【キシャメシ】令和の今、あらためておもだかや(新潟市中央区)の志那そばを味わう

元祖志那そば おもだかや女池店
グルメリポートなどで見る「〇〇のソウルフード」みたいな手垢まみれのフレーズは、あまり好きではない。「言うほどソウルフードか」と思ってしまう。特にラーメンとかカレーに対して日本人が「ソウルフード」というのは、ちょっと違う気がする。
ただね、ソウルフードと言わないまでも「新潟人の遺伝子に刷り込まれているのでは」というような味は確かにある。元祖志那そば・おもだかやなんかは、きっとそれじゃないかと思う。
今は東区竹尾、中央区女池、秋葉区くらいしか思いつかないが、30年ほど前は新潟市エリアで最も勢いのあるラーメンチェーンだった(と思う)。それこそ東京都内にも進出していた。記者も食べる機会が多かった。
一方で生まれ育ちが北海道の記者はずっと、「なんで新潟の人はおもだかやのラーメンが好きなのか」とは思っていた。失礼な言い方だが、札幌ラーメンのパンチ力に慣れていた記者は、まるで「始祖のラーメン」のような志那そばの味を「没個性」と感じていたのかもしれない。
今回、実に久しぶりにおもだかやの「志那そば」を食べようと思う。おそらく10年は間があるだろう。向かったのは「元祖志那そば・おもだかや女池店」。

値段こそ時代を反映したものになっているが、メニュー構成はほぼ昔のままか
おもだかやとえばヘビーユーザーには回数券がおなじみだが、10年ぶりの記者は券売機(今やおもだかやも券売機で購入。メニュー構成も昔と変わっていないような気がする。「ワンタンそば」と迷ったが野菜たっぷりの「おもだかそば」(税込1,000円)をオーダー。
カウンター席に座り、食券を出してから周囲を見渡す。昼前だが順番待ちがいる。今も愛されている、おもだかやの志那そば。客層は8割が男性。サラリーマン多め。年齢層は一般のラーメン店より少し高めか。カウンターの向こうで作業しているのは若手の男性とベテラン女性×3。計4人がかなりのハードワークになるほど店は混んでいる。

「おもだかそば」(税込1,000円)
そうこうしているうちに着丼。例によって「すり鉢」の丼はデカい。ビジュアルを目の当たりにし、懐かしさを覚える。
まずスープひと口。ああ、わかるわぁ。

透き通ってはいないが、脂っこさはない。でもコクがある。
新潟の人はどう思っているか知らないが、おもだかやはそんなに「新潟あっさり醤油」ではない。もちろんしつこいほどこってりしているわけでもないし、家系ラーメンのようにご飯がすすむほどしょっぱいわけでもない。ただ、旨味の柱がどっしりしていると思う。豚骨+鯖節やにぼしなど魚介+椎茸や野菜の旨味。コク深い。醤油味も尖りなく、優しい味かと思いきや、旨味は相当に分厚い。
脂っこいところはなく、そこに作り込みの丁寧さを感じる。旨味が複雑に重なっているのに、いやな味がしない。若いころは「こういう凄さ」に気づけなかった。ラーメンとしてのバランスが素晴らしい。

麺は柔らかめだがグダってはいない。むしろスープによく合う
麺は最近の傾向から言えば細めではあるが、極細ではない。柔らかめだが逆にスープと相性が良い。特徴的な具はわかめ。茎わかめも入るのがおもだかやスタイルで、これが食感に絶妙なアクセントをもたらす。メンマ(この場合、志那竹と言った方が良いのか)も柔らかめで美味い。

この「茎わかめ」が入っているのがおもだかやスタイル

このチャーシュー、マジで美味い。ここ数年食べた中で最高のチャーシュー
特筆したいのはチャーシューだが、お世辞抜きにここ最近食べたチャーシューで一番うまい。トロトタイプではなく、赤身の旨味をしっかり堪能できる肉々しさ。味が染みていて、見た目を超えて柔らかく、ちょっと感動した。
ほぼスープを飲み干さんまでに完食。満足した。なんか、新潟のおじさんたちが、この味から離れられない理由が分かった気がする。思わず「おもだかや!」と歌舞伎風の掛け声のひとつもかけたくなる。「澤瀉屋」(おもだかや)は、ご存じ市川猿之助の屋号だ。
(編集部I)
【元祖志那そば おもだかや女池店】
新潟市中央区女池1794
営業時間 11:15~19:30
定休日 不定休
<グーグルマップより>