【記者ノート】ため池だよりの中山間地の稲作農家は、41日ぶりの″恵みの雨″に大喜び! 他の山間地でも60年を遡る前から用水組合をつくり、渇水を乗り越えている所も水利の立地の違いで

63日ぶりの降雨で、何とか出穂期の水に間に合った水田(牧区坪山の田んぼ)
上越市の東頚地域でため池頼りで稲作を続ける農家にとっては、7日深夜から降り出した41日ぶりの降雨が″恵みの雨″となった。牧区坪山で15㌶の水田で稲作を続ける中川卓夫さん(84)は「今日は夜寝むれないほどで、夜中に何度も何度も目を覚まし、真っ暗な中、田んぼを何度も見に行った。こんな嬉しいことはない。大事な出穂期前の水は、コメの出来に直結することから、どうしても水が欲しかった。根からの水だけでなく稲の葉に雨が当たることも大切だ。これから何日かは降って欲しいと願うばかりだ」と大喜びの様子だった。
と言うのも、農業用水の水源をため池だけに委ねる中山間地域では、「雨が降らないのはどれ程辛いことか」と中川さんは話す。これまでも渇水期には地域のため池、自身がつくったため池をフル活用し稲作を続けて来た。しかし、今年の夏は1か月半にも及ぶ46日間まとまった雨がなかったため、ため池はどこも水が枯渇してしまった。従って田んぼ全体にひび割れが広がり、中には葉が枯れ、薄茶色状態になってしまった稲もあり、牧区内のところによっては、今年の収穫を諦めた農家まで出て来た。中川さんも「一部ダメなところもないわけではないが、何とかギリギリ間に合った」と肩を撫でおろしている。

取材のこの日、市内のスーパーにどぶろくを届けた中川卓夫さんだが、「恵みの雨に感謝しかない」と話す
坪山よりずっと標高が高く、今年積雪が438㌢を記録した棚広新田集落の佐々木芳延さん(79)は「約60年前の私の祖父時代に、地域が用水組合をつくり、山の川と繋いでくれたお陰で、今年も何の水の心配がなく、先人の取組みに心から感謝している」と語る。しかし、近くに高い山と直結で繋がる立地であれば、ほぼ水枯れになることはないだろう。だが残念ながら、ため池に頼らざるを得ない地域も、特に上越の山間地には多くあり、今後の稲作を考えれば、高温少雨のための対策も喫緊の課題と言えよう。
さて、中川さんは約25年前から、どぶろく作りを始めた。地元上越地域だけでなく、全国に発送することも。更に長男とともに稲作、どぶろく作りのほか、一部樹木の伐採や運搬事業にもチャレンジし、中山間地でも生き残るための事業にも懸命に模索している。
竜哲樹
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。にいがた経済新聞社顧問。
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