「健康経営」は福利厚生ではなく“戦略”、中小企業が本気で向き合う時代へ 新潟経済同友会夏季セミナーでアイセック木村代表が講演

第30回新潟経済同友会夏季セミナー
新潟経済同友会は8月21日、恒例の夏季セミナーをホテルベルナティオ(新潟県十日町市)で開いた。第30回を迎えた今回は、企業経営者や関係者ら約40人が参加。第1部では、株式会社アイセック(新潟市中央区)の木村大地代表取締役が「経営戦略としての健康経営」をテーマに講演した。
アイセックは2019年に新潟大学医学部発のベンチャー第1号として創業され、ヘルスケアのビッグデータ分析から得た医学的エビデンスをもとに、地域の健康寿命延伸を目指したさまざまな事業を展開している。今年3月には新潟県から「令和7年度にいがたヘルスケアEBPM人材育成事業」の業務を受託し、職員向けに、科学的根拠に基づいた政策立案能力を育成する研修の運営を担っている。
木村氏は、自身の闘病経験や師との別れをきっかけに健康支援への関心を深めたと語り、「人は幸せになるために生まれてきたと思っている。幸せになるためには、健康が全てではないが、健康を害すると全てが出来なくなってしまうことを肌に感じている」と語った。健康経営は単なる福利厚生ではなく、「人材確保や離職率の低下、労働生産性の改善など、経営に直結する戦略」であると訴えた。

株式会社アイセックの木村大地代表取締役
講演では、アイセックが新潟大学などと共同開発した健康管理システムも紹介。従業員の健診データをリアルタイムに解析し、企業ごとに健康リスクを可視化する仕組みである。「企業規模にかかわらず導入可能」であり、導入企業ではプレゼンティズム(出勤しているが体調不良などで本来のパフォーマンスを発揮できない状態)の損失が月500万円削減された例もあるとのことで、定量的な効果が提示された。
講演後のインタビューで木村氏は、「健康経営という手段が経営に効果があり、必要な戦略であることを、新潟の経済界を牽引する企業の代表の方々にご理解頂き、今後中小企業の経営層に伝播していくことを想いながら、シンプルに根拠を添えてお伝えした。」と振り返った。
その上で、取り組んでいない企業への第一歩として「まずは申請書(※)を書いてみてほしい。何が不足しているかが明確になる」と具体的なアドバイスを送った。「同友会のネットワークを活用し、地域内での横の連携を図ることも大切」との意見も添えられた。

新潟経済同友会副代表幹事で、セコム上信越株式会社の野沢慎吾代表取締役会長

講演後に多くの参加者から質問や意見が相次いだ
一方、野沢慎吾副代表幹事(セコム上信越株式会社代表取締役会長)は、「社員の健康は業績に直結する。うちの警備業グループでも喫煙率などの課題があるが、健康経営の視点から改善を進めている。難しく考えず、木村さんのような専門家に相談すれば即実践できる」と語った。さらに、今回の講演が「県内企業が健康経営に一歩踏み出すきっかけになる」ことを期待した。
会場では参加者から質問や意見が相次ぎ、関心の高さがうかがえた。木村氏は、「1人の担当者に負担をかけるのではなく、組織全体で体制を構築することが成功の鍵」と、実践に向けた組織的な取り組みの重要性を強調した。
※申請書・・・経済産業省の「健康経営優良法人認定制度」の申請書を指している
関連サイト(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin_shinsei.html)
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