【渾身食レポ】加島屋本店にオープンした「おにぎり処 八番」、寿司・鰻と同レベルで語られるべきおにぎり

「新潟の美食の殿堂」の名にふさわしい加島屋ブランド。その新潟加島屋本店(新潟市中央区)2階に「おにぎり処 八番」が7月26日にオープン。同23日には報道関係者に向けたプレオープンイベントが開催された。

コロナ明けから2年ほど経つが、おにぎり専門店の人気は日本全国を席巻しており、特にインバウンド客からの絶大な支持を得ている。さらに、日本でおにぎりを食べた観光旅行者が母国におにぎり文化を持ち帰るケースも多く、海外への伝播も目立つ。今やおにぎりは英語でも「Rice ball」ではなく「Onigiri」と表記されることの方が多い。米ロサンゼルス街頭の公園には「Onigiri 」のキッチンカーが出店し、日本円にして800円ほどのおにぎりに行列ができるという。

加島屋本店2階の「おにぎり処 八番」

日本ではおにぎりと言えば庶民の携行食だが、最高の素材と熟練の「にぎり」の技術がクロスオーバーした「料理」であるなら、寿司や鰻と同等に語られるべきものに昇華するのではないか。

2年前に大型リニューアルを施した加島屋本店は、まさにお中元商戦のただなかで大忙し。

「おにぎり処 八番」はコロナ禍前まで開業し好評を博していた「茶屋 長作」の跡地にオープンとなった。

2階は「加島屋ミュージアム」になっており興味深い

2階に上がると、そこは加島屋の歴史や文化に触れるちょっとしたミュージアムになっている。食べる前に、それにまつわる蘊蓄(うんちく)に触れることで、食事の味は数段上昇する。

券売機では29種のおにぎり(320円~680円)の中から好きなもの選び、サイドメニュー(味噌汁+小鉢)と組み合わせる。味噌汁は一般的な赤だしセット(320円)と鮭の味噌汁セット(420円)の2種類。

オーソドックスなものから創作系まで、おにぎりが実に29種

さて、おにぎりだが、これがかなり迷うところ。なにせ加島屋が吟味した「具」を使っているわけだから素材は一流に違いない。となればオーソドックスなスタイルが良いに違いない。いや「クリームチーズおかか」や「卵黄醤油漬け」など創作系にもかなりそそられる。最終的に記者が選んだのは、加島屋の看板商品「さけ茶漬け」と同じカナダ・バンクーバー島入り江に生息するキングサーモンを使用した「鮭焼きほぐし」(450円)と「明太マヨ クリームチーズ」(480円)に鮭の味噌汁セットをプラスした。

聞いたところ、ご飯は新潟県産コシヒカリを使用。このご時世、県産のコシヒカリによるおにぎり、それだけでごちそうなのに、「加島屋の具」が入るなんて!しかも握るのは、東京の有名店で修業をした専門の職人なのだという。期待し過ぎるなという方が無理だ。

ややあって着膳。文句のつけようがない完成されたビジュアル。三角おにぎりは「普通サイズ」だとかなり大ぶりに見える。小鉢は茶碗蒸しだ。これで1,350円なら、間違いなく人気が出る。観光客は大喜びするはずだ。

「さけ茶漬け」と同じカナダ・バンクーバー島入り江のキングサーモンを使用した逸品

さっそく実食。まずは「鮭焼きほぐし」から。おにぎりをほおばると、炊き立てコシヒカリの得も言われぬ香り。そして鮭(キングサーモン)の堂々たる存在感。はっきりわかる、あの「さけ茶漬け」の質感。豊潤でしなやか。抜群の素材の良さに創業者・加島長八が独自に編み出した熟成法と焼きの技術。さらに「焼鮭と米」という何物にも超えられないコラボレーション。至高である。

「明太マヨクリームチーズ」誰かが言ったが、明太マヨに合わない食材は存在しないそうだ

一方で創作系から「明太マヨ クリームチーズ」はいかがか。これはまた、良い。クリームチーズのおにぎりは以前にも食べたことがあり、今やブームになっているが、素材が抜群に良い。炊き立てコシヒカリと最高に合う。

言い忘れていたが、やはり「握り」の技術は素晴らしい。ぎゅっと押し詰まっている感はなく、ほおばると口の中ではらりと崩れる絶妙な加減。そのたびにコシヒカリのふくよかな香りが立ち上り、官能的ですらある。日本人に生まれてよかった。

この「鮭の味噌汁」にもキングサーモン使用

鮭の味噌汁、これも素晴らしい出来。惜しげもなくカナダ産のキングサーモンが使われている。「おにぎり」と「味噌汁」これほど日本人の心を投影した献立にもかかわらず、使われているのが北洋のキングサーモンで、しかもそれが至高の美味さ。

何より、これだけ気軽に「あの加島屋」を堪能できるのだ。読者もぜひ一度、味わっていただきたい。

【新潟加島屋本店】

新潟市中央区東堀前通8番町1367

加島屋公式サイト

 

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