「殺処分される馬の命を救いたい」新潟県胎内市の養老牧場、NPO法人 松原ステーブルス


(写真左から)松原ステーブルス厩務手伝いの佐川さんと角田さん、馬のミキティ、場長の松原正文さん、企画運営の明星泰崇さん

出生数約5000頭、殺処分数約7000頭。この数は、日本国内における馬の1年間の出生数と殺処分数である。普段テレビなどで何気なく見かける競馬の世界では、出走する競走馬の99%が殺処分されているという事実がある。

競走馬として育てられた馬の一部が競走馬としてデビューし、その中からほんの一握りの馬が引退後に種馬として生き残ることができるが、それ以外の馬たちは殺処分という道しか残されていない。 乗馬用に再調教されて生き残ることができる馬もいるが、これらはごく一部で、乗馬用・繁殖用の馬たちも年老いてしまえば同じく殺処分という道が待っている。

そのような背景がある中で、新潟県内で唯一の養老牧場であるNPO法人 松原ステーブルス(胎内市)では、「殺処分される馬の命を救う」という理念のもと、2005年から行き場が無くなってしまった馬の保護を行っている。

松原さんと馬のミキティ

同牧場の場長である松原正文さんは、北海道出身。幼少期から馬と触れ合う機会が多かったことや縁もあり16歳の時に新潟競馬の騎手となった。騎手を引退後、調教師を経て松原ステーブルスを立ち上げた。人生のほとんどを馬とともに過ごしてきた松原さんは、馬への感謝の気持ちや、「一頭でも多くの引退競走馬が寿命を全うできるように」という一心で、これまで15年もの間、松原ステーブルスを運営してきたという。

松原ステーブルスでは、牧場見学・体験乗馬や、各種施設へのボランティア訪問を行っている。馬と触れ合える体験乗馬には1回500円の「ワンコインコース」、1回3,000円の「森林外周コース」があり、馬との触れ合いを通して「馬を好きになってもらうこと」に取り組んでいる。

また、ボランティア訪問では地域の介護施設などを松原ステーブルスのミニチュアホースなどが訪問を行う。普段触れ合えない動物とのふれあいで、大きな生き物の感触やあたたかさが施設利用者の心を癒しているという。

体験乗馬などの収益や会員の支援などが松原ステーブルス運営の資金となっているが、このふれあい体験や乗馬体験は気軽に体験できるように格安で提供していたこともあり、メインの収入源とはならず、必要最低限の経費で運営しているのが現状であった。

そこで、馬の飼育を通した命の教育などを中心とした豊かで個性的な教育体験の「粟島 しおかぜ留学(※)」(新潟県粟島浦村)の運営に携わっていた明星泰崇さんが企画運営として松原ステーブルスに加わり、牧場の存続や事業をさらに推し進めるためにNPO法人を立ち上げ、今年5月にクラウドファンディングサイトにて支援プロジェクトを実施。その結果、目標金額350万のところ、450万円と大幅に目標を超える支援が寄せられた。集まった資金は、設備や運営費に使用するほか、今後の事業展開にも使用していくという。

明星さんに甘える寒立馬のハナ。県外の牧場で間引きに遭い、食用として市場に売られそうになっているところを引き取られた

一方、松原ステーブルスが所在する周辺の地域では住民の高齢化が進んでおり、空き家なども多く存在する。松原ステーブルスはその空き家を借り、今年から新規事業「うま友留学」を開始した。うま友留学では、「馬の教育的な価値」を子どもたちや社会的に困っている人(引きこもりや不登校など)に提供し、馬のいる環境と馬との暮らしそのものを学びとして、心と体の健やかな成長を促す。食事付きで一泊3,000円程度(日帰りも可能)と、気軽に留学に参加できるのも魅力だ。

騎手と調教師、両方の経験がある松原さんは、「騎手や調教師に興味のある子どもがうま友留学に来てくれた時には何かしらの形で協力できると思う。知り合いの力も借りて夢をサポートをできれば」と話す。加えて、「今後やりたいと思っているのが馬と住める村をつくるということ。耕作放棄地を活用して馬を放牧し、空き家は宿泊施設にする。そういう村をつくることで一つの観光地にもなるのではないかなと思う」と今後の展望を明かしていた。

さらに、明星さんは「馬と住める村はもちろん、ここで生まれた馬を子どもたちや様々な方達と共に競争馬として育て、活躍してもらい、その後はここ(牧場)に帰ってきて育った地で生涯を終える。こういったことができれば競走馬の問題を少しは解決できるんじゃないかなと思い、長期的な計画として考えている。この2つのビジネスプランにより子供たちの教育につながったり、一つの雇用を生み出したりだとか、『馬の価値』を提供できればと思う」と話していた。

松原ステーブルスでは現在、会員や「うま友留学」の参加者を募集している。うま友留学については体験留学も受け付けている。このほか、支援の募集も行っているため、松原ステーブルスの活動に共感し、「支援をしたい」という人や興味のある人は、公式ホームページにて詳細を確認してほしい。

牧場内の様子

のびのびと過ごす馬たち。場内はゆったりとした時間が流れている

(※)しおかぜ留学・・・粟島浦小中学校に入学または転校を希望する児童・生徒を「しおかぜ留学」という形で受け入れ、島民との交流、馬の飼育を通した命の教育などを中心とした豊かで個性的な教育体験をもとに、島の子どもたちと「しおかぜ留学」の子どもたちとが共に社会を生み出し、社会に貢献する人となることを目的としている。

【関連リンク】
松原ステーブルス 公式ホームページ
https://matsubarastables.webnode.jp/

【Googleマップ】
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