【事業継承の現場で何が!?】マスヤ栗林氏ら若手アトツギが熱く語る 現場で語られた“成功の鍵”とは
事業承継をテーマにしたセミナー「アトツギ・バイブス!~響き合う変革者たちの鼓動」が11月13日、新潟市中央区のイノベーション拠点施設・NINNO3で開かれた。後継ぎ経営者や支援機関の担当者らが登壇し、事業承継の現状や課題、地域におけるアトツギの役割について語った。
このセッションは、11月13日から15日まで開催されているイノベーションイベント「日々是新(ひびこれあらた)Feel the Innovation.」のプログラムの一つとして行われたもの。新潟の中小企業、起業家、学生に変革を与え、未来への一歩を踏み出すキッカケをつくることを目的に、各会場で多彩な企画が開催されている。
冒頭の基調講演では、マスヤ味方店店長の栗林礼奈氏が登壇。「人と同じことをやっていても勝てない。誰もやっていない“違い”を極めることが成功の近道」と語り、自らの経験を紹介した。赤字だった店舗の黒字化を目指し、成功している経営者に積極的に会いに行き、学びを取り入れたことなどを説明。自身が続ける3つの習慣として「会いたい人に会いに行く」「理想をノートに書く」「大きな夢を持つ」を挙げた。
さらに「勇気が出るから行動するのではなく、行動するから勇気が出る。大きな夢を持つことが行動の原動力になり、自身の思考が人生をつくる。アトツギは、伝統を守りながら時代に合わせて変化し、イノベーションしていくことが大事。アトツギはかっこいい選択だ」と、自身の夢であるロサンゼルス出店への夢を述べ、来場者に力強く語りかけた。
続いてのクロストークでは、支援者3名が登壇。群馬県産業経済部の長岡子龍氏は「アトツギ支援は地域の未来づくりそのものだ」と述べ、魅力ある企業づくりを支える意義を説明した。行政側の課題として、アトツギの情報把握の難しさや、現経営者が承継準備に消極的なケースを挙げた。
新潟県信用保証協会(新潟市中央区)の大島晃氏は「アトツギ同士のつながりが地域を牽引する」と語り、セミナーを一過性で終わらせず継続的な取り組みへ発展させる必要を指摘した。「支援者側も常識にとらわれず深く関わる姿勢が求められる」と強調した。
ミライドア株式会社(東京都)の石坂颯都氏は「事業承継は新たな価値創造のプロセス」と述べ、支援機関は事業開発やファイナンスなど多方面の知見を持ち寄り連携する重要性を示した。アトツギ側の課題として、株式に関する知識不足や孤独感を挙げ「相談できる環境整備が欠かせない」とした。
最後に、県内外のアトツギ3名が登壇した。小池ろうそく店(新潟市江南区)の小池深香氏は「商品があふれる時代だからこそ、ブランドの意味や歴史を伝えることが大切」と語った。アーティスト活動の経験を生かし、発信を続けているという。
群馬県の老舗、忠治茶屋3代目の櫻場裕太氏は、病床の祖父の姿をきっかけに承継を決意した経緯を紹介。「守るだけでなく進化させることが歴史につながる」とし、焼きまんじゅうの体験型ワークショップやキャラクター化など新しい価値の創出に取り組んでいると語った。
燕物産株式会社(新潟県燕市)の捧開維氏は「275年の歴史と思いを背負い、次の100年をつくることが使命。『カトラリーといえば燕物産』と言われるように認知を高めていきたい」と目標を掲げた。自身を「スプーンの伝道師」とし、伝統産業である地域のものづくりを発信していく意欲を示した。
トークセッションの司会を務めた、株式会社アルファドライブの春川英広氏は「登壇者から、アトツギが孤独にならない場づくりを求める声や、地域資源と自社の強みを掛け合わせることで新規事業は成功するといった意見が出た。また今後も継続的に開催できるよう、続編を企画したい」と総括。伝統と革新を両立しながら地域の未来を描こうとするアトツギと、それを支える支援者の熱量が交わる場となった。
【関連リンク】






