【記者ノート】大島農機の大島大輔代表取締役社長、ミニ油圧ショベルは上越から世界へと大きく広がるチャンス
大島農機株式会社(新潟県上越市)は大正6年5月、『農家の幸せを創る』をモットーに、(現)新潟県上越市三和区で農機具(脱穀機)製造をスタートし、稲作農業者に寄り添いながら108年の歴史を刻んで来た。
この間脱穀機はじめ籾摺機、乾燥機、コンバイン等の農業機械製造販売において、パイオニアとして数々のヒット商品開発や技能伝承を間断なく進め、地場産業の発展に寄与してきた。41歳の若き社長は「100年以上に渡り、代々の経営者は無論のこと、当時の若き従業員達も何よりも農業機械の技術開発に『誇り』を持って取り組んで来てくれた」と胸を張った。
その後、乾燥調製作業のスピード化と自動化、お米の高品質仕上げなど厳しい過当競争が続いた。それでも絶えず農業機械業界をリードすべく、揺動選別式籾摺機や自動計量選別機など今までにない新しい農業機械開発を進めて来た。そんな中、これまで農業機械製造で培ってきた鉄板加工技術やコンバインの足回りの技術を活かせないだろうかと模索・検討して来た結果、平成2年ハニックス社との提携により海外一流メーカー(CAT)の小型建設機械分野への参入が実現することになった。
大島社長は当時のことを振り返り、「秋から冬に掛けての時期はどうしても工場内ラインは空きが出て来ていたことから、その間の稼働が求められる中で、我が社にとっては油圧ショベル等の建設機械製造は正直大きな救いとなった」と話している。平成22年からは日本国内向けの製造販売だけでなく、海外モデルの生産も始め、輸出も本格化し、直江津港からアメリカやカナダ等の北米、東南アジアに向けて出荷されている。
「CATとの直取引であり、先日もアメリカのノースカロライナへ営業で訪問してきた。現在は当社の工場と中国工場、アメリカ工場で生産しているが、日本国内では我が社だけの委託生産であり、海外メーカーは品質面等では非常に厳しく決して手を抜けないし、これからも何とか当社の工場での生産を守りたい」と緊張感を持って取り組んでいる。まさに″上越から世界へと大きく広がるチャンス″であり、とても誇り高い。
大島社長に今後の展望などをお聞きすると、「現在この油圧ショベルの売上は会社全体の8割にも達しており、本当に有難い。もちろん我が社は地域に愛され、農業機械製造からスタートした会社であり、これからも農業機械における研究・開発を地道に進めながら、小型建設機械にもしっかりと取り組んでいきたい」と力強く話す。最後に「農業機械と建設機械の二本柱で取り組むことは変わらない。我が社は100年以上に亘り、鉄板加工から製品までの確かな技術を活かしたモノづくりを今後も続けていきたい」と強調する。
その上で、「中厚板加工の品質レベルの強みを活かし、欲を言えば、もう一つ新たな製品分野への製造チャレンジも出来ればと思っている。それによって我が社の“三本柱”となるものを模索し続けていきたい」と話す若き社長の思いが実現することを祈りたい。
大島大輔代表取締役社長は、昭和59年2月生まれの41歳で、日本大学工学部機械工学科を卒業し、平成18年4月に大島農機㈱に入社。その2年5カ月後にキャタピタージャパン㈱に転籍入社し7年間余り勤めた。その後大島農機に戻り、製造部長や専務取締役などを経て、令和7年2月から代表取締役社長を務めることになった。
竜 哲樹(にいがた経済新聞顧問)
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。にいがた経済新聞社顧問