【キシャメシ】息が白む季節、極上の「鴨せいろ」に心震わす ― そば処 みゆき庵(胎内市)―

胎内市のロイヤル胎内パークホテル敷地内にある「そば処みゆき庵」

 

午前は打合せで「胎内高原の河畔の城」ロイヤル胎内パークホテルへ。

ここに来ると、やっぱり「そば処 みゆき庵」(胎内市)に寄らないわけにはいかない。新潟ではふのりをつなぎに使用した蕎麦が主流で、江戸前そばが少数派なのは、蕎麦好きの記者にとっては寂しい。石臼挽きの地粉を使用した江戸前の二八を食べさせてくれるみゆき庵は、休みの日などにわざわざ車を運転して訪ねることもあるくらい好きな店だ。

香り高い、この時期の胎内地粉

この雰囲気で二八の江戸前そばを食べさせてくれる貴重な店

特にこの「これから冬が来ますよ」という季節、体がまだ寒さに慣れない数週間は「鴨せいろ」(税込1,620円)が美味い。ピンのある冷たいそばを温かい鴨汁につけて食す、この滋味がたまらない。

店に入ると、まだ平日の昼前、オープン直後にもかかわらず先客がいる。こういう名店が胎内高原の山懐にある。店内のブース内では蕎麦打ちが「実演」されている。この姿を見ると、蕎麦喰いはがぜんテンションが上がる。挽きたて、打ちたて、茹でたての三たてを良しとする蕎麦の世界、蕎麦打ちの姿が見られるのは、こちら側の体感に影響してくるのだ。

そば職人歴50年の富樫さんが打つ絶品の蕎麦を求めに遠方から足を運ぶ蕎麦っ喰いも

まだ11時台だが、客が入り始めている。この後、どんどん客足が増える

さっそく「鴨せいろ」をオーダー。蕎麦は大盛で頼んだ。

ややあって着膳。蕎麦が艶めかしいほどに美しい。鴨汁の椀から湯気がたっている。この姿を見たら、もう1秒も我慢できない記者。

鴨せいろ(税込1620円)

まず箸で蕎麦を1本つまんで汁に浸けずに食す。この季節の蕎麦は香り高い。そして胎内の地粉は「蕎麦み」が力強い。石臼挽きなので、熱がこもらずに香りが生き生きとしている。ふのりつなぎの蕎麦も独特ののど越しとコシ強さは悪くないが、こんな風に「蕎麦そのものの香り高さ」を味わえない。だから胎内高原まで足を運びたくなる。

力強く香り高い、胎内の地粉を使った蕎麦

次に濃いめの鴨つけ汁を軽くすする。おお、沁みるねえ。深いところでうめえんだよなあ。どうして普通の地鶏出汁とこうまで違うかね。旨味成分の質そのものが違う。他の動物系(ラーメンの言い方ww)旨味に、この深みあるフィールは見当たらない。最近、鴨出汁のラーメンなども流行り始めているが、やっぱ蕎麦よな、そこは。

ほんっと美味い、鴨出汁の浸け汁。濃厚ながら、奥の方で柚子が香るオシャンティな仕上がり

ほどよく弾力があり味わい深い鴨肉

さて、ここからは一気に蕎麦を手繰る。おお、香り高い地粉蕎麦と温かい鴨汁のハーモニーがたまらん。鴨南蛮で良いじゃないか、という声もある。確かに季節感を楽しむタネ物の蕎麦は汁もたっぷり味わえるし鴨つくねなどの楽しみがあるのだが、蕎麦の香りとともに味わえる鴨せいろが記者は好きだ。

鴨肉は余分な脂身が落とされて、その分雑味とクドさがない。弾力がありぷりぷりとした食感は独特の野趣よりも上品さが勝つ。程よくクタッとなっている葱は、出汁が染みて極上の仕上がりに。やっぱり鴨にはネギに限る。シンプルな構成だが鴨汁を最大限に味わえる。

最後に蕎麦湯を注いだ鴨汁でシメ。言うことなし

大盛にしたが、あっという間に蕎麦をフィニッシュして、ここからは鴨汁タイムに。鴨汁を猪口にとり、アツアツの蕎麦湯で割ってすする。いや極楽、極楽。身も心も温まる。

外に出ると、胎内の山々は赤や黄色に彩られている。最盛期はほんの少し過ぎているが、これくらいが程よく美しい。平日の稼働中とはいえ、心潤すことはできる。

紅葉の盛りをほんの少し過ぎた胎内高原の山々。これはこれで味わい

(編集部I)

【そば処 みゆき庵】

新潟県胎内市夏井1191

営業時間 11:00~ (蕎麦なくなり次第終了)

定休日 不定休

<グーグルマップ「みゆき庵」>

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