述の資源高、新電力との競争激化、顧客数も人口減なども含めて伸び悩んでいます。今後も2030年度までに9兆円以上を脱炭素分野に投じる予定とのことですが、こちらも日本勢のみならず海外勢との競争激化が予想されます。

また、現職が再選された場合、県民の同意を得て再稼働する、とのことですがどのように同意を取るか、任期中に再稼働決定及び実行が行われる確証はありません。極めて不透明感が漂う中、積極的な東電株の買いに繋がるといえば難しい状況が続きそうです。

福島第一原発事故の対策費のうち約11兆円が電気料金や税金として支払うスキームになっています。世論の厳しい目もあり、株主への配当金は無配が続いております。東電の大株主は以下のとおり、国の機構や東京都も含まれていますが、民間金融機関も含めて60%を超えています。株の値上がり益(キャピタルゲイン)狙いの投資家にとって、不確実性が高く、また国民負担のもとで支えられている企業としての投資魅力が今後高まるかというのも注目点です。

東京電力HDの大株主

再稼働に向けては、知事選の投票率が50%を超えるかも重要な指標となりそうです。再稼働の住民投票は行われない可能性が高そうですが、その分今回の知事選の投票率の重みも大きくなります。新潟県民は本当に再稼働を望んでいるのかどうか、市場も留意し続けなければならないでしょう。

今日の20時以降に投票結果は判明しますが、お時間がおありの方には3.11より更に前に作られた役所広司さん主演映画の「東京原発」を観られることをお勧めします。ネタバレしないようにお伝えすると、「シンゴジラ」を彷彿とする役所の意思決定のシニカルな面、コジェネ・再エネの在り方、小型原子炉の在り方、立地自治体への支援策、テロ対策など現時点でも考えさせられる映画です。

このコラムの結論は、東京電力HDの株価には原発再稼働推進期待が織り込まれているが、今後は不透明感が続くため、投資判断としては「中立」。また、投資家というより、一人の国民として原発をどう考えるかは、ウクライナ情勢の今後も見据えつつ、福島原発の教訓を踏まえながら、「東京原発」を観てご判断してはいかがでしょうか。
(なお、U-NEXT配信の「チェルノブイリ」という海外ドラマもかなりお勧めです。)

東京原発のポスター画像

 

石﨑徹

石﨑徹
元衆議院議員 個人投資家。新潟市生まれ。38歳。財務省職員を経て、2012年衆院初当選。3期務め、投資会社であるT.I.J株式会社を設立。日々世界中の市場をウォッチしながら投資活動を政治活動の傍ら続けている。時事テーマにも切り込むYoutube番組「落選党」も主催


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