【従業員の健康は“投資”】新潟で「健康経営セミナー」開催、170人が学んだ最新動向とは

「にいがた健康経営セミナー」

新潟市西区で9月9日、「にいがた健康経営推進セミナー」が開かれた。企業経営者や人事担当者ら約170人が現地とオンラインで参加し、健康経営の最新動向や制度改正の内容を学んだ。

主催は新潟大学発ベンチャーの株式会社アイセック(新潟市中央区)。新潟県労働衛生医学協会ほか健康経営に取り組む企業らが共催し、新潟県や新潟県商工会議所連合会、新潟経済同友会などが後援した。

冒頭、新潟大学医学部の曽根博仁教授(アイセック取締役)は「健康経営は従業員の健康を通じて経営全体の力につながる。これからは実践とその有効性が求められる時代に入っている。新潟は全国をリードしていきたい」と呼び掛けた。

開会のあいさつをする株式会社アイセックの木村大地代表取締役CEO

セミナーは現地参加とオンライン参加のハイブリット形式で行われた

経済産業省の忠内美保係長は「少子高齢化の進行で生産年齢人口が減っており、今後も減少が見込まれる。だからこそ健康寿命を伸ばすことが重要だ」と強調。「従業員の健康への支出はコストではなく投資だ」と説明した。

産業医科大学の森晃爾教授(アイセック顧問)は「健康経営は人的資本経営の一部になろうとしている」と位置付けた上で、「健康経営優良法人は増えているが、中小企業はまだ0.5%台にとどまる」と現状を示した。そのうえで「成果を上げるには経営トップがリーダーシップを発揮し、体制をつくることが欠かせない」と述べ、「調査票の改訂には理由があり、単なる負担ではなく実践への動機付けとして理解して取り組んでほしい」と呼び掛けた。

また、永田智久准教授(産業医科大学、アイセック共同研究者)は「健康経営ガイドブック2025」について解説。「人と人とのつながりや組織風土はとても大切で、従業員やステークホルダーとの対話が必要だ」と語った。さらに「対話を通じて組織風土をつくることが人材確保にもつながる」とし、改訂版には人的資本や社会関係資本の考え方を盛り込み、情報開示やPDCAの重要性を明記したと説明した。

経済産業省の忠内美保係長はオンラインにて「健康経営の今後の展望」について解説した

永田智久准教授(産業医科大学、アイセック共同研究者)は「健康経営ガイドブック2025」について解説

後半の座談会では、県内企業が自社の実践事例を紹介した。

ブルボン(新潟県柏崎市)は2017年に健康経営を宣言。「従業員が亡くなったことがきっかけだった。その原因を考え、どう防ぐかという中で健康管理に本格的に取り組むようになった」と説明した。血圧管理などの重症化予防や夜勤者への支援を重点に据え、保健師による面談が効果を上げていることから社内スタッフを増員して対応を強化しているという。

第一建設工業は「社員への投資として人間ドックや婦人科検診、歯科検診の費用補助を行っている」と説明。2024年からは就業時間内の禁煙を導入し、生活習慣改善のため年2回のウォーキングラリーを開催しており、参加率は7~8割に上るという。

亀田製菓は全社員を対象に健康支援を進めている。経営層が積極的に関与し、トップが発信するメッセージを重視している点が特徴だという。このほか、BSNアイネット、第四北越銀行、群馬銀行、ウオロクの事例も紹介された。

セミナーを締めくくり、アイセックの木村大地代表は「健康経営は1社だけでなく地域全体で進めることが大切。今日の学びをそれぞれの職場に持ち帰り、実践につなげてもらいたい」と述べ、「新潟から全国に広がる動きにしたい」と語った。

質疑応答では健康経営に取り組む現場における具体的な課題にちなんだ質問があがった

健康経営に取り組んでいる企業7社が自社の実践事例を紹介した

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