【特集】株式会社熊谷営業、喜藤武琉さん「オーダーメイドのパッケージを、全国展開するコンビニの店頭に!」新潟食料農業大学卒業生を追う

喜藤武琉さんは新潟市出身。新潟食料農業大学食料産業学部フードコース卒業。現在は株式会社熊谷CVSグループで営業マンとして活躍中
コンビニで普段よく目にするお惣菜やパックごはんのパッケージの中に、実は新潟で開発・生産されているものがあることをご存知だろうか?プラスチックパッケージメーカーの株式会社熊谷(新潟市中央区)新卒入社3年目の喜藤武琉(きとうたける)さんは、大手コンビニエンスストアの商品に採用されるべく、機能性に優れたオーダーメイドのパッケージ提案に奔走する営業マンだ。
新潟食料農業大学(以下食農大)(胎内市)食料産業学部フードコースで、企業と共同で魚のすり身の研究に取り組んでいた喜藤さんが、一見別業界とも思えるパッケージ業界へ。一体、そこに現在の活躍につながるどんな秘密があるのか、学びと興味がリンクし飛び込んだ食品業界への思いと仕事に迫る。

喜藤さんが進行役を務める、所属するCVSグループの朝礼の様子
入社3年目にして大手コンビニエンスストアを一人で担当

株式会社熊谷の研究開発センター(新潟市江南区)
「うちの強みは製品のサイズの豊富さと機能性の高さです。一番すごいところはここの蒸気口で…」喜藤武琉さんが熱を込めて説明するように、株式会社熊谷は顧客の要望に応えるオーダーメイドで機能的なパッケージ開発を得意としているパッケージメーカーだ。
米袋や冷凍食品、電子レンジ向け商品などの食品包装を中心に、デザイン性、機能性、保存性など商品に高い付加価値を与えるパッケージを企画し、食品メーカーを中心に全国に展開している。

「パックを採用していただいた商品を店頭で購入して、家で食べてお客様に感想をお伝えすると喜んでいただけるのが嬉しいですね」と話す喜藤さん
その熊谷で大手コンビニエンスストアを担当しているのが喜藤さんだ。若手中心のCVSグループと呼ばれるコンビニエンスストア向けの営業を行う部署に所属しており、毎週東京へ出張して卸売事業者との打ち合わせや、新潟市内にある研究開発センターとの相談に奔走している。

熊谷が手がけているパッケージ一例
流暢に、そして想いを込めてパッケージについて説明してくれる喜藤さんだが、最初からこうできたわけではない。「入社して最初はHRプロジェクトという部署で、1年間開発商品について学んで現場に出つつ、24年度からCVSグループに兼務となり本格的に営業の現場に出ることになりました。その時は、正直なんでもできる気でいましたが、いざお客様の前に出たら頭が真っ白になって、全くしゃべれなくて…」と1年前の自分の姿を振り返る。

喜藤さんの上司にあたるCVSグループのチームリーダー川村亮太さん(写真右)
そんな悩めるルーキーを救ったのが、上司の存在だった。CVSグループのチームリーダー川村亮太さんは「配属当初から仕事にとても積極的で、でも自信のなさが気になっていました。大学で学んだ食品の専門知識やHRプロジェクトでの知識が十分あるはず。もっと自信を持ったら、とはよく声をかけていましたね」と語るが、それだけに留まらず、電話や対面で営業のロールプレイングの相手役も買って出てくれたそう。その結果、喜藤さんは今では一人で顧客対応ができるまでに成長した。
大学で食への関心が急上昇!鍛えられた学びの基礎と専門分野の知識
川村さんが指摘したように、喜藤さんは2019年から4年間食料産業について総合的に学べる新潟食料農業大学で学んだわけだが、入学当時の喜藤さんは実はそこまで食品に関心が高いわけではなかった。
漠然と生物関係の仕事を目指して進学したところ、実習で実際に手を動かしながら学ぶ面白さを知り、2年次にアグリ・フード・ビジネスの3コースから選ぶ際に、フードコースに進むことにした。
「非常に印象的だったのが低温調理でローストビーフを作る授業です。それが驚くほど柔らかくてジューシーでおいしくて。自宅ではできない、実験設備を使った手法と専門的な学びにとても感動しました。食農大に入ったことで食べることが好きになりました」(喜藤さん)

阿部周司先生は、魚肉タンパクの研究一家出身。曽祖父は冷凍すり身の産業化に世界で初めて成功した第一人者。「すごく熱心に指導してくださって、具体的な勉強のアドバイスも含めて先生の熱意が自分の力になっていた実感があります」(喜藤さん)
深まる食への興味と共に、喜藤さんの学びを刺激したのが“魚愛”だ。食農大の魅力に「そばに海や川があること」を挙げ、授業の前後・合間には魚釣りに勤しみ、ゼミも魚のすり身を研究する講師・阿部周司先生のゼミに参加。未利用魚の活用をテーマに、企業との共同研究を行っていた。

冷凍の魚のすり身を仕入れて研究に使用。専用の冷凍庫には複数のすり身が保管されていた。

新潟食料農業大学の「食品化学実験室」には、食品関連の検査に使用する実験装置が多数。使いこなすには技術が問われるという。
喜藤さんのことを「勉強ができる子だった」と回想する阿部先生は、食品加工学の中でも特にかまぼこに代表されるような魚肉タンパク質についての研究を専門としている。だが、専門分野の指導以上に、大切にしているのが「物理」だ。
「『なぜその事象が起きているのか』『なぜその開発ができたのか』その根本を深掘る思考は物理の世界です。そのベースがあるからこそ開発ができる。物事の本質を捉え、自分の言葉で説明できる力を育てています」(阿部先生)

食農大胎内キャンパスのL棟ラウンジからは日本海を一望することができる。「海や川で魚釣りはもちろん、友達と花火もしたし、阿部先生のところに釣果を持って行ったり燻製パーティをしたこともあります」(喜藤さん)
新人だけど、高いアドバンテージ。大学の学びは業界の“共通言語”
充実した大学生活を経て、就職活動を意識したときに喜藤さんが大切にしたのが「自分で発明をしたい」「営業をしてみたい」の2軸だった。そんな時に大学から紹介されたのが熊谷。未経験からすぐの開発は難しくても将来的に可能性があること、そして何よりもインターンシップでの社長との出会いが入社の決め手になった。
「会社のビジョンに夢があり、またまずは営業の仕事を通して世の中のニーズを学んでから開発に挑戦してみることを勧められたことが、僕の胸に刺さりました」(喜藤さん)
この選択を「すごくいい着眼点で就職したと思います。パッケージは食品の知識だけでも包装構造の知識だけでもだめ。両方がわかっているからこそ活躍できるのでしょう」と阿部先生も絶賛する。
喜藤さんも「大学で食品について学んだことがダイレクトに生きている部分は多いと思います。食品を取り扱う企業へ訪問することが多いので、例えば殺菌温度や光の影響など、食品業界ならではの前提の話がスムーズにできて、商品提案もしやすいですね」と、学びを社会で活躍する確かな力へと変えている。
手応えのあるハードルを乗り越えて、目指すは前例のない活躍

食農大で食べることが好きになった喜藤さん。料理も好きになり、毎日お弁当を持参している。川村さん曰く、喜藤さんはチーム内では「いじられキャラ」とのこと
喜藤さんが現在担当している大手コンビニエンスストアは、元々は川村さんが担当していたクライアントだった。喜藤さんに引き継がれてからも取引件数は伸びており、「3年目でここまでできるようになるとは、簡単なことではありません。これからも持ち前の挑戦する姿勢を大事にしていってほしいですね」と川村さんも頼もしさを感じている。
3年目となり仕事のやりがいも手がける規模も大きくなる一方の喜藤さん。「今年の3〜4月は依頼のフィーバーで(笑)大変でしたが、相談してもらえることは嬉しいし、応えられるよう頑張った結果、『対応してくれてありがとう』『喜藤さんならなんとかしてくれると思って』と、最近特にそう言葉をかけてくださるお客様が増えました。あの時頑張ってよかったです」

研究開発センターで、研究員で同期の塩原栞さん(写真右)にクライアントの要望に合うパッケージを相談する喜藤さん
取引先だけではなく、自社の研究開発センターにも頻繁に足を運び、お客様の要望を研究者に伝えながら、実現に向けて手間を惜しまない喜藤さん。その姿に「仕事の現場でも、『なぜできるか』『どうやったらできるか』の根本まで深掘りしているんですね、よかった。ちゃんと科学的根拠を持って説明してくれる担当者だと信頼できますよね」と阿部先生は教え子の活躍に目尻が下がる。
営業としての成長著しい喜藤さんだが「将来は自分が開発したものを売り込みに行く、そういった部署はありませんが、そんな仕事にも挑戦したいですね」と、見据えるゴールはまだまだ先だ。
好きなこと、興味があることが自然とつながり、だんだんと大きなスパイラルを描くようにキャリアを歩んでいっている喜藤さん。その先にどんな未来が広がっているのか、可能性を自分の力で広げていっている。
【学校情報】

新潟食料農業大学 胎内キャンパス(新潟県胎内市)
学校法人 新潟総合学園 新潟食料農業大学
胎内キャンパス(新潟県胎内市平根台2416)
新潟キャンパス(新潟市北区島見町940)
新潟食料農業大学は、食・農・ビジネスに特化した実学重視の大学として、2018(平成30)年に開学した私立大学。開学以来、「食のジェネラリストの育成」を掲げ、農業生産から食品加工・流通・販売、さらには経営戦略までを一貫して学べる教育カリキュラムを展開。実習を重視した教育方針により、地域農業や食品関連企業との連携も活発で、新潟県内外の食料産業界に即戦力となる人材を輩出している。
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